27話:彼女と下校は、男子高校生の憧れ PART2

 校門前まで大急ぎで夏彦が向かえば、既に少女は立っていた。

 見間違うわけがない。1年生の中でも小柄な身長にあどけない顔立ち、けれど、凛とした姿勢や佇まいには、可愛らしさ以外に華麗ささえ兼ね備わっている。


「ナツ君っ♪」


 校舎からやって来る夏彦に気付いた未仔は、その場で待っている時間さえ惜しいと、愛する彼氏のもとへ急ぐ。

 その姿は、出張から帰ってきた主人に、飛びついてくる子犬のような。


「待たせちゃってごめん!」

「ううん。私もさっき来たばかりだから平気だよ」


 テンプレにして至高のやり取りである。

 人生で一度は言ってみたい、言われたいセリフをおのずと達成させた夏彦は、それだけでも大満足。

 しかし、次々と欲求が湧いてしまうのは、男子高校生のさが


『手を繋いで帰りたい』


 そんな欲求が湯水のごとく溢れ出てしまう。

 とはいえ、ココは公衆の面前どころか未だ学校の敷地内。当たり前に下校中の生徒たちが多数いるわけで。

『未仔ちゃんだって恥ずかしいに決まってる。うん、そうに違いない』と、半ば強制的に己の欲求を夏彦は閉ざす。


 しかし、


「ナツ君、行こ?」

「っ!」


 我慢など、愛する天使の前ではする必要がない。

 甘えたな未仔が、当たり前に夏彦の手を恋人握り。さらには、二の腕に密着するように寄り添ってくる。

 未仔の高めな体温、柔らかな感触がじんわりと夏彦の身体へと伝わっていき、あっという間に幸せの絶頂へ。


 熱々でラブラブなカップルの陣形が完成すれば、やはり、下校する生徒たちの視線がすごい。未仔の大胆な行動にビックリする者や、羨望の眼差しを夏彦に送り続ける者など。


 周囲の目線など、夏彦は気にならない。

 否。気にする余裕がない。

 顔を赤くした未仔が、笑みを溢しつつ言うのだ。


「えへへ……♪ 人前だとやっぱり恥ずかしいね?」


 ハートの矢どころか、大口径マグナムが夏彦の心臓をズッキュン。

 射止められた心臓は、普通なら止まってしまうのだろう。しかし、夏彦の心臓は止まるどころか、爆音で高鳴り続ける。


 夏彦の感想。

 死ぬほど、かわええ……っ。


 未仔の満開な笑顔は、桜並木の景観さえ、かすんでしまうレベルだ。

 生きてるって素晴らしい……! と身に染みて感じている夏彦へと未仔が話しかけてくる。


「あのね、ナツ君」

「ん? どうしたの?」

「寄り道したいところがあるんだけど、いいかな?」


 夏彦が断る道理などあるわけがなく、二つ返事で了承すれば、2人は仲睦まじくも駅のホーム目指して歩き始める。







------------

今日は甘可愛い話を書きたかった。

だからこんな話。


次回は、しょうもないけどエッチな話を書く予定。

僕たちの大好物。



‐余談‐

前の話で、


誤) 気の置ける友人

正) 気の置けない友人


とフレンズから指摘をいただいたので修正しました。

実はこのミスの指摘2回目。もしかしたら同じフレンズの可能性大。

もっと言えば、校正さんに全く同じ指摘を受けた経験アリ。


クセになってんだ。間違った表現使うの。

学習能力なくてスマヌ。


というわけで、いましめとして、あとがきに書きました。

多分、あと2、3回同じことやらかす気がする。



そんな、お茶目な作者でも許してくれるフレンズは、ブックマーク&評価おなしゃす。

------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る