14話:彼女との帰り道 PART2

 依然、仲睦なかむつまじく帰っていると、未仔が尋ねてくる。


「ナツ君って、お昼休みは、いつもお弁当?」

「昼休み? えっと、基本は弁当かな。たまに食堂とか売店も利用してるけど」

「あ、あのねっ」

「?」

「明日のお弁当、私が作っちゃダメかな?」

「えっ」


 夏彦は思いもよらぬ発言に立ち止まってしまう。リア充率120%超えなイベント到来にフリーズしてしまう。


「……ダメ?」

「………。!!! いやいやいや! ダメなわけないないない! むしろ大歓迎だよ!」


 断る道理などあるわけがない。今すぐにでも、『明日は弁当要りません』と母親にメッセージを送信したいくらいだ。


「というかさ。わざわざ作ってもらっていいの?」

「うんっ♪ 作らせてもらえたら嬉しいな」


 作ってもらえるのは夏彦のはずなのに、作る未仔側の方が嬉しそうに見えてしまう。それくらいの天真爛漫スマイル。

 現代に生きるナイチンゲール、ここにありけり。


 もし、夏彦にイケメン特有のスマートさが搭載されているのなら、サイヤ人の王子よろしくに、ビッ、と二本指を突き立てる程度の感謝で済ませただろう。

 地球育ちの夏彦にプライドなどない。


「お言葉に甘えて、よろしくお願いします!」


 明日の弁当、オラわくわくすっぞ状態。

 だがそれでいい。素直こそ夏彦の良い所なのだから。


「ナツ君は、苦手なモノや食べれないモノってある?」

「大丈夫大丈夫。未仔ちゃんが作ってくれる弁当なら、何でも美味しく食べれちゃうよ。仮にアレルギー持ちでもイケるさ!」


「アレルギーのある食べ物は食べちゃダメだよ……?」と未仔は心配そうに夏彦を見つめるが、当の本人は何を出されても全てたいらげる気満々。ブラックコーヒーの同じてつを踏む気満々。


 程なく歩いていると、夏彦へと寄り添っていた未仔が離れてしまう。

 横断歩道の向かい側に、スーパーが見えたから。


「それじゃあ、明日のお弁当の食材買って帰るね」

「あ。それなら俺も付いていくよ。荷物持ちするし」


「ちゃんとお代も払いたいしさ」と夏彦は同行しようとするが、未仔に首を振られてしまう。


「気にしないで大丈夫だよ。それにね? ナツ君来ちゃったら、どんなメニュー作るか食材で分かっちゃうから」


 弁当箱を開けるまではネタバレ禁止。あくまで夏彦基準に世界が回っている未仔らしい言葉である。

 となれば夏彦は、幸せを噛みしめつつ、見送ることしかできない。


「分かった。それじゃあ、今日はここでお別れだね」

「うんっ」


 暗くなった空でも、ハッキリと分かる未仔の笑顔に、夏彦は改めて可愛い子だなと思えてしまう。

 同時に、「こんな可愛い子が自分の彼女になったんだ」と再認識してしまう。

 さすれば、感謝もしてしまう。


「未仔ちゃん、改めてよろしくね」


 一瞬こそ未仔は大きな瞳を見開くが、直ぐに、夏彦に負けじと深々と頭を下げる。


「こちらこそ、不束者ふつつかものですが、よろしくお願いします」


 まるでプロポーズをした側とされた側。

 慎ましいやりとりではあったが、顔を上げた未仔は、「えへへ……♪」と嬉しさを全面に押し出した満面スマイルのまま。


 そして、


「あのね。ナツ君がカフェで言ってくれた言葉、すっごく嬉しかったの」

 今度は夏彦が目を見開いてしまう。

「カフェで? ……ああ」


『未仔ちゃんを傷つけるようなことはしたくない』

 未仔が言っているのは、この言葉に違いない。


「やっぱり、ナツ君は、私が大好きなナツ君だなって」

「ははは……。真っ直ぐに褒められると照れちゃうな……」


 大好きの言葉を聞き慣れていない夏彦は、照れることしかできない。

 そんな夏彦に、離れていたはずの未仔がまたしても擦り寄って来る。


 そして、背伸びしつつ、夏彦の耳元で囁くのだ。


「けどね、ナツ君」

「?」



「ナツ君になら、何をされても私は受け入れられるよ?」

「っ!!! み、みみみみみ未仔ちゃん!?」



 鼓膜から脳へと入り込む甘美な言葉に、夏彦、熱暴走待ったなし。

 勿論、未仔も何をされてもの意味を理解して発言している。

 理解しての発言だからこそ、未仔自身も顔を赤らめている。


「ナツ君っ、また明日学校でね! ばいばい!」

「ば、ばばばば、ばいばい、ばいばいばい…………」


 スーパー目指して駆けて行く未仔に、半ば無意識に手を振り続ける夏彦。

 未仔が見えなってから、夏彦は呟く。


「俺の彼女可愛すぎだろ……」






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あけおめことよろ。

そして、今日は早く投稿すると言っておいて、いつもと変わらず申し訳ない……!


明日からは夏彦×妹をお届けします。お楽しみに^^


まだまだ未仔ちゃんや関西女の話を読みたい、という方はブックマーク&評価の程、よろしくどうぞ!

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