24話:平凡な男は誓う

 予鈴が鳴ったばかりの廊下は、数人のカバンを背負った生徒とすれ違う程度で、閑散としている。

 手を繋いだままの未仔が、心配そうに夏彦の耳たぶを見つめる。


「ナツ君、ごめんね。痛くなかった?」

「いやいやいや! 全然痛くなかったよ! 丁度良かったというか、嬉しかったというか! ははは! ……へ、変態みたいなこと言って、俺こそ申し訳ない……」


 変態なことを言ったのだから、夏彦はドン引きされても不思議ではない。

 勿論、未仔がドン引きするわけもなく。首を大きく横に振って夏彦の謝罪を否定する。

 それどころか、


「未仔ちゃん?」


 未仔が歩くのを止めてしまう。

 そして、悲しげな表情で頭を下げてしまう。


「本当にごめんなさい」

「えっ?」

「私がムキになったせいで、ナツ君、クラスに戻るの気まずくなっちゃったから……。あの綺麗な先輩も、もしかしたら怒らせちゃったかもしれないし……」


 しょんぼりする未仔の手は、夏彦が握っておかなければ、離れそうなくらいか弱い。

 儚げな姿は、「自分が守らなければ」という使命感をどうしようもないくらい駆り立たせる。


 けれど、夏彦は気付いている。実際に守られたのは自分自身なのだと。

 自分を守ってくれた彼女が、今も尚、自分を想って落ち込んでいる。

 だとすれば、やるべきことくらい分かっている。


「? ナツ君?」


 夏彦は未仔の手を、優しくも力強く握り締める。

 絶対に離すものかと。

 さらには、ゆっくりと諭すように未仔へと語り掛ける。


「ごめんね、心配かけちゃって。けど、何も心配いらないよ」

「でも……」

「クラスの皆は、俺のことが嫌いで疑ってたわけじゃないからさ。俺に可愛い彼女ができたことにビックリしすぎただけだよ。だから、あんなことで不快に思う奴なんていないし、特に琥珀――、えっと、あの関西弁の奴は、特に気にしなくて大丈夫」

「そう、なの?」

「うん。アイツは男勝りでガサツな奴だけど、一番俺のことを分かってくれてる友達だし」


「分かり過ぎて一番混乱してるんだよ」と語る夏彦も、琥珀の良き理解者。互いに信頼している悪友、相棒だからこそ何も心配はしていない。

 夏彦は少し間を置く。


 そして、


「だからさ」

「だから……?」

「俺が頑張っていくよ。誰もが未仔ちゃんとお似合いの彼氏だって思われるように」

「!」


 夏彦の言葉に、未仔の瞳がさらに大きなものに。

 そんな未仔の驚く表情に、夏彦は少々照れくさそうに笑う。


「年下の子に追いつこうとしてる時点で、情けない話ではあるんだけど――、!? み、未仔ちゃん……っ!?」


 話を聞くまでもない。そもそも我慢ができない。

 そう言わんばかりに、未仔が夏彦へと真正面から抱き着く。

 それはそれはいとおしそうに、背中に手を回すくらいの抱擁で。


「っ……!」


 今日1日。それどころか、朝っぱらから夏彦の鼓動は速まることばかり。

 廊下のド真ん中故、いつ誰に見られるか分からないドキドキが、さらなる高鳴りへと導いていく。


「み、未仔ちゃん……! さすがにココでは――、」

「ナツ君が頑張るなら、私も頑張る!」

 今度は夏彦の瞳が大きく開いてしまう。

「私もナツ君に似合う彼女になれるように目一杯頑張るから。だから、これからもよろしくね?」


 惜しげのない笑顔で見上げてくる未仔に、夏彦は悶絶必至。

「未仔ちゃんが頑張ってしまったら、俺との差が縮まらないのでは?」という疑問が湧いてはくるが、今の夏彦にとっては些細な問題である。

 何故なら、自分がもっと頑張れば済む話だから。


 真正面から抱き着かれてしまえば、小柄な彼女の頭が丁度良いポジションにあることに夏彦は気付く。

 撫でる以外に選択肢はない。

 頭頂部、艶やかでサラサラな髪を上から下、上から下へと、丁寧に何度も撫で続ける。

 撫でれば撫でるほど、


「えへへ……♪」


 未仔の気持ち良さげな声音が聞こえてくる。

 夏彦は、どうしようもなく自分から抱きしめたい衝動に駆られてしまう。

 けれど、自分から抱き着くのは、相応しい男になったとき。

 グッ、と己の気持ちを我慢し、未仔の頭を撫でることだけに留める。





------------------------------

なろう&カクヨム、Twitterでいただいたメッセージを読んでいるとと、受験シーズンの子がチラホラと。

「おっぱい読んでる暇あったら、勉強しろ」と言いたいところですが、やっぱり息抜きは必要。

糖分はコッチで用意するから、ラストスパート頑張れい。




-ヘルプミー-   ↓↓↓↓↓以下のお助け事は、皆さんの協力で達成しました!

ちょいと、おっぱいフレンズに協力してほしいことが1点。

19~23話のタイトル、『未仔ちゃんとの甘々スクールライフ』が、ちょっと納得いかないので新しいタイトル案募集します。

今のタイトルは、シーン別のタイトルというより、章全体のタイトルっぽいので。


自分で新しいタイトルを考え直すのもいいけど、せっかくの機会やし、皆で考えるのも楽しそうだなと。

というわけで、気軽に感想欄やらTwitterやらで、「我のタイトルこそ至高」という案をいただければ幸い。

若者は勿論、玄人おっぱいニストの社会人さんにも知恵を貸していただきたい。


期限は1/15(水)の夜おっぱ――、いっぱいまでで、おなしゃす。


「コイツら、どうしようもねぇエロタイトルしか考えてねぇな」ってなると、自分で考え直します。誰も考えてくれなかったら、泣きながら新しいの考え直します。

真面目に不真面目、解決ゾロリ的なタイトル求む。

よろしこ。


「我もおっぱいフレンズ!」という同志は、ブックマーク&評価の程よろしくどーぞ。ʅ(◔౪◔ ) ʃ

------------------------------

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る