36話: バイトデビューは甘くほろ苦く PART1

 休日。すなわち、夏彦たちがアルバイトに勤しむ日。


 草次に労働を強要されたものの、夏彦としては、この日を楽しみにしていた。待ちわびていたとさえ言える。

 ドMだからというわけでも、地下労働施設でチンチロするのに憧れていたわけでもない。


 人生初のバイト、社会貢献、勤労の義務。

 それすなわち、未仔に相応しい男に近づくということ。

 短絡的、高校生ならでは思考かもしれない。けれど、『働いてお金を貰う』という行為は、義務教育中にはできない故、率先して挑戦したいというわけだ。


 シンプルに財布を潤せるのも大きい。

 未仔は「リーズナブルなデートでも気にしない」と言ってくれるが、やはり彼氏としては背伸びや良いカッコをしたい。水族館やアミューズメントパークは勿論、夏祭りで色々と美味しい屋台飯や流行りのスイーツを召し上がっていただきたい。

 愛は金で買えないとはいえ、愛を育むためには少なからず金は要る。人生は世知辛い。

 というわけで、夏彦は働く気満々。




 大型レジャープールのスタッフ。それこそが、夏彦たちのバイトである。

 流れるプールや超巨大バケツ、アスレチックゾーンなどとバリエーション豊富で、ウォータースライダーに至っては5種10レーンと滑り放題。天然芝や海を模したビーチもあり、恋人同士で来れば愛も語り放題。


 レジャープール側としては、猫の手もとい高校生の手も借りたい。バイト未経験な夏彦も即採用というわけだ。


 そんな夏彦が任された仕事は、浮き輪やビーチボールなどのレンタル受付係。

 蒸し暑い屋外テントの下、海パンにスタッフTシャツ姿で、えっちらほっちらと勤しみ続けていた。

 今現在も水着お姉さん2人組の接客中で、


「あ、ありがとうございますっ! 浮き輪のレンタルはコチラでふっ!」


 初のバイトで緊張しているのか。

 はたまた、目前の水着姿なお姉様方にドギマギしているのか。

 どちらもなのだろう。

 働く気満々だからといって、スマートに働けるかは話が別。

 右にいるモデル系お姉さん、左にいるロリ系お姉さんが眩しすぎて直視できない。


「バイト初めてなのかな?」

「は、はい! 初めてなんです!」

「リラックスして頑張ってねー♪」

「あ、あざまふっ――、ます!」


「めっちゃ噛んでたね」「初々しくて可愛い」などとお姉さん2人はクスクス笑いつつ、受け取った浮き輪を手にプールサイドを歩いてく。


(ど、童貞丸出しで、恥ずかしい……!)


 夏彦、あまりの恥ずかしさに、仕事を放棄して巨大バケツの下で滝行したいくらい。

 水着女子だらけの接客は、バイトデビューの夏彦には荷が重いのかもしれない。



 だってしょうがないじゃないか。童貞だもの

なつひこ



 一方その頃、隣で同じく働く草次は、


「お兄さ~ん、このビーチボール膨らまして~♪」

「電動ポンプあるんで、それ使ってください」

「使い方分かんなーい」

「じゃあ俺やりますから」

「やってくれるんだ! お兄さん優しい~」

「一応スタッフなんで。あと、俺の方が年下だと思いますよ」

「だって名前分かんないだもん。あっ、そうだ! LINE交換しよ――、」

「プール楽シンデ下サイ」


「取りに行けポチ」と言わんばかり。草次は膨らましたビーチボールをふんわりサーブ。ゆっくり弧を描くボールは、誰も人のいない遊泳プールの一か所へとピンポイントに着水。体育のバレーでやれという話である。


「や~ん! 素っ気な~~~い♪」


 塩対応が満更でもない水着女子は、ニッコニコ笑顔のまま走り去っていく。

 勤務開始から3時間。何度この光景を見たことか。


「草次のバイト先って、ここじゃなくてホストクラブなんじゃ……」

「意味分かんねーこと言ってると、鼻の穴に空気針ツッコむぞ」

「こえーよ!」


 鼻の穴を必死にガードしつつ、夏彦は思う。

「いくらバイトとはいえ、こんなモテっぷりを塩谷や逆瀬が目撃してみろ。嫉妬で死んでしまうぞ」と。






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【雑談】

バイトデビュー懐かしいです。

僕はコンビニのバイトが初めてでした。

デビュー日は勿論緊張MAX。


冷やしうどんと気付かずに「温めますか?」と聞いちゃったり、

「赤マルちょうだい」と言われて、(赤マル? コレだ!!!)とラッキーストライクを召喚しちゃったり。


僕の心を癒す、バイト失敗談、お待ちしております(☝ ՞ਊ ՞)☝





今週か来週くらいには、『おっぱい揉みたい~』1巻に関する情報をドドンとまとめる予定なのでお楽しみに!!!



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