33話:作戦会議は悪友と PART2

 ガサツな悪友に相談しようと思った自分が馬鹿だったかもしれないが、それでも夏彦は諦めない。


「デートプランの相談は最悪いいよ。でもさ!」

「でも何やねん」

「服は一緒に選んでくれよ! 俺がオシャレな服一着も持ってないの知ってるだろ!? カッコ良くないの知ってるだろ!?」

「めっちゃ卑屈やなお前……」

「もとからプライドはない!」


 さすがの琥珀もドン引き。

 しかし、ドン引きしたからといって、同情するかどうかは話は別。


「面倒やから却下。連れション行こーぜのほうがまだ魅力的やわ」

「お、俺の一世一代のデートが小便以下……?」

「一世一代のデートなら、自分独りでバシッと全部決めんかい」

「ご、ごもっともかつ男らしい……」


 夏彦はつくづく思う。自分が女だったら、間違いなくコイツに惚れていたと。

 とはいえ、初デートに臨む身としては、心配で心配で堪らなくなるのは致し方ない。自分が平々凡々な男だと自覚しているからこそ、1ミリでも高く背伸びしたくなる。


 一世一代のデートに胸焦がれて生きてきたが、いざデートが決まれば、服やデートスポット、食事などで慌てふためくのが一般的な男子高校生の定めなのだから。

 床に片肘ついて横たわる琥珀は、もはや休日のお父さんムード。


「そもそも、ウチに相談すること自体お門違いやろ。ウチの今の格好、ナツはオシャレやと思う?」

「…………」


 休日のお父さんと化した琥珀を、夏彦はまじまじと観察してみる。

 トップスは無地色タンクトップ、ボトムはスウェットハーフパンツ。


 決してダサくはない。けれど、やはり年頃の女子高生ならば、モコモコのルームウェアであったり、マキシ丈のワンピースやらセットアップのパジャマなど、そういった部屋着を着こなしている。そういった者にこそ、オシャレの称号は相応しいだろう。

 そもそも、男友達の前で露出度MAXな格好などしない。


 総評。『オシャレではない。というより、その恰好で横たわるなエロい』である。


 夏彦の表情で決着はほぼほぼ付いてはいるが、琥珀はダメ押し決行。寝そべったままにゴロゴロと目的地目掛けてローリングスタート。

 話しかけるのも面倒だと、隣に座る夏彦ごと巻き込んで。


「ちょっ、琥珀!?」

「ほれほれ。クローゼットまでナツも転がらんかい」


 180度回ればたわわなバスト、180度回ればキュッとしたヒップが夏彦の胸板や太ももに襲い掛かり続ける。


「わ、分かったから押すな!」


『これ以上の幸せは未仔ちゃんへの裏切り』だと、夏彦も逃げるようにクローゼット目掛けてローリングしていく。

 部屋隅のクローゼットまで辿り着けば、立ち上がるのも億劫おっくうな琥珀が、器用にもシンクロよろしくに、足の指でクローゼットをオープン。


 さすれば、スポーツメーカーのジャージやパーカー、アウトドアメーカーのマウンテンパーカーやモッズコートなどなど。可愛らしいというより、男らしい・スポーティー・カッコいいといった印象のアウターがずらり。

 同じく隣に横たわる夏彦に、琥珀ドヤ顔。


「ウチが服を選ぶ基準は、オシャレよりも機能性や。フリル付きのスカート穿くんやったら速乾性の高いスウェットパンツ穿くし、女子っぽい甘ったるいコート羽織るんやったら、防水防風なゴアテックス機能を搭載したマウンテンパーカーを羽織る!」

「か、考え方が男……。というより、30代前半、仕事が忙しくてオシャレに然程さほど興味を示さなくなったサラリーマンだ……」


 年頃のJKならば、リーマン扱いされれば嫌な顔の1つでもするものだが、琥珀はケタケタケタ! と意にも介さず白い歯を見せる余裕っぷり。

 琥珀がクローゼット下にあるタンスを指差す。


「そこのタンスも開けてみ? Tシャツは、ナイキやらニューバランスなんかのスポーツメーカーとユニクロばっかりやから」


「俺が言うのもアレだけど、琥珀も服装気にしたほうがいいと思う……」と、夏彦は呟きつつ、3段あるタンスの1番上を開ける。

 そこには、


「っ!? こ、これは……」


 白・紺・黒・水色などなど。丁寧に折りたたまれたショーツやブラがコンニチワ。

 徳川埋蔵金がかすんでしまうほどの桃源郷がタンスという大海原に広がっているではないか。

 ブラの布面積の大きさに、改めてカップ数の大きさを実感してしまう。

 鼻血もののアクシデントに目ん玉ひん剥いてフリーズする夏彦に対し、琥珀は至って平常心。


「あ。ちゃうちゃう。その段は、ウチの下着ゾーンやから」

「~~~~っ! 頼むから段も指定してくれよ!」

「ちなみにウチお気に入りの下着メーカーは――、」

「みなまで言うなぁ!」


 どっちが男で、どっちが乙女か分かったもんじゃない。


 改めて、琥珀の服を見た夏彦は根本的なことに気付く。

 自分がオシャレに無頓着なのと、琥珀の無頓着とではワケが違うことに。


 夏彦と琥珀では素材が違いすぎるのだ。

 要するに、イケメンや美少女に限るという奴である。


 ユニクロの広告チラシなんかに載っている外国人が、ダウンとスラックスのシンプルコーデが死ぬほどおシャンティに見えるのに、いざ多くの日本人が同じ格好にトライするとチンチクリンに見えてしまう現象と同じ。

 そういった現象が夏彦と琥珀にも起こっている。


 そう。人生はエグい。






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ユニクロのエアリズムのブラ&ショーツ、個人的にすごいエロスを感じる。


あと2,3話くらいでデート編に突入すると思われ。



【雑談】

なろうとカクヨムでいただいた感想を読んでいると、「2つのサイトで感想の傾向が結構変わるなぁ」としみじみ。


なろう:フェチズムに強い拘りを持つ変態多し。

カクヨム:どストレートにエロい奴多し。


どっともどっち。

いつか学会に提出しようと思います。



「確かに、エアリズムの下着エロい」と思った同志は、ブックマーク&評価よろしくどうぞʅ(◔౪◔ ) ʃ

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