59話:守るため、その手に掴むもの PART2

「ナツ君っ……!」


 駆け寄って来た未仔が、力いっぱい夏彦を抱き締める。

 夏彦大混乱。ぐっすり寝ていたはずなのにとか、居場所がバレるの早すぎとか、やっぱり未仔ちゃんが可愛くて仕方ない、とか。


 おおよその疑問は、とある人物によって解決される。

 その人物は未仔母。

 ニッコリ笑顔な未仔母が、「娘が駆けつけた理由はコレです」と言わんばかり。スマホをゆらゆら揺らして、夏彦へとアピール。

 要するに、しれっと夏彦宅に連絡してくれていたのだ。


 未仔は、一部始終を聞いていたらしい。

 だからこそ、


「私も、ナツ君とずっと一緒にいたい」

「! ……うん」


 全てが一瞬で報われてしまう。それくらい未仔の想いが込められた言葉は、何物にも代えられない宝物になってしまう。

 悲しさではなく、嬉しさで瞳をにじませる未仔の涙を、夏彦が優しく指でそっと拭う。甘えん坊な彼女は、もっと甘えようと片方の涙も彼氏へと差し出す。

 最後に頭を撫でれば、人懐っこいというより、夏彦懐っこい笑みを浮かべて、より一層ぴっとりと寄り添う。

 ただ寄り添うだけじゃなく、父親をしっかりと見つめる。


「お父さん。苦労や心配ばかり掛けてごめんなさい」

「……全くだ」

「あのね? 私、お父さんがイジワルで色々言ってきたり、心から反対してたわけじゃないのも分かってたから」

 目を見開く未仔父は、頑固な親父を演じられていたと思っていたのだろう。

「本当に反対してたら、ナツ君と同じ高校になんて行かせてくれなかったもん」

 愛娘は全てをお見通し。

 お見通しだからこそ、依然ぶっきらぼうなフリをする父親に、飛び切りの笑顔で言うのだ。

「私のことを信じてくれて、ありがとう」

「……。ああ」


 夏彦は察する。未仔ちゃんのお父さんもまた、俺と同じく全てが報われた瞬間なのだと。

 報われているからこそ、涙腺が緩んでしまっている。

 ニッコリ笑顔の未仔母は、事件の収束を象徴するには打ってつけ。


「ふふっ♪ これからは、お父さんじゃなくて、夏彦君がしっかり守ってくれるから大丈夫そうね」

「! は、はいっ! しっかり未仔ちゃんを守らせていただきます!」

「……言っとくが夏彦君。俺は認めたわけじゃないからな……?」

「ひっ!」


 いつまでも感傷に浸っている場合ではないと般若みこちち復活。

 鬼神の形相を浴びせれば、夏彦を一捻りというか一千切ひとちぎり。

 彼氏は紙耐久。

 けれど、


「いいもん。お父さんが参ったって言うくらい、もっとナツ君とイチャイチャするから」

「み、未仔ちゃん!?」


 彼女は神耐久。

 爆弾発言、宣戦布告どおり。未仔猫が気持ち良さげに夏彦の二の腕へと頬っぺたスリスリ。

 愛娘のゴロニャンを目の当たりにしてしまえば、阿修羅解禁。未仔父の筋肉がボッコリ。

 矛先が夏彦なのは言うまでもない。


「フハハ……! 来年や再来年も同じことが言えるか楽しみだなぁ……!」

「何年経っても愛を誓えるもん。ねー? ナツ君っ♪」

「も、勿論! 10年、20年、お爺ちゃんお婆ちゃんになっても誓えるよ! ……けど、未仔ちゃん? これ以上、お父さんを挑発するのはちょっと……」

「ほう? やはり、君は俺を挑発してる気でいたのか……!」

「あわわわわわ……!」


 もはや、どんな行動や言動も死亡ルート確定。

 どうせ死ぬなら、戦って死のう的な?

 腰掛けたままの夏彦へと、未仔が耳打ちする。


「ナツ君、もっと挑発しちゃおっか」

「へ?」


 理解不能の夏彦だが、未仔に誘導されるがまま椅子から立ち上がる。

 立ち上がってしまえば、夏彦は未仔の狙いが理解できてしまう。


「も、もしかして未仔ちゃん……!」「お、お前ら、まさか……!」


 理解できた理由は単純明快。

「いつでもいいから。ね?」

 軽く両手を広げ、愛する夏彦を迎え入れる準備を未仔が完成させていたから。

 夏彦、焦点はおのずと、未仔の桜色な唇へとロックオン。


 混乱必至。脳内で自問自答サミット開催。

 いやいやいや! 確かに、おやすみとおはようのキスは我慢したけども!

 にしたって、公衆の面前どころか、親御さんの目の前でキス?

 KISS? or DEAD?

 そもそも、キスしようとした瞬間、俺の唇、引きちぎられるんじゃね?

 要するに、ご臨終……?

 などなど。

 僅か数秒で、悲惨な結末が思いつくわ、思いつくわ。


 というわけで、夏彦が未仔とキスするという選択は、冷静に考えて有り得ない。

 冷静に考えれば。


「~~~~~~っ! 未仔ちゃんっ! 大好きだぁぁぁぁぁ!」


 清水寺の舞台から飛び降りるかの如く。

 男夏彦、未仔を手繰り寄せると同時、唇同士を重ね合わせてしまう。

 彼女の勇気に応えたい。

 何より、彼女の可愛さには抗えない。

 冷静な判断などクソくらえ。


 力強い抱擁だから? 唐突すぎたから? いつになく激しいスキンシップだから?

 未仔の愛強ある真ん丸な瞳が、さらに大きなものに。

 しかし、驚いただけ。拒む理由などないと抱擁を受け入れる。もっと唇が触れやすいようにと背伸びして、愛と覚悟を共有する。夏彦に全てをゆだねる。

 未仔もまた、彼氏の勇気に応えたいし、好きという気持ちには抗えない。


 未仔父の言葉にならない声、未仔母の「あらあら♪」と弾む声をBGMに、2人は唇をゆっくりと離していく。唇が離れても見つめ合ってしまう。

 やはり未仔は嬉しそうに、とろけるように顔を綻ばせる。


「えへへ……♪ またキスしちゃったね……♪」

「う、うん……! キスしちゃいました……!」

「でもね?」

「??? でも?」

「これくらいしないと、頑固なお父さんは倒せないよ」

「え? それってどういう――、」


 両手を握られた直後の出来事だった。


「えいっ」

「!!!!!????? みみみみみみみみみみ未仔ちゃん!?」


 夏彦史上、最大の驚愕。

 それもそのはず。夏彦の手が行き着く先は、未仔のおっぱいだったから。

 俗に言う、パイタッチ。


「~~~~~~~~~っっっ!!!」


 パイタッチングな状況に、夏彦エキサイティング。

 大混乱している間にも、未仔の形良い胸が自分の手に収まり続ける。実際のところは収まりきっていない。それくらい、たわわでボリューミー。

 反射的に手を離そうとしてしまう。しかし、未仔がそれを許さない。

「離しちゃダメ」と、夏彦の両手を小さな手で自分の胸ごと押さえ続ける。押さえ続ければ押さえ続けるほど、夏彦の両手に幸福おっぱいが一層に沈み込んでいく。

 おっぱいのことしか思い浮かばなくなってしまったからか。

 とある一言が、夏彦の脳内で自動再生される。


『ナツ君にだったら、おっぱい揉まれても、へっちゃらだもん!』


 依然、未仔が父親に宣言したキラーワード。

 夏彦はハッ、とする。

 ようやく気付いてしまう。未仔の考えていた挑発は、キスではないことに。

 おっぱいをモミモミすることなのだと。


「ナ、ナ、ナナッ、ナ、ナツ、ナツナッツナツ、ヒコォォオォォオオォォ……!」

「お、お父さま!?」


 幻と思いたい光景なのだろう。夏彦以上に未仔父が壊れていた。

 とはいえ、完全には壊れていないらしい。


「コ、コ、ココッ、コ、コロ、コロコッロコロ、コロォォオォォオオォス……!」

「あわわわわわわわ……!」


 意思を持たぬ脳筋、ここにありけり。

 もはやゾンビ。力無くゆらりと立ち上がると、一歩、二歩、とゆっくり迫ってくる。

 夏彦を亡き者にするために。

 パイタッチしている場合ではないと、夏彦は後ずさろうとする。

 しかし、


「に、逃げない……!」


 夏彦の足が寸でのところで踏みとどまる。

 前日、未仔に守ってもらい、命からがら逃げた出来事と重ねってしまったから。

 守ると誓った彼女を置いて撤退なんて有り得ない。不退転の覚悟でさらに足へと力を込める。

 逃げないのなら、どうすれば未仔父を倒せる?

 そんなことは分かり切っている。方法は1つしかない。

 未仔も理解できている。だからこそ、大丈夫だよと優しく微笑んでくれる。

 一刻の猶予も争う。躊躇する時間が惜しい。

 男もとい、おとこ夏彦、ありったけの想いを叫ぶ。




「おっぱい揉みま――――――――~~~~す!!!」




 叫びと共に、揉む。揉む。揉む。

 触れていただけのおっぱいを、自分の意志でモミモミと。


「っっっ!」「……んっ」


 宇宙の真理を垣間見たような。

 1回、2回と指を動かせば、 びくんっ、びくんっ、と呼応するかのように未仔の身体が僅かに悶える。吐息が漏れる。

 手指に軽く力を入れただけなのに、未仔の柔らかく保水力たっぷりな乳が吸い付いてくる。指からは溢れんばかりに、おっぱいが零れようとしてくる。主張してくる。

 今までだって、未仔乳の感触や温かさを経験していた。けれど、自分から意識的に触るのは初めてで、手のひらの過敏な神経で触る乳房は、今までとは比にならない。


 いつも以上に幸せなのは、手のひらで堪能しているからだけではない。

 手のひら、過敏な神経たちが、夏彦の脳へとメッセージを送っている。

『今、未仔ちゃんノーブラでっせ』と。

 そう。夏彦宅にお泊りした故、急いで家を飛び出してきた故、未仔はノーブラ。

 Tシャツ1枚、薄い布1枚ごしのおっぱいモミモミはチート。禁忌。


 桃源郷に咲く仙果、モモを扱うように、繊細かつ丁寧に揉めば揉むほど、夏彦の血圧もグングン上昇していってしまう。

 羞恥を必死に堪えつつ、「もっと強めても大丈夫だよ……?」と潤んだ瞳で語り掛けてくる未仔が可愛くて仕方ない。

 何百どころか、何千、何万回でもモミモミしたい。

 けれど、これ以上は未仔の身体が持たないし、自分の下半身も持たない。

 未仔乳ではなく、未仔父も。


「み、み、み、み! みみみみこの…………、おおおおおおっっっ……! おぱぁ……!」

「「お、お父さん!?」」「あらあら♪」


 未仔父、今世紀最大のショッキング映像に、見事なまでにひっくり返って卒倒。

 すなわち、完膚なきまでに未仔父大破。

 夏彦と未仔が、ラスボスに勝った瞬間である。

 勝因は愛の力。


 というより、おっぱいの力なのかもしれないが。






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神乳回。


おっぱいフレンズ! ついに夏彦が揉んだぞ!

という、お話でした。


ここまで、読んでくれたおっぱいフレンズに、最大の賞与&感謝をプレゼントできたかなと。

東京ドームレンタルして、おっぱいフレンズたちと万歳三唱したいレベル。

とはいえ、不要不急の時期ということで、パソコンやスマホの画面越しに乾杯で我慢。

おっぱい万歳!!!


とはいえ、エピローグもまだまだ甘さは続くのでお楽しみに。

次回のあとがきでは、今までのことや今後のことを色々とお話できればと!



おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ

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