26話:草次を追え PART4

 未仔に癒しを供給され、3人は引き続き草次及び女性の後を尾行していく。


 なだらかな坂に立ち並ぶ店は、やはり若い女性をターゲットにした店ばかり。

 カフェ1つ挙げてもコンセプトは様々で、古民家を改装した趣ある小さなカフェ、観葉植物や色彩豊かな花に囲まれるボタニカルカフェ、個性的なインテリア家具も取り扱う北欧カフェなどなど。

 最近になって未仔とカフェデートするようになった夏彦としては、まだまだ1人で歩くにはハードルが高いのは言うまでもない。


 そんなオシャレ街道を歩けば歩くほど、草次のイケメンっぷりが露わになっていく。


「あのさりげなさがモテる秘訣なんやろか」

「否定はできないな」「かもですっ」


 さりげなく車道側を歩く女性と立ち位置を入れ替えて歩いたり、彼女のトートバッグを持ってあげたり。人とぶつかりそうになれば、そっと手繰り寄せたり。

 さらには、とてつもなく大きなぬいぐるみが飾られたファンシーショップであったり、アンティーク調のアクセサリーが飾られるハンドメイド雑貨店であったり。言われるまでもなく大人可愛い彼女が好きそうな店の前で立ち止まる配慮っぷり。


 総評。腹が立つほどジェントルマン。

 通りすがるJKやJDが、キャイキャイはしゃぐ理由も頷けてしまう。


「年下なのに大人っぽいってエモいよね!」

「ウチの彼氏、年上だけど全然しっかりしてないから、すっごいエモい……」

「一見冷たそうなのにじつは優しいとか。超エモいんですけど!」


 総評。草次は超エモい。

 今現在もタピオカ店でドリンクをテイクアウトし、何やら仲良さげなやり取り。

 彼女が自分の飲んでいるドリンクを、1口どうぞと言わんばかりに草次へと差し出す。 

 さすれば、草次は気まずげに首を振り、彼女は困った反応さえ楽しそうにクスクス笑う。


 夏彦としては気が気でない。間接キスを成功させた瞬間、草次の浮気している可能性がほぼほぼ確定してしまうから。

 話している内容までは聞き取れないが、『彼女かなでがいるから飲めません』なら100点満点の答えだし、『公衆の面前だから恥ずかしい』ならまだまだ疑いは晴れない。


 琥珀の予想が酷い。


「タピオカなんか要らねえ。俺はお前と言うデザートが欲しいんだZE?」

「草次がそんなクソダサい誘いするわけないだろ」

「ちちち。ただしイケメンに限るって奴や。古着コーデをフツメンがしたら『ダサい、小汚い』って言われて、イケメンがしたら『オシャレ、菅田すだっぽい』って言われる道理と同じやん」

「身もふたもない……」


 琥珀が夏彦の肩にポン、と手を置いて哀愁ある顔で微笑む。


「そういうことや。傘井夏彦フツメン伊豆見草次イケメンでは言葉の重みが違うねん。な?」

「泣くぞこの野郎!」

「プ――――――――――――ッ!!!」


 涙目の夏彦と大爆笑する琥珀の傍ら。「わ、私はナツ君に『欲しいんだZE』って言われたら嬉しいよ!」と必死に慰めてくれるのが、これまた切ない。


「は~~~、おもろかった。そんなことよりナツと未仔ちゃん。妙やと思わん?」

「どの口が言ってんだよ……」

「琥珀さん、何が妙なんですか?」と未仔が問えば、琥珀は続ける。

「やってさ。さっきから全然店に入らんやん。雑談するなら茶店さてん入ればいいし、興味ある商品あるなら中に入ればいいのに」

「「……確かに」」


 草次が女性と合流してからというもの、多少の足止めはするが、ガッツリと店に入るようなことは1度もしていなかった。


「言われてみればなんだよなぁ。まるで行き先が決まってるみたいにスルスル歩いてる気さえしてくるし……」

「私もそんな気が……。それに、ちょっとずつ繁華街の通りから外れてる、よね?」


 未仔が精一杯背伸びして、草次や女性よりも先の景色を眺める。

 オシャレな町並みは徐々に薄れており、不動産屋や塾、クリーニング屋など、様々な店が立ち並ぶ、いわば何処にでもある町に変わりつつある。




 付いて行けば付いていくほど、地元民であろう主婦たちの談笑する姿であったり、公園で遊ぶ小学生たちの姿などが目立つようになっていく。

 マンションや一軒家さえ目立ってきた細い路地道。


「……お泊りデートやろか?」

「「!?」」


 琥珀の爆弾発言、敢えて考えないようにしていた展開を口にされ、夏彦大慌て。


「いやいやいや! 奏さんと幼馴染なのに、お泊りは有り得ないだろ!」

「草次の家行くとは限らんやん。それに、仮にお泊りじゃないとしてやで?」

「お泊りじゃないとしても?」

「こういう関係っていう可能性も……」

「こういうって、どういう―――――、!!!???」


 夏彦、ゆっくり上げる琥珀の右手に注目し、開いた口が塞がらない。

 それもそのはず。只の握りこぶしではない。人差し指と中指の間から親指がコンニチワ。


 すなわち、パンパンとアンアンに見立てた、卑猥を象徴するハンドサインである。


「~~~~~っ……!」


 やはり未仔も年頃の女の子。ハンドサインの意味を知っているようで気まずげにソワソワモジモジ。

 食事中、テレビでHなシーンが流れて、茶の間が凍てつくかのような。

 静寂を破る、というか耐え切れなくなった夏彦は叫ぶ。


「と、とにかく! 今は草次たちを最後まで追おう!」

「逃げよったなコイツ」

「う、うるせー!」


 琥珀の意見をガン無視しつつ、顔の赤い未仔の手を引っ張りつつ、2人が消えて行った曲がり角へと入って行く。

 そして、3人は再び足を止めてしまう。


 草次と女性の目的地であろう場所へと到着してしまったから。






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草次の辿り着いた先は……?



【雑談】

短編で書いていた『新卒構ってちゃん~』の長編化に関する進捗情報を。

今現在、やっとこさプロット(ストーリーを要約したもの)を完成させ、原稿を執筆し始めました。

10月末~11月末くらいには、まとまった分だけでも投稿できればと思っております(☝ ՞ਊ ՞)☝

気長に待っててね。




おっぱいフレンズは、フォロー&ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ

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