48話:未仔ちゃんとの甘々デート PART12

 以降も、画面から鬼が飛び出してきそうなくらいイチャイチャしつつ、2人はゲーム実況を楽しんでいく。

 サバイバルホラーのゲーム実況を丸々1本分見終え、画面には次のオススメ動画が多数表示される。

 もしかしたら、未仔以上に夏彦のほうが楽しんでいるのかもしれない。


「未仔ちゃん、次は何観よっか! 続きのシリーズ? それとも別シリーズがいい? 実況者によって楽しむポイントも違うから、別の実況者を観るのもオススメです!」


 エキサイティングする夏彦を見ていた未仔が、クスクスと笑ってしまう。


「??? どうしたの?」

「ナツ君、すごく詳しくて、すごく楽しそうだなって」

「えっ」


 未仔の発言に、夏彦が我に返る。同時に赤面。

 オタクあるある。好きなモノの話になると、周りが見えなくなりがち。


「ご、ごめんっ! 調子に乗ってついつい喋りすぎちゃって。ハハハ……、オタク丸出しでお見苦しいとこをお見せしました……」


 卑屈さMAXの夏彦に、「気にしないで大丈夫」と未仔は微笑む。


「引いてるから笑ったわけじゃないよ?」

「……そ、そうなの?」

「そうだよ。熱中できる趣味を持ってることって、素敵なことだと思うもん」


 お世辞ではないからこそ、未仔は笑顔のまま。


「それにね? すっごいお喋りになっちゃうのも分かるから」

「未仔ちゃんもそうなの?」

「うんっ」


 未仔もまた自分と同じなんだと夏彦は安堵する。

 同時に1つの疑問が沸き起こる。

 未仔ちゃんは、何を語るときに饒舌じょうぜつになるのだろうと。

 大方の予想としては、料理かファッション。

 女の子らしい未仔のことだから、テディベアや可愛い雑貨集めなのかもしれない。

 何にせよだ。未仔が呼吸するタイミングを忘れてしまうくらい無我夢中で好きなものを語る姿を見てみたいと夏彦は思う。


 しかし、その願いを叶えるのは難しい。

 何故ならば、


「友達にナツ君のことを話すとき、私、すっごいお喋りになっちゃうの」

「えっ」


 好きなモノではなく、好きな人。

 しかも、まさかの自分自身。

「お、俺!?」と夏彦がまたしても顔を赤らめれば、未仔も負けじと顔を赤らめて頷く。


「休み時間の教室とか、放課後のファミレスやカラオケでよく聞かれるの。『未仔の彼氏ってどんな人?』って」


 いわゆる恋バナ。

 友達に聞かれるのも無理はない。入学して間もなくで恋人がいるのだ。しかも、アタックされた側ではなくアタックした側、長い年月をかけて成就じょうじゅした恋なのだから。

 これだけ甘々な恋バナが気にならない女子のほうが珍しい。


 嬉しいといえば嬉しい。けれど、未仔が周りの友達に、ものごっついハードルを上げて自分を紹介しているのでは……? と夏彦は心配にもなってしまう。

「ジュノンボーイとか3代目にいそうなくらいカッコいいらしいよ!」とか、「空から降ってきた未仔ちゃんを、身をていしてキャッチしたんだとか!」などなど。

 一体どんなイケメンなんだと未仔フレンズが教室を覗きに来れば、そこにはフツメンが一匹。

「んだよ。ゆるキャラコンテストにでも応募しとけやカス」、「お前が飛行船から飛び降りろアホンダラ」などなど。


 中指を立てられるところまで想像していた夏彦に、未仔が擦り寄ってくる。

 そして、はにかみつつ言われてしまう。


「えへへ……♪ だから私はナツ君オタクなんです♪」

「未仔ちゃん……!」


 心配事など一瞬でどうでも良くなってしまう。それくらいのインパクト。

 それどころか張り合ってしまう。


「お、俺も! 俺も未仔ちゃんオタクだよ! 未仔ちゃん検定があるのなら師範代を目指すし、プロリーグがあるんだったらチャンピオン目指すくらい!」


 鼻息荒く語る夏彦に、「えー? ほんとに?」と未仔も嬉し気。


「それじゃあ、ナツ君がチャンピオンになれるように、もっと私のことを知ってもらおうかな」

「??? それってどういう――」

「ででん♪ 未仔検定から出題でーす♪」

「!」


 可愛らしい効果音から、いきなり始まる未仔検定。


「神崎未仔こと私は、ナツ君に甘えるのが好き? それとも、甘えられるのが好き?」


「何その愛くるしい問題」と、夏彦は問題文だけでトキメいてしまうが、その間にも「チク、タク、チク……」と、未仔タイマーのカウントダウンは進んでいく。

 事は一刻を争う。


「え、えっと! 俺に! 俺に甘えるでファイナルアンサー!」


 夏彦が威勢よく答えれば、出題者の未仔が焦らしプレイ。まん丸で愛嬌ある瞳や小さな手のひらを、ぎゅぅぅぅ~~! と閉じつつ、小柄な身体をぷるぷる震わせる。

 夏彦が生唾を飲み込んだタイミング。ついに未仔の瞳がパッチリ見開く。

 弾ける笑顔で言うのだ。


「ぶっぶー♪」

「えっ!」

「正解は、どっちも大好きでしたー♪」

「!!!」


 不正解者、夏彦に与えられるのは、罰というよりもご褒美。

 それもそのはず。豪快にもハグ攻撃を仕掛けてきたのだから。

 バランスを崩した夏彦が、「うお……っ!」とカーペットへ横になってしまえば、並行して未仔もセットで付いてくる。さらには、押し倒したのには理由があるんですと、夏彦の胸板でゴロニャン。


 思わぬ引っ掛け問題に、夏彦は機嫌を損ねてしまう? 

 否。損ねるどころか、幸せいっぱい。思わず笑顔になってしまうくらいだ。

 とはいえ、


「ずるいぞ未仔ちゃん!」


 じゃれてくる愛する彼女へ仕返しせずにはいられない。イタズラせずにはいられない。

 未仔のサラサラな髪や喉元を撫でれば、「ナツ君、くすぐったいよ~♪」と未仔も大はしゃぎ。互いを愛でれば愛でるほど、止めどなく笑顔が溢れてしまう。


「ナツ君っ」

「ん?」 

「私のこと沢山教えるから、ナツ君も沢山色んなこと私に教えてね?」

「……っ! 勿論だよ!」

「うん♪」


 未仔の幸せすぎる発言に、「ああ……、この子が空き地の段ボール箱に入っていたら、間違いなく連れて帰っちゃうよなぁ……」と夏彦は固体から液体になってしまいそう。


 そんな半固体状態な夏彦が、ふとしたモノを発見する。






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未仔検定は国家資格。

タイトルホルダーは、名人や竜王などを名乗れます。


中々に甘々な回でした。

ごち。


【雑談】

最近、『テセウスの船』とか『100日後に死ぬワニ』とか、好きな作品が最終回を迎えることが多く切ない限りです。


テセウスの最終回では、

「心さぁぁぁぁぁ――――ん!!!」


ワニくんの最終回では、

「ワニくぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!」


となってしまうほど。

本当に良き作品でした。



というわけで、別れの季節の3月が間もなく終了。

新入生、新社会人のフレンズたちは、新シーズンに向けてしっかり準備してますでしょうか。

「おっぱい読んでて、何も準備してませんでした。ぐへへへへへ」は、アカン絶対。


朝に弱い子は、寝ぐせ直しウォーターを推奨。

「俺は1分1秒でも多く寝ていたい……!」という猛者は特に。

100均でも売ってまっせʅ(◔౪◔ ) ʃ



「我も未仔ちゃんオタクでっせ」というおっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

Twitterもやってます(☝ ՞ਊ ՞)☝

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