39話:未仔ちゃんとの甘々デート PART3

 さすがにボトムスまで鏡前で着替えるわけにはいかないと試着室へ。

 上下一式、初期アバターコーデから着替え直した夏彦がカーテンを開けば、当たり前にニコニコ顔の未仔がお出迎え。


「ど、どうかな?」

「うんっ! すっごく似合ってる♪」


 夏彦に激甘な未仔なだけに、たとえ全裸にポシェットのスタイルで夏彦が登場したとしてもベタ褒めしていただろう。

 とはいえ、オシャレビギナーの彼氏のために、しっかりと汎用性の高いアイテムでツボを押さえている。

 トップスはTシャツ+カーディガン、ボトムスはスッキリしたシルエットが特徴のテーパードパンツ。シンプルかつ好き嫌いの分かれないコーデは夏彦にピッタリだ。


 夏彦としても、未仔が一生懸命選んでくれた服一式を身にまとっているだけで幸せ状態。ニコニコ笑顔で似合ってるとまで言ってくれるのだから、今すぐにでもレジへ駆けつけたい所存である。

 駆けつけたい。けれど、駆けつけることはできない。


「お邪魔するね」

「え……?」


 何故なら試着室に未仔が入ってきたから。

 退路を塞ぐかのように未仔がカーテンを締めれば、閉鎖空間の出来上がり。

 そして、何を考えているのか。


「!!! みみみみ未仔ちゃん!?」


 至近距離にいる未仔が、シャツのボタンを1つ、2つと外していく。

 半畳ほどの窮屈な空間で、未仔の脱ぎ脱ぎタイム突入。

 夏彦には何が起こったか、何が起こっているのか理解できない。

 理解はできないが、小柄な彼女のインナーからチラ見えする谷間は、世界百景にノミネートされるべきだということは理解できる。それくらいシャツで隠れていたバストは、未仔の性格にそぐわないほどに主張性が強い。まさしくワガママボディ。


 エロへの耐性が紙耐久である夏彦は、咄嗟とっさに後ろを向くのだが、鏡があるだけに未仔の姿がばっちり映し出されている。鏡越しという背徳感に耐え切れず今度は目をつむるのだが、布のこすれる音が鮮明に聞こえてしまう。

 最強のASMRに、天国へと誘われる寸でのところ、


「ナツ君っ、ナツ君っ」


 未仔が夏彦の肩を指でトントン。

 さもコッチを見てほしいと言わんばかりの対応に、夏彦の心臓の鼓動は底知らず。

 それでも、いつまでも棒立ちしているわけにもいかない。

 ついには意を決して振り返る。


「み、見るよ……?」


 ゆっくりと目を開けば、「あ」と思わず声が漏れてしまう。

 自分と同じ試着室で着替えたかった理由を、夏彦は瞬時に理解する。


「じゃーん♪」


 上機嫌に両手を広げる未仔のトップスに注目。

 未仔が着用するロゴTシャツは、夏彦の着ているTシャツと全く同じものだった。

 突如の脱ぎ脱ぎタイムに、邪な感情を抱いていた夏彦だが、そんなちんけな感情も吹き飛んでしまう。それくらい、「えへへ……♪ お揃いだね?」と照れつつも寄り添ってくる彼女が可愛らしくて仕方がなかった。

 鏡に映る自分たちを見つつ、未仔は話しかける。


「あのね。ペアルックってちょっと恥ずかしいけど憧れがあったの」

「そ、そうなの?」

「うんっ! だから、今叶えちゃいました♪」


 一層に寄り添ってくる未仔が鏡へと笑いかければ、夏彦の表情も思わず緩んでしまう。何故この鏡にはシャッター機能が付いていないのだろうと疑問まで抱くほどである。


「いざ一緒のを着てみると欲しくなっちゃうね。ナツ君と一緒の買っちゃったらダメ?」

「ダメじゃないダメじゃない! むしろ大歓迎だよ!」


 彼氏に甘い未仔だが、夏彦もまた彼女に激甘。

 夏彦から一緒のをTシャツを買える許可を得れた未仔は、一層にパァァァァ! と表情を輝かせて大喜び。


「ピッタリめのサイズと大きめのサイズだったら、ナツ君はどっちが好み?」


 夏彦の脳にて緊急サミット開催。

 今現在、未仔が着ているTシャツはピッタリめで、未仔の胸の素晴らしさをアピールするならば打ってつけのサイズと言えよう。


 しかし、夏彦は知っている。大きめのサイズはサイズで魅力的なアイテムということを。小柄な未仔をすっぽし覆い包むような、彼氏のTシャツ借りてます的な半端丈が、極上のエロスを醸し出すということを。


「う~ん……、どっちも捨てがたい……」

「あの~」

「えっ!?」「!」


 2人が驚くのも無理はない。カーテンの向こう側から話しかけられたから。

 夏彦が恐る恐るカーテンを開ければ、ニコニコ顔の女性店員さんがコンニチワ。

 そして、


「よろしければ、大きめなサイズお持ちしましょうか?」


 聞かれていたらしい。イチャイチャバカップルトークを。

 とはいえ、「試着室でイチャイチャすんじゃねぇ」と中指を立てられないだけ、ありがたい話である。

 死ぬほど恥ずかしいが、夏彦は恥ずかしがったら負けだと声を振り絞る。


「お、お願いしま――、」

「~~~~っ……!!! 自分で取りに行きますっ!」


 未仔、恥ずかしさに勝てず。自分のローファーと夏彦のスニーカーを盛大に間違えつつも売り場へと全力でフェードアウトしてしまう。

 店員さんがクスクス。


「彼女さん、すっごく可愛いですね?」

「~~~~っ……!!!  はいっ……」


 夏彦も恥ずかしさに大敗。






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密室空間でのお着替えタイム。


全裸にポシェットにするか、巾着きんちゃく袋にするかで5分迷いました。

世界一無駄な5分。



ピタピタTシャツとBIGサイズTシャツ、おっぱいフレンズはどっちが好み?

悩むところではあるけど、俺はBIGサイズかなぁと。

BIGサイズ+ショートパンツの「履いてます? そりゃ履いてますよねー」の組み合わせは、ずっちー。

ずっちーの意味が分からない子は、親に聞きなはれ。




生着替え、ずっちーと思ったおっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

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