22話:うわっ……俺の信用度、低すぎ……? PART4

 小学低学年な争いは続く。


「プレーン顔系男子のナツが、こんな可愛くておっぱい大きい子と付き合えるわけないやん!」

「プレーン顔って言うんじゃねえ! せめて、噛めば噛むほど味のある顔って言え!」

「3時間後のガム顔が何言ってんねん」

「はぁぁぁぁ!? 30分後くらいの味は出せるんですけど!?」

「30分も3時間も変わらんわ!」

「いーや変わるね!」

「変わらん!」

「変わる!」

「おっしゃ! そこまで言うなら味見したるわ!」

「えっ? 味見って何考え――、!!!???」


 琥珀、歯をガチガチさせつつ、夏彦へと急接近。進撃の琥珀。

 塩顔系男子やソース顔系男子の顔面は、調味料の味などしない。もちろん、プレーン顔系男子の夏彦も。

 琥珀もそこまで馬鹿じゃない。アンパン顔系男子しか味はしないことくらい分かっている。

 すなわち、ただの嫌がらせである。


 傍から見れば、美少女の過剰なスキンシップはとてつもなく羨ましい。けれど、被害者である夏彦からすれば、悪友のウザ絡み。


「ぐぐぐ……! は、歯をガチガチさせて近づいてくるなぁ……! 喰種グールかお前は……!」

「ぎぎぎ……! 大人しく味見されんかいぃぃぃ……~~~!」


 己の顔面を食われてなるものかと、襲い掛かる琥珀の顔面をアイアンクローで必死に防ぎ続ける。

 争いは小学低学年どころか、もはや幼稚園タンポポ組。

 タンポポ組の光景に、草次は盛大に溜息づく。


「何やってんだか……」


 今現在の草次は、夏彦と未仔の関係が恋人同士だということを少なからず認めていた。

 前日、一足先に帰ったため、夏彦と琥珀の間で交わされたやり取りを草次は知らない。故に、目前に彼女と名乗る少女がいるのだから、そこまで深く疑う必要もない。


 しかし、それはあくまで『草次』に限った話。夏彦の人畜無害、平穏な性格を気に入っている草次だからこその評価。

 夏彦に彼女ができた、という情報を聞いていたクラスメイトたちの反応は異なる。


 カースト上位の女子2人、ギャル系女子の沢北朱莉さわきたあかり、文武両道女子の久方涼花ひさかたりょうかは、


「傘井の彼女がアノ子ってマジ? う~~~~ん……、どう見ても釣り合ってないよね?」

「こらっ! 傘井君に失礼でしょ! けど、…………。傘井君、何かイタズラに巻き込まれてる、……かも?」


 文科系男子の2人、囲碁部の権田正輝ごんだまさき、eスポーツ同好会の宮村信人みやむらのぶとは、


「何でだろうなぁ。『羨ましい!』って感情が来ないといけないのに、『ハニートラップ?』って気持ちが先に来ちゃうんだよなぁ」

「分かるわー。てか、冴木さん驚かすドッキリなんじゃね? 俺的には冴木さんにイジメられてるポジションのが羨ましいんだけど」


 などなど。

 大体の意見が、『琥珀にドッキリを仕掛けようとしている』か、『夏彦自身がドッキリを仕掛けられている』の2パターン。


 別にクラスメイトたちも悪気があって、恋人の存在を認めないわけではない。純粋に夏彦という存在に彼女ができることが想像できないのだ。

「貴方のこと、友達にしか見れないの。ゴメンね?」ランキングがあるのなら、ぶっちぎりの1位を獲得するレベルなだけに。


 逆に称えても良いレベルだ。クラス替えして間もないにも拘らず、ここまで平々凡々なキャラが浸透しているのだから。驚異とも取れる。

 有名人である草次と琥珀と一緒にいる一般人ぱんぴーで有名なことも大きいが。


 というわけで、夏彦に可愛い彼女がいるという真実が受け入れられるのには、未だ時間が掛かる。平々凡々な男の定め。

 人の噂も七十五日というくらいなのだから、それくらい同じ日数、夏彦と未仔が一緒に居続ければ、自ずと周りの人物たちも2人の関係を認めてくれるだろう。


 故に、


「ぐぐぐ……! いい加減、俺から離れろ……! 噛みつこうとするなぁ……!」

「ぎぎぎ……! ウチを騙した罰、モンハンの誘いを無視した恨み、ただのウザ絡み、この3点セットから逃げれると思うなぁ……!」


 今現在の夏彦が、琥珀に食べられる寸前なのは仕方がない。

 それが自然の摂理。


 いくら男女間の力量差があるとはいえ、夏彦は椅子に座っている状態で、琥珀は立っている状態。夏彦のほうが圧倒的に分が悪い。

 ついには、


「も、もう……限、界……!」「噛~ま~せ~ろ~!」

 夏彦が琥珀ゾンビに噛まれてしまう。



 寸でのところだった。



 横から小さな影が夏彦と琥珀の間に入り込んでくる。

 その正体は、未仔。


 そして、


「!!!??? み、みみみみみみみ未仔ちゃん!?」


 夏彦の顔が瞬時に沸騰するのも無理はない。

 琥珀や草次、クラスメイトたちが驚くのも無理はない。


 未仔が夏彦の耳たぶに噛みついていたから。

 小さな口で、はむっと甘噛みで。


 夏彦の耳たぶから唇を離した未仔は、琥珀のほうへと振り返る。

 そして、力強く言うのだ。


「ナツ君は薄味なんかじゃないもん!!!」


 小動物、猛る……?






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おっぱいフレンズは、中々おっぱい出てこなくて不安よな。

未仔 動きます。


という、ちょいサービス回でした。

勿論、今後ガッツリサービスもしまっせ。


耳たぶ甘噛みが羨ましいと思ったムッツリさんは、ブックマーク&評価よろしくどうぞ。Twitterもやってますʅ(◔౪◔ ) ʃ

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