31話:未仔×2=???
翌朝の登校中。
本日は夏彦と未仔だけでなく、妹の新那を含めた3人編成。
妹の新那が、未仔のスマホ画面を眺めつつウットリ。
「いいな~。にーなも双子ちゃんたちと遊びたかったなぁ」
可愛くて仕方ないのだろう。夏彦たちが双子と遊んでいる写真を見ただけで、にへら~と頬を緩ませている。
新那にとっても、草次に妹がいるという情報はビックリニュースではある。
けれど、小動物や子供が好きだからか。はたまた、マイペースな性格だからか。
「小っちゃいなぁ~♪」
双子の可愛さを知ってしまえば、草次が何故隠していたかなど、小っちゃきこと。
「ねーねー、ミィちゃん。どっちがミッちゃんで、どっちがサッちゃん?」
「右にいる子がミッちゃんで、左に立ってる子がサッちゃん。2人一緒にいるときは、決まってこの立ち位置らしいの!」
「へ~! お笑い芸人みたいで可愛いねー!」
2人が顔を見合わせれば、
「「ね~♪」」
あどけない笑顔で一層大喜び。
『芸人=舞台で立ち位置固定=可愛い』という方程式に
それどころか、まるで双子のようにキャイキャイはしゃぐ2人の姿に、能天気な妄想だって湧き起こってしまう。
『もし未仔ちゃんが双子だったら、どうなるんだろう?』と。
◇ ◇ ◇
朝、待ち合わせ場所に向かえば、三つ編みがトレードマークの少女『たち』がお出迎え。
「「あっ♪ ナツくーん♪」」
瓜二つな彼女が2人、元気一杯に手を振って駆け寄ってくる。
そう、未仔Aと未仔Bである。
未仔Aが夏彦の右腕に寄り添えば、未仔Bが夏彦の左腕に寄り添う。まさに、両手に
当然、愛される量は2倍。
昼休みになれば、両隣の未仔が各々作ってきてくれた弁当を振る舞ってくれる。
「ナツ君、あ~~ん♪ えへへ……、美味しいって言ってくれて何よりです♪」
「ナツ君、お口にケチャップ付いてるから拭かせてね。うんっ! 綺麗になりました♪」
食べさせてくれたり、拭いてくれたり。まさに至れり尽くせり。
放課後になれば、同じ者を愛する故の喧嘩もしちゃったり。
「今日は私がナツ君とデートするんだもん!」
「ずるいよ! 私だってナツ君とデートしたいもん!」
「「ナツ君は私のもの~~!」」と両隣の未仔が、ヌイグルミさながらに夏彦の腕を引っ張たり抱き寄せたり。
ついには、頬をパンパンに膨らませた2人に問われてしまう。
「「ナツ君は、どっちの未仔が好きなの!?」」
◇ ◇ ◇
「~~~~~~! どっちも大好きです……っ!」
「ナツ君!?」
朝からおめでたい男である。
彼女に頭の緩さ加減を心配されれば、悶絶している場合ではないと、バカレシは必至に弁明。
「ごめんね! もし未仔ちゃんが双子だったら、可愛すぎて選べないなって! あっ! 双子だから可愛いってわけじゃないから! 今現在の未仔ちゃんだって最強に可愛いから! 留まることを知らないから!」
「! う、嬉しいよ? けど、町の真ん中で褒められるのは、すっごく恥ずかしいです……!」
夕暮れ時、誰もいないベンチなどで、愛を囁かれてみたい未仔ではあった。
どうしようもない兄の代わりに、「ミィちゃん、夏兄が気持ち悪くてゴメンね?」と、妹兼親友の新那が手を合わせる。
「ぐっ……! 否定できない自分が情けない……!」
「夏兄はミィちゃん大好きなの分かるけど、盲目すぎるのもどうかと思うな」
「!? そんなこと――、」
そんなことないと否定しようとする夏彦だが、未仔と過ごす日々を回想してしまえば、口を
やっと捻りだした言葉は、
「な、何か文句あるかコラァ!」
「開き直られた……」
「未仔ちゃんが大好きで何が悪い!」と胸を張る始末。
「別に文句も無いし、悪いとも思わないけどさ」
「思わないけど何だよ」
「ミィちゃんの写真見ながら一生デレデレするのはどうかと思うよ?」
「ふぁ!?」「へっ!?」
不意打ちにビックリ仰天な夏彦、初耳情報に泡食らう未仔にもお構いなし。
初撃目。
「この前も幸せそうに鼻伸ばしながら、中学時代のミィちゃんの写真見てたよね? 『世界一エプロンが似合うのは未仔ちゃんだ!』って」
弐撃目。
「他にもだよ。ミィちゃんの中学時代の先輩と、LINEでミィちゃんの写真とか思い出話共有してたよね? 『未仔ちゃん可愛い!』って声、にーなの部屋まで響いてたよ?」
トドメ。
「恋人同士だし、スマホのロック画面がミィちゃんとの2ショットなのは良いと思うよ? けど、暗証番号が3535《ミコミコ》はさすがに――、」
「恥ずかしいから、もう止めてぇぇぇぇぇぇ――――!」
夏彦、木っ端微塵。
未仔を好きな気持ちに嘘偽りはないが、彼女を愛しすぎていることがバレるのは、死ぬほど恥ずかしい。羞恥の極み。
一方その頃、未仔ちゃん。
「~~~~~っ!」
どうしたことか。夏彦に負けじと、顔を押さえて大悶絶。
恥ずかしいのは、愛され過ぎているから? 愛が重すぎるから?
否。
(わ、私もナツ君と同じことしちゃってる…………!)
アンサー。夏彦と行動が丸被りだから。
夏彦とのデート写真を眺めてニコニコしたり、夏彦の面白エピソードを琥珀にこっそり教えてもらったり。当然の如く、ロック画面は夏彦との2ショット写真。
暗証番号が、7215《ナツヒコ》なのはココだけの話。
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2人の暗証番号は、7235《ナツミコ》になる可能性大。
バカップル。
【お知らせ】
今現在、1巻分の原稿確認など諸々作業中ですので、
次回更新まで少々お時間をいただければと思います。
1ヶ月とかそんな長期間のお休みではないので、まったりマイペースにお待ちいただけばと!
書籍化に関する情報も、公に発表できることがあれば逐一発表していくので、お楽しみに!
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