37話:未仔ちゃんとの甘々デート PART1
天気は快晴、絶好のお出掛け
そう。本日は待ちに待ったデートの日。
玄関前の鏡にて、夏彦は最後の身だしなみをチェック。
朝シャンで洗いに洗いつくした髪は、ドライヤーでふんわりとセットしたナチュラルスタイル。
アイロンを何往復もさせた無地シャツはシワ1つなく、しっかりファブしたジーンズはウイルスや嫌な匂いとはバイバイキーン。
イケメン男子ならば、ワックスやムースでクセ毛風パーマを演出したり、前髪やサイドをルーズに流したりするのだろう。
オシャレ男子ならば、セレクトショップや古着屋で買った服を、プレッピースタイルだのスポーツミックスだのとコーディネートするのだろう。
そんなことが夏彦にできるわけもない。
しかし、できなくて良い。
気付いたのだ。一朝一夕でできないことを無理に実行するくらいなら、今の自分にできる範囲を努力するほうが最適解だと。
浅知恵で、薄くテロッテロッな生地のベストを羽織ったり、半端丈でシャカシャカなパンツを穿くくらいなら、ALLユニクロに頼ったほうが正解だと。
「よし……!」
全ての身支度を終え、夏彦は玄関扉を開く。
気分はカタパルトから射出したモビルスーツ。
夏彦行きます。
※ ※ ※
普段以上に身だしなみは整えたし、しっかり頭に入っているデートプランも今一度確認し直した。
それでも待ち合わせ場所に30分も早く夏彦が到着しそうなのは、目覚まし時計より早く目覚めすぎたから。目覚まし時計のセットですら早めに設定していただけに、若干の眠さは否めない。
けれど、そんな睡眠欲などあっという間に吹き飛んでしまう。
「あれ……?」
待ち合わせ場所である、地元の駅前。
見間違うはずがない。
春の花が満開に咲き誇る花壇を背景に、愛する彼女が立っていた。
未仔だ。
町を彩るための花たちが、まるで未仔を彩るかのように、輝かせるかのように祝福し続けているではないか。
夏彦が、未仔のもとへと駆け足で急ぐ。
さすれば、夏彦の存在に気付いた未仔も、パァァァ! と笑顔を咲かせる。
『未仔feat.お花畑』の完成である。
「おはよう、ナツ君♪」
「お、おはよう! すごい早いけど、いつからいたの!?」
「えっと……、15分くらい前、かな? ナツ君のことだから、30分前には来ちゃってるかもなって」
まさかの45分前行動。さらには、自分のことを思っての行動だと知ってしまえば、夏彦の心臓は目まぐるしく収縮し続ける。
トドメに、「楽しみすぎて、早起きしちゃったのもあるんだけどね」と舌をチロリと出されてしまえば、もう死んでもいい……! と考えてもしまう。
しかし、死ぬにはまだ早い。今からデートを楽しむのは勿論のこと、彼女の私服すらしっかり拝めていないのだから。
紺色のハイウエストスカートに、レース調の大きな襟が特徴のシャツの組み合わせは、小柄な未仔を一層に愛くるしく魅せるガーリーコーデ。赤いリボンがワンポイントに付いた革靴も含めれば、「鏡の国から抜け出してきました」と言われても信じてしまうほどにアリス感たっぷり。
普段と異なるのは服だけではない。未仔の小ぶりな唇はいつも以上にプルルンと色っぽく潤っているし、髪や身体から微かに鼻孔をくすぐる香りは、普段とは違うバニラ香。
総評。『未仔ちゃん、新世界篇』がスタートするでしょう。
可愛さ不可避。目に焼き付くどころか、目に彫り刻む者が続出するレベル。
脳にひたすらインプットされ続ける情報を、夏彦は思わず呟いてしまう。
「か、可愛い……」
「へっ!?」
愛して止まない彼氏のドストレート発言に、未仔も赤面待ったなし。
ガラス玉のようにクリッとした瞳をさらに大きくする未仔を見て、ハッ! と我に返った夏彦は大慌て。
「ご、ごめんね! これじゃあ、いつもは可愛くないみたいだよね!? 違うから! いつもの未仔ちゃんもすっごく可愛いと思ってるから! けど、今日は今日で新鮮味があったんだ。今日の服装は、小柄で小動物っぽい未仔ちゃんにピッタリだと思うし、透明感と可愛らしさがマッチしてて俺に突き刺さっちゃったというか……。と、とにかく! めちゃくちゃ可愛いと思いました! ううん! めちゃくちゃ可愛いです!」
夏彦、呼吸すら忘れてマシンガン弁明トーク。
被弾した未仔は、どうなったかと言えば、
「ナツ君っ……!」
「う、うん?」
夏彦の袖をギュッ、と握り締めて言うのだ。
「もう一度、言ってもらってもいい……?」
「っ!!!」
見上げてくる彼女のおねだりに、断る道理がない。
夏彦は照れつつも、
「え、えっと……。未仔ちゃんは、めちゃくちゃ可愛い、……です」
言ったほうもモジモジし、言わせたほうも負けじとモジモジ。
「えへへ……♪ ナツ君に褒められちゃった♪」
店員に、『ご一緒に未仔ちゃんはいかがですか?』と勧められたら即テイクアウトしてしまう。それくらい破壊力満載の未仔。
どれだけ課金しても手に入らないSSS級ヒロインが、手に入っている事実を改めて夢心地に感じてしまう。
ボーッ……、と昇天しそうな夏彦を見て、ハッ! と今度は未仔が我に返る。
そして、深々と夏彦に頭を下げる。
「ナツ君、今日はよろしくお願いします」
「…………。!!! い、いやいやいや! コチラこそ本日はよろしくお願いします!」
お互いに初々しく頭を下げ合い、ようやくにデートが幕開け。
そんな2人で大丈夫かと思ってしまうが、心配する必要など全くない。
「ちょっと早いけど行こっか」
「うん♪」
頷いた未仔が、いつもどおり夏彦の腕へと高密着し、照れを帯びる夏彦も、いつもどおり未仔と歩き始める。
いつもどおりの幸せいっぱいな光景である。
「えへへ……♪ 30分も長く、ナツ君とデートできちゃう♪」
幸せいっぱいに呟く彼女を見つつ、夏彦は密かに誓う。
『次のデートからは、前日夜から野営してスタンバろう』と。
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デート回お待ちどうっ。
メープルシロップのハチミツ割りを召し上がれ。
甘死。
【雑談】
Twitterの話。
少し前までは『おひとり様』の読者さんがフォローしてくれることが多かったのですが、ここ最近は『おっぱい揉みたい~』の読者さんも中々に。ありがたい話です。
大体、アカウント名になろうとかカクヨムに関することが書いてたら、「あ。おっぱいフレンズだ」と判断しています。
インパクトのある名前の人は、そこそこ前にフォローいただいていても鮮明に覚えています。
「
とか、
「聖なるワキ毛軍曹? コイツは何経由でフォローした……?」
とか(笑)
名前って大事ですね。
甘々祭り参加中のおっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。
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