10話: この世は勝者が全て PART1

 リザルト画面には、『貴方は殺人鬼に処刑されました』という物騒な文字が。


「また負けた……」「完敗です……」

「はい、ウチの5連勝ー♪」


 スマホから目を離せば、ホクホク顔の琥珀が胸高々にお出迎え。


「いやはや。余裕過ぎてヘソで伊右衛門沸いてまうわ」

「腹立つ! せめて茶を沸かすって言えよ!」

「んん? そーいえば、『今日こそウチに勝つ』とか息巻いてた奴、おらんかったっけ?」

「ウッ……!」


 夏彦、朝に宣言した言葉を思い出し、喉元がキュッと苦しくなる。

 痛いところを突かれるという表現がピッタリ。琥珀的に言えば、痛いところを牙突がとつ


「はてさて♪ 息巻いてた奴は、どこのどいつやったカナー?」


 関西女のドSっぷりに、夏彦が抗うことができるわけもなく。


「……俺、……です」

「あっ。ナツが言ってたんか~! 『強く出れるのもコレっきりだ!』とかも、ドヤ顔で言ってた気がするわぁ~」

「グヌッ……!」

「なぁナツ~、コレっきりって、何時いつっきり~?」

「きょ、今日のつもりでした……」

「あっ! 今日の話やったん? ごめんなぁ~。あまりに弱すぎて、3年計画くらいの話かとてっきり~♪」

「グヌヌヌヌッ……!」

「おお~、顔が怖い怖い。リラックスして戦わんと、勝てる試合も勝てへんよ?」


「ほれ、ナツ。笑顔、笑顔♪」と琥珀がお手本のようにニッコリ笑顔を提示。

 間違ったことは言われていないからこそ、夏彦は忸怩じくじたる思いで口角を無理矢理にアップさせる。


「え、笑顔……! ハ、ハハハハ……!」

「そうそう! ええ感じ、ええ感じ♪」


 精一杯、作り笑顔を浮かべる夏彦に、琥珀はグッジョブと親指を突き立てる。

 そして、ニッコリ笑顔のまま言うのだ。


「まぁ、リラックスしたところで、負ける試合には勝てへんのやけども。プププッ!」

「~~~~っ! チクショ―――ッ! 俺の笑顔を返せコノ野郎~~~~~!」

「プ――――――――――――ッ!!!」


 夏彦がプッツンすれば、「よっ! そのリアクション、待ってました!」と琥珀も手を叩いて大爆笑。ドSの極み。


「は~~~~っ……、笑い過ぎて、めっちゃ涙出たぁ……。これやからナツいじりは止められへんねんなぁ」

「クソ……! 俺と未仔ちゃんが勝ったときは、マジで覚えとけよ……!」


 お前の空想は聞き飽きたと言わんばかり。立膝ついた琥珀は、グラスに入ったコーラをグイッと飲み干す。「こいつが飲んでるの、コーラじゃなくて黒ビールじゃね?」というくらい見事な飲みっぷり。


「ぷはぁ~♪ 勝利の美コーラは格別やわぁ~♪」

美酒びしゅな」


 タンクトップ&ショーパン、露出度MAXな部屋着も相まって、休日をダラリと過ごすOL感がすごい。もしくは休日のオッサン。

 とはいえ、琥珀としてはOLでもオッサンでもない。


「ほれナツ。勝者のウチに、さっさとコーラを注ぎ足さんかい」


 気分は勝利に酔いしれる王様。

 王の命令は絶対。敗者の夏彦はファミリーサイズのペットボトルを持ち上げると、琥珀の空いたグラスへとコーラをゆっくり注いでいく。『めっちゃメントス入れたい』という気持ちを堪えつつ。


 注がれたコーラを1口飲んだ琥珀は、「カッカッカッ! 愉悦、愉悦!」とすっかり殿様モード。

 殿様モードだからだろうか?

 はたまた、下僕なつひこを肴にして飲むコーラは、然程美味しくないからだろうか?


「未仔ちゃん、未仔ちゃん」

「は、はいっ」

ちこう寄れ」


 ニタリと笑う琥珀が、未仔を手招きする。






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次回、セクハラ回。

未仔の貞操は如何いかに。




【お知らせ】

『おっぱい揉みたい』とは別件なのですが、以前、短編で書いていた『構って新卒ちゃん』の進捗につきまして。


今現在、プロットを練り練り中なので、作品を公開するのはもう少し掛かるかなぁと。

デビュー前も後も、高校生もの以外のラブコメを作ったことが無かったので、考えるのが楽しくて楽しくて(笑)

色々とストーリーやキャラクターも追加していく予定なので、マイペースに待っててくれれば幸いです。

乞うご期待ʅ(◔౪◔ ) ʃ


未読な方は、全8話の短編構成なので是非是非。




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