第34話 渡辺と土下座のプロ
教室へ戻る道で、小林をどうやって更生すればいいのかを考える渡辺達。あんなナルシストをナルシストじゃ失くすことなどできるのであろうか? 人間として軽く終わっている。シカゴ見てたし。
しかも、渡辺にビンタを食らわすほどに強いと言う事実。
渡辺は小林と言う男への怒りをワナワナと燃やしていた。ワルに置いては王道だろうが邪道だろうが、自分より先に歩むモノが居てはいけない。これが渡辺の持論だ。渡辺を倒すのは渡辺だけなのだ。「渡辺が小林みたいな事言ってるぜ!」と竜二に言われる。
で、これと言ってアイデアが浮かばないまま、みかん組に辿り着いてしまった。
蓬田がドアに手をかけると、中から「渡辺さん達に何て言うんだよ!」という怯えた園児達の声がした。
?
ドアを開けると、中の園児達は一斉に「ひぃ!」と心臓を口から飛び出させた。
「何かあったのか?」
部屋の机と椅子が荒さ、後ろの方で気を失っている園児が数人いた。
「どうしたんだよ、これ!」
「す、すいません!」
小林の見張りをしていた斉藤が、渡辺達に土下座をした。
「早い!」
渡辺は、斎藤の土下座へのスピードに素直に感心した。三下はこう出なくっちゃ!
「小林を逃がしました……」
えっ!
「何やってるんだよ! てめぇら! ちゃんと見張っておけって言ったぜ!」
竜二がここぞとばかりに、手下達を怒鳴り散らした。部下のミスと言えば、器の小さい奴の腕の見せ所だ。
「何処に言ったか、解らなきゃお手上げだぜ! すぐに探して来いだぜ!」
全てを言い終えた竜二は「ふぅ、威張って気持ち良かった」と満足げな顔で渡辺の方に戻って来た。その清々しいまでのクズっぷりに渡辺は称賛の拍手を竜二に送った。
「逃げたっていうか、家に帰ったんだろ」
蓬田は道中の小林の言葉を覚えていた。
「今から追いかければ間に合うかもしれないぞ」
蓬田の声に渡辺も頷いた。
渡辺、そして、蓬田、竜二、家長の幹部三人は、小林を追うべく、ダッシュで幼稚園を飛び出した。うおおおおおお! 髭男から聞いた小林の自宅へ急げ!
夕方で涼しくなって来たからか、家長も一〇〇メートルくらいまで来て「ウンコがしたい」と言って幼稚園へと戻って行った。
渡辺は「お尻に手は届くのかな?」と腹が出ている家長の事が心配になったという。そして、頭の中でお尻を拭こうとすると前に転がって、そのままゴロゴロ転がっていく家長のオモチャを思い浮かべた。300円でも要らないなと渡辺は思った。
マッドセガール市でも古い家屋とアパートしかない下町。
表の大通りから二回奥に入り、物差し一本分ぐらいしかない道幅の路地を歩いて行くと、小林の住んでいる築五十年くらいの木造アパートはあった。土台のコンクリートには池田貴族の顔の様な大きなヒビが入っている。
「ここだな」
渡辺は「あんま入りたくないなぁ」と言いながら、頷いた。なんかボロくて臭そうだなぁ。
「よし、行くぜ!」
何故か竜二が先頭を切った。
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