25話:草次を追え PART3
もっと細分化してしまえば、女子学生のための町といっても良いだろう。本山周りには多くの女子高や女子大が点在し、合わせるかのようにオシャレなカフェや雑貨店、タピオカやらパンケーキ専門店などが活気づいている。
夕方になれば、女性一色になっていることも不思議ではない。
そんな、花園な駅の改札を出たときだった。
「「そ、そんな……」」
夏彦と未仔が足を止めてしまう。
それもそのはず。
「あっ♪ 草次く~ん!」
駅のロータリー、草次の名を呼ぶ女性が、草次のもとへと駆け寄っていたから。
大学生、もしくは社会人だろうか? 小柄でふんわりした雰囲気の女性で、ブラウン色の髪をお団子ヘアにまとめ、ゆったりサロペットコーデ。
童顔も相まって、年下や子供っぽい雰囲気の女性なのだが、やはり年相応の大人っぽさや色気もあり、『大人可愛い』という表現がよく似合う。
そんな大人可愛い女性が、仲睦まじくも草次を呼び止めている。
琥珀、鬼神の如し。
「黒やな。握り潰す」
「ちょ、ちょっとストップ!」「早すぎませんか!?」
草次を葬ろうと動き出す琥珀を、夏彦と未仔が必死に拘束。か弱き未仔など、手だけでは抑えられないと、琥珀を背後から抱きしめる大胆っぷり。
「琥珀! まだ浮気してるって決めるには早すぎるって!」
「じゃあ、あれは何ですのん?」
「え!? えっと……、草次のお姉さんとか?」
「姉ぇ? ないないない」とオーバーに琥珀は手を振る。
「ナツよ。仮にウチがアンタのお姉ちゃんやとするやん?」
「えっ。あ、はい……」
「するとやで」と言いつつ、琥珀が後戻るかのように、1歩、2歩、3歩……、と後ずさっていく。
そのまま曲がり角まで戻ってから数秒後。
再び時は動き出す。
「あっ♪ 夏彦ちゃ~ん!」
「…………」
鬼神の顔から一変、ニッコリ満面なスマイル。姉貴面の琥珀が右手をブンブン振りつつ夏彦の元へと駆け寄ってくる。
しっかり演技してくれているのだろう。普段は粗野であっけらかんとした性格は雲に隠れ、明るい1コ上のお姉さん感たっぷり。若干ぶりっ子っぽく見えるのは確信犯。
大人しくしていれば可愛い女子ランキングぶっちぎり1位なだけに、元気一杯に愛嬌たっぷりな笑顔を振りかざせば、多くの男たちは即オチ間違いなし。
悪友の夏彦を除いて。
「どや? 姉が迫ってきた感想は?」
「と、鳥肌が止まらない……!」
「皮剥いだろか?」
「こえーよ!」
やはり琥珀は姉ではなく悪友。役者顔負けで姉の演技をされようとも、あぐらをかいてコントローラーを握りしめる姿や、茶目っ気たっぷりに中指を突き立ててくる悪友の姿がチラついてしまうわけで。
自分の顔面に爪をめり込ませようとする琥珀の腕を必死に鷲掴みつつ、夏彦が猛反論。
「言いたいことは大体分かったけどさ! 今のは俺や琥珀個人の感想だろ!」
「つまり、草次はシスコンやと?」
「どんな結論だよ!」
「極端かよ!」と夏彦が追いツッコミすれば、「極端ちゃうわボケェ!」と琥珀も負けじと応戦。不毛なラリーの応酬。
「ふ、二人とも落ち着いて。ね?」
「「未仔ちゃんはどう思う!?」」
「! 私?」
なだめようとする未仔へ、醜い二人が無茶ぶりという名のキラーパス。常人ならフィールドに弾き飛ばされてしまう威力の危険球である。
しかし、真面目な性格だからか。はたまた、たわわな胸はどんな衝撃も容易く受け止める力を有しているからか。
「えっと……。私は琥珀さんがお姉ちゃんなら、すごく嬉しいですよ?」
「未仔ちゃん……。アンタって子は……」
まさかのキラーパス返しに琥珀の胸キュンが止まらない。
勿論、返すのは琥珀だけではない。
未仔は若干の照れを見せつつ、
「ナツ君がお兄さんでも嬉しいよ? けどね? 私としては今みたいに恋人でいてくれるほうが、もっと嬉しいです……」
「未仔ちゃん……。君って子は……」
何故争っていたのか忘れてしまうほど。止めどない幸福が夏彦と琥珀に押し寄せる。
殆ど反射。すっ……、と未仔を2人は抱きしめてしまう。
サンドイッチ
小柄な天使は案の定、大赤面。
「~~~~っ! 黙って抱き着かれるのは恥ずかしいですよう!」
いつも夏彦に甘えてばかりの未仔は思う。
嬉しいと言えばとても嬉しい。けれど、公衆の面前で抱き着かれるのって、めちゃくちゃ恥ずかしいことなのだなと。
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【雑談】
ここ数日で涼しくなってきたし、半袖はそろそろお別れっぽいですね。
とはいえ、秋と思ってホットコーヒー頼んだらまだまだ暑かったり、夏と思ってアイスコーヒー頼んだら寒かったり。
季節の移り変わり目なので、体調管理は特にしっかりね(☝ ՞ਊ ՞)☝
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