23話:うわっ……俺の信用度、低すぎ……? PART5
まるで、お気に入りのテディベアで、遊ばれてむくれる子供のような。
これ以上は触っちゃダメだと、未仔は立ち上がらせた夏彦を力いっぱい手繰り寄せる。
夏彦の腕が、自身の胸にずっぽし埋まるくらい、包み込むくらいに。
これは私の大切なものだと言わんばかりに。
小動物系女子は、主にセクハラを加える琥珀へとキャンキャン吠える。
「ナツ君は私の恋人ですっ! 噛んだり、抱き着いていいのは私だけなんですっ!!!」
「……」
あっけらかんとした琥珀は思う。
「この子、ホンマもんの痴女なん?」と。
未仔も大概だが、琥珀も大概である。
一方その頃夏彦。
「~~~~っ……!」
夏彦は「未仔ちゃんに甘噛みされた……!」という朗報が、頭の中をぐるぐるとエンドレス再生中。噛まれた箇所から『幸せ』という名の毒が全身を駆け巡っていた。
歯を立てず、耳たぶに押し当たっていた未仔の柔らかい唇の感触が忘れられない。『取り乱しているにも拘らず、自分を傷付けないように甘噛み』という
結論。俺の彼女、最強に可愛い。
誰に信用されなくとも、もうどうでもいいという感情さえ芽生えている。
とはいえ、未仔としては、愛する恋人が狼少年にされていることが我慢ならない。
故に、
「皆さんも皆さんですっ!」
「「「「「「!!!」」」」」」
琥珀だけではなく、夏彦のクラスメイトにも物申す。
「ナツ君は騙してなんかいませんし、騙されてもいません!」
頬をパンパンに膨らましてプンスカする姿は、アニマルプラネットなんかで観る小動物にしか見えないが、未仔としては大真面目。
大真面目だからこそ、
「これが1番の証拠です!」
「!!!??? み、みみみみみみみ未仔ちゃん!?」
衝撃再来。
それもそのはず、未仔がいきなりに横から抱き着いてきたから。
これが目に入らぬかと、ぎゅぅぅぅぅぅぅ~~~~っ! と。
「私は本当にナツ君のことが大好きなんだもんっ!!!!!」
「っっっっっ……!」
女子特有な柔らかな肌は勿論、未仔の大きく形の良い胸がへしゃげ、これでもかと高密着。ミルクブラウンの髪や小柄な身体からは、甘い花のような香りが鼻孔をくすぐる。何より、自分が大切にされているのだとハッキリと分かり過ぎる言葉。
夏彦、止めどない幸せに
呼吸を忘れるぐらい抱き着くことに集中していた未仔が、教室中を見渡す。
さすれば、カースト関係なく勢いに押された多数の者たちは、コクコクコク! と何度も首を縦に振り続けている。一部の人間など、「これが愛なのか」と拍手すら送っている。
力技で一同を認めさせた未仔は、興奮状態から覚めてしまったようだ。
ハッ! と小さな口を小さく開く。
「あ、そ、その……! 先輩たちに向かってごめんなさい!」
語勢を荒らげてしまった罪悪感、大好きな夏彦のためとはいえ公衆の面前で抱き着いてしまったことなど。様々な感情が未仔の顔を真っ赤にしてしまう。
普通の女の子なら、逃げるように教室を去っていただろう。
けれど、未仔の取る行動は、夏彦の背中に隠れる。
愛する恋人の背に、赤面する顔を押し付けて身を縮め続ける。猫や犬が自分の匂いで落ち着くのと同じように、未仔にとっては夏彦の匂いが一番の安らぎスポット。
それ以上に恥ずかしいのは夏彦。
「え、えっとその……、じゅ、純粋に恥ずかしい……っ! 幸せすぎてツラい!」
未仔に負けじと、顔を両手で隠して大赤面。
無理もない。大して脚光を浴びずに生きてきた平凡な男が、一同の注目を一点集中受けているのだから。さらには、未仔がどれだけ自分を愛しているのかを、これでもかというくらい、この短時間で思い知らされたのだから。
赤面する2人は互いに縮こまる。平常心を取り戻そうと、互いに体温を温め合うかのように身を寄せ続ける。
無駄な努力である。
そんな夏彦の後頭部にデコピンがかまされる。
攻撃主は草次。
「イテッ! ? そ、草次?」
「照れてる暇あったら彼女送ってやれ。もうHR始まるから」
未仔を彼女だと認めてやりつつ、事態を収束へと導く。伊達に長いことイケメンをやっているわけではない。
友に喝とさりげない優しさを入れられ、夏彦も少しだけだが落ち着きを取り戻す。
『恥ずかしがっている場合ではない。今は彼女を守ってあげなければ』と。
深呼吸を1回、2回とした後、
「未仔ちゃん、クラスまで送るから行こっか」
「う、うんっ……」
夏彦は未仔の手を握ると、自分の教室を後にする。
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今回は、可愛さに極振りした話を提供。
甘々なんで、苦いお茶やコーヒーと一緒に召し上がれ。
小動物あるある。
威嚇が可愛く見える。
我も抱きつかれたい、大好きと言われたい、という同志はブックマーク&評価よろしくどうぞ。ʅ(◔౪◔ ) ʃ
新年会でエネルギー充電できたので、明日からは平常運転で頑張っていきまーす。
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