10話:未仔ちゃんは、健気で甘可愛い PART3
余程、下の名前で呼んでもらえたことが嬉しかったのか。
「えへへ……♪」
未仔は、はにかみつつも嬉しそうに頬を緩ませ続ける。
愛くるしい表情を目の当たりにしてしまえば、夏彦も自然と微笑ましい気持ちで満たされてしまう。
初めて遊んだときもそうだった。借りてきた猫のようにしていた彼女だが、時間の経過とともに我が妹のように懐いてくれた。『お兄さん』から『ナツ君』と呼び方が変わった瞬間を、夏彦は今でもハッキリ覚えている。
当時を懐かしめば懐かしむほど、心に余裕が生まれてくる。
さすれば、自分の喉がカラカラなことにようやく気付く。無理もない。あれだけ全力疾走したり、おっぱいおっぱい連呼していたのだから。
夏彦は水分補給すべく、自分の注文したアイスコーヒーをストローも差さずにワイルド飲み。
そして、一言。
「うおぉぉぉ……。苦ぁ~~~……」
気が緩んだ夏彦の口から出る、ムードもへったくれもないコメント。
それもそのはず。夏彦はブラックコーヒーなど飲んだことがない。なんなら、微糖の缶コーヒーだって苦手で飲めないレベルだ。
コーヒー=大人の飲み物=カッコイイ
というクソダサい思想のもと、自分に告白してくれた女子の前で、1ミリでもカッコ良く思われたいという欲が生み出した大失態。
男子高校生あるある。気になる女子の前でいいカッコしがち。
そして、失敗しがち。
「もしかして、コーヒー苦手?」
未仔に尋ねられてしまえば、もはや隠す必要もない。
「う、うん……。ちょっといいカッコしようとして頼んだんだけど、俺にはまだ早かったみたい。ははは……」
乾いた笑いしか出せないのに、不思議と涙は出そうになる。生涯哀れみの刑に処せられてしまう。
100年の恋はこの程度では冷めないのかもしれない。けれど、5年くらいの恋ならば冷めてもおかしくない。
未仔はどうだろうか?
コイツ、ダサすぎワロタ。
ということはなく、
「ちょっと待っててね」
「?」
立ち上がった未仔は、小走りでカウンターへと移動する。そして、備え付けで用意されているミルクやハチミツ、マドラーなどをせっせと回収して戻って来る。
どうやら、夏彦のためにコーヒーを甘くしてあげたいようだ。
持ってくるだけでは留まらず、「私が混ぜるね」とアイスコーヒーを手繰り寄せると、夏彦のために混ぜ混ぜご奉仕タイムに突入。
「ご、ごめんね! わざわざ!」
「ううん。私がナツ君のために、してあげたいだけだから。ね?」
「っ! ……じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん♪」
未仔の笑みに当てられた夏彦は、「なんて健気で献身的な子なのだろう」と心打たれてしまう。おまけに、未だにナツ君と呼んでくれることにも心打たれてしまう。
幸せ気分で夏彦が待つこと少し。最後に未仔は、自分の注文したチョコレートラテに乗ったクリームをコーヒーへとトッピングして完成。
「ナツ君、これでどう?」
「うん。ありがたく飲ませていただきます」
未仔からコーヒーを受け取った夏彦は、今一度コーヒーを飲んでみる。
「おお……!」
余りの味の変化具合にビックリするレベル。
「全然飲める! というか美味い!」
「ほんと?」
「ほんとほんと! ハチミツとクリームがしっかり甘さ出してるし、苦みは残ってるんだけど、むしろ丁度いいくらい!」
「喜んでもらえて良かった♪」
そんな未仔の笑顔を見てしまえば、夏彦は「美味しい」という感想より「可愛い」という感想のほうが強く出てきてしまう。
故に、未だに夢見心地だ。こんな可愛くて献身的な子が、自分を好きだと言ってくれていることが。
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更新お待たせして申し訳ないです!
年末のゴタゴタで執筆が遅れちゃいました^^;
時間はバラつくとはいえ、しばらくは1日1話は最低でも更新するのでよろしくどうぞ!
12/28(土)にて、カクヨム&なろうで週間ランキング1位になりました!
同時にランクインはビックリ。
読者の皆さん、本当にありがとうございます。
楽しんでいただけるよう、今後も精進していきますので、よろしくどうぞ!
おっぱい好きの盟友は、ブックマーク&評価お願いします。 ʅ(◔౪◔ ) ʃ
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