30話:草次も高校生 PART3

「そそ。ナツと未仔ちゃんのバカップルぶりに比べたら、草次の悩みなんて小さい小さい」


 琥珀が言うと本当に些細な事に思えてしまう。

 その証拠に、「久々に食べたけど、安定の美味さやねー」と動物の形をしたビスケットを双子と仲良くモグついている。


「アンタらは何食べてるん?」

「イヌー!」「ウシー!」

「ウチ、最強のライオンー!」


 ガルルルル! と琥珀がリアリティたっぷりな獣ボイスを披露すれば、ミッちゃんとサッちゃんも大はしゃぎ。ワンワン吠えたり、モーモー鳴いたり。もはや動物園状態。


 人の好き嫌いが激しいとはいえ、フレンドリーさは人一倍。琥珀の手に掛かれば、子供だろうと地底人だろうと、マブダチになるのに3分も不必要である。


 夏彦と未仔は顔を見合わせた後、そのまま草次へと話しかける。


「見ての通り、俺たちでもミッちゃんとサッちゃんと遊ぶことくらいはできるからさ。今日みたいに皆で集まってこれからは遊ぼうよ」

「私もナツ君と同じ気持ちですっ。是非、できることがあればお手伝いしていきたいです!」


 今までの草次なら、2人の頼みを断っていただろう。面倒なフリをしていただろう。

 けれど、


「……まぁ、そうだな。たまにでいいから、コイツらの遊び相手になってくれたら俺も助かるよ」

「うん!」「はい♪」


 ここまで馬鹿正直な友と、その彼女に踏み込まれてしまったのだ。

 断る理由など何1つない。


「チャンス! ナツに突撃や!」

「!? ぐえっ……!」


 ハッピーエンドも束の間。「いけ―――っ!」という琥珀の号令と同時、双子たちが夏彦へとダイレクトアタック。


「「ナツヒコ♪ ナツヒコ♪」」


 背中に乗られたり、両手にぶら下がられたり。

 琥珀に仕込まれたのか、重点的に左ボディをペチペチ叩かれたり、顎をポカポカ叩かれたり。


「おい琥珀! こんな小さい子たちに肝臓リバーブローとかアッパーを教えるなよ!」

「ええやないの。牛とかマグロとかの部位を説明してる絵本とかあるやん」

「人の弱点を教える絵本は絶対無い!」


 キャッキャッはしゃぐ双子が、次のターゲットに選んだのは未仔。


「ひゃっ……!」「未仔ちゃん!?」


 予想外の攻撃だった。


「「フカフカ♪ フカフカ♪」」


 右乳にミッちゃん、左乳にサッちゃん。

 すなわち、未仔のたわわでボリューミーな胸に、双子が顔をうずめながらのハグを決め込む。むぎゅううううう~~~! と。


 少々戸惑いを見せていた未仔だが、


「えへへ……♪ ミッちゃんとサッちゃんに抱き着かれちゃった♪」


 双子の甘々攻撃を受け続けてしまえば、ほんわか笑顔になってしまう。


「いやはや。ナツのことやから、『未仔ちゃんのオッパイは、俺のものだ!』って泣き叫ぶと思ってたわ」

「そ、そんな小さくないわ!」


 多少のジェラシーを感じていることは、口が裂けても言えない。

『小さい』のは夏彦だけではない。


「ほらほら。奏お姉ちゃんのところにもおいでー」


 未仔の負担を軽減すべく、奏が双子の前へとやって来る。

 普段の双子なら、奏が両手を広げたと同時に胸へ飛び込んでいただろう。

 しかし、


「??? ミッちゃんとサッちゃん?」


 まるで奏を拒絶するかのように、双子は首を横にふるふる。

 一同が理解できない状況下、右にいるミッちゃん、左にいるサッちゃんが指差す。

 未仔と琥珀のたわわでボリューミーな胸を。


「ミコ、フカフカ」

「コハク、フカフカ」


 トドメというか、死体蹴り。


「「カナデねーちゃん、ペタペタ」」

「「「「「…………」」」」」


 アットホームだったリビングに、極寒ブリザードが吹雪く。

 YES,奏isちっぱい

 キッズたちの言葉を翻訳するとすれば、『未仔と琥珀は、おっぱいが大きいから抱き心地が良い。奏姉ちゃんは、おっぱいが小さいから結構です』といったところ。


 奏が断崖絶壁とは言わない。けれど、スイカやメロンといった兵器ウエポンを搭載する未仔や琥珀と比べてしまえば、あまりにも奏の兵器は乏しいわけで。


「き、気にしてること言われた……!」


 エプロン越しに慎ましき胸へ手を当てる奏は悲壮感たっぷり。

 こんなとき、彼氏はどんな言葉を彼女に掛けるのがベストだろうか。

 恋人歴の長い草次ならきっと知っているはずと、夏彦は視線を送る。

 さすれば、視線の意図を理解しているかのように、フッと鼻を鳴らしつつ草次は言う。


「子供は正直だよな」

「そ、草次!?」


 夏彦は思う。コイツはアホなのかと。

 言わんこっちゃない。


「ソーチャン?」


 おっとりまなこなお姉さんは何処へやら。

 極寒ブリザードを操る雪女? 艶やかな黒髪を逆立たせ、眼光鋭く草次ターゲットに圧を掛け続ける奏がただただ恐ろしい。


「……トイレ行くわ」


 デリカシーのない草次も、彼女の地雷を踏んだことを理解している。


「あっ! 逃げるなー!」


 奏の叱責も何のその。草次は自宅のトイレ目掛けて一直線にフェードアウト。

 先日のカフェにて、奏が語っていた言葉を夏彦は思い出す。


『そーちゃんは、夏彦君が思ってるほど大人じゃないと思うなー』


 思い出してしまえば、自然と笑みもこぼれてしまう。

 本当にその通りだと。


 そして、もう1つの言葉も思い出す。


『平日は私たちでミッちゃんとサッちゃんの面倒見てるんだよ?』


「ん……?」


 思い出してしまえば、夏彦に疑問が浮かび上がってしまう。







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次回から3章!


一応、半分くらいは執筆したのかな? と。

文庫化に向けて、着々と作業も頑張っていますので、今後もお楽しみに!


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Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ

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