5話:夏彦のスローガン

 ハッ、と夏彦は我に返る。

 気付いたのだ。今の自分は、客観的に見たら変態すぎるし、主観的に見ても変態すぎることに。


 机に突っ伏している場合ではないと、勢いよく顔を上げる。

 そのまま、未仔未仔フィーバー中の煩悩を取り払うべく、声たかだかに叫ぶ。


「俺は決めてるんだ!」

「はへ?」と琥珀がクエスチョンマーク。

「決めてるって、何を決めてますのん?」

「未仔ちゃんに相応しい男になるまでは、きよい関係でい続けるって!」


 琥珀含め、周囲で話を聞いているクラスメイトたちは思う。

「バカップルの♂が、また意味分からんこと言うてる」と。

 とはいえ、夏彦は大真面目だ。


『未仔ちゃんに相応しい男になる』


 この言葉こそ、夏彦が絶賛掲げ中のスローガン。

 平々凡々な自分を王子様と言ってくれたり、自分のために懸命に尽くしてくれたり、自分を信じておっぱいを揉ませてくれたり。


 健気で純真無垢な彼女に応えたい。昭和気質で筋肉バッキバキな未仔父に認めてもらいたい。そう思うのは、彼氏として当然のことなのだろう。


 というわけで、仮に愛妻弁当にさかっていたり、未仔のあられもない姿を妄想してしまったとしても、実際に手を出すまでは絶対してはならない。現に、高校生らしい健全な関係をはぐくみ続けてきた。

 手を出さないからこそ、妄想が豊かになっているのも否めないが。


 今一度、気を引き締め直し、夏彦は勇ましくも琥珀を見つめる。

何人なんびとたりとも、このスローガンを笑うことは許さない』という意志を込めて。


「で、何をしてるん?」

「えっ」


 琥珀の唐突すぎる質問に、夏彦は首を傾げてしまう。


「未仔ちゃんに相応しい男になるために、ナツは具体的に何をしてるん?」

「……」


 唐突以上に、実にクリティカルな質問だった。

 みぞおちに入った的な?


「え、えっと……。具体的には、良い大学に入るために日々、予習復習を少々……」

「それだけ?」

「他には、その……、生活リズムの改善のため、早寝早起きとストレッチなんかもたしんでたり……。あ、あと! 筋トレも少々かじったり……してます」

「ふ―――ん、勉強に生活リズムの改善ねぇ」

「……はい」


 悪友同士の関係から一変。生まれて初めてバイト面接を受けに来たキョロ充と、質疑応答する店長。

「へへへ」と目一杯愛想笑う夏彦に、店長こはくはバッサリ言うのだ。


「浅っ。幼児用プールより浅っ」

「う、うるせー! 自分が一番分かってるよチクショウ!」


 面接結果、不採用。

 そう。夏彦自身、「未仔ちゃんに相応しい男になるためには、具体的に何をすればいいのだろう……?」と悩んでいる最中だった。


 スローガンを決めてから2ヶ月弱。何もせず、ただ未仔とイチャイチャしていたわけでは決してない。決してないのだが、かんばしい施策は特に思い浮かばず。

 浮かばない故、琥珀の指摘どおり、浅すぎワロタな行動しかできずにいた。


「アカンで自分。会見やったら、記者にカメラ投げられてるで」

「うっ……。おっしゃる通りすぎてツラい……」


 忍殺せいばい完了。琥珀が辛口コメントで夏彦を右肩から左脇腹までバッサリ斬り落とせば、机の上でダウンした死体を尻目に、机横に掛かったカバンをガサゴソ。

 今日は水曜日。すなわち、マガジンの日である。


 マガジンを回収した琥珀が、「お先ー♪」と自席へ戻ろうとする。

 のだが、


「急募! 彼女に相応しい男のなり方!」

「あん!?」


 ゾンビの如し。最後の気力を振り絞り、夏彦が琥珀の腕を鷲掴む。

 夏彦必死。必死過ぎて琥珀ドン引き。


「友達が困ってるんだから、一緒に考えてくれたっていいじゃないか!」

「目ぇ怖っ! むりむりむり! 相応しい男のなり方なんて、か弱いJKのウチが分かるわけないやん!」

「大丈夫! お前は思ってる以上に脳筋のオッサン――、」

「誰が脳筋やねんアホンダラァァァ!」

「ほら、そういうところ!」


 オッサンを否定しないあたり、やはり中身はオッサンである。






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次回、乳回。


前回、どのコスプレが良いか、おっぱいフレンズに聞いたところ、サンタコスとバニーガールが良い勝負。僅差でサンタコスかなと。

イベント限定のコスプレっていうのも、高ポイントですよね。

エロし。


おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価&フォローよろしくどーぞ。

Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ

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