リターン・マイホーム 5
早朝。
グレンとコクは、朝早くに出立することになった。
見送りにログハウスを出てくれたジュナたちの前で、
「ここでジュピターの特訓をして、ある程度、仕上げてから
ジュナが一歩、進み出て言った。
彼女の目は赤みがあり、
「ジュナちゃん、また
コクがキザにウインクしてみせる。表情に困惑を浮かべるジュナを見て、グレンは警告代わりに彼へ体当たりした。
「いてー! 過保護かよ!」
コクは、わざとらしくよろけ、大きく身振り手振りをしてみせる。
「うっせぇ、早く準備しとけ」
グレンは片眉を上げ、しっ、しっ、とコクを追い出す。そのやり取りを見て、ジュナが面白そうに笑った。良かった、いつもの彼女だ。
グレンは安堵してジュナと向き合った。
「グレード・ワンは、プシティア国全土でテレビ放送される。それに、勝てば多額の賞金がもらえる。生産した竜牧場だって、もらえるんだ。レイセルダさんとメッシオさんは楽になると思う」
グレンの言葉を受けて、ジュナは、ぐっと唇を噛んだ。涙が零れまいとするように。
これ以上、言葉を重ねたら、彼女を泣かせてしまうかもしれない。それでも、今、伝えておかないと、彼女は自分を責め続けるだろうから。
グレンは、自分が持ちうる、ありったけの優しさを表情に込めた。
「ジュピターと出会って、俺は救われた。おまえが、父親に頼んで繋いだ命で救ってくれたんだ。ありがとう、ジュナ」
彼女の瞳に涙が溜まっていく。グレンは昨夜のように頭を撫でて、不敵に口角をつり上げて見せてから、
グレンは決めていた。
必ず、ジュピターを勝たせてみせる。そのためなら、なりふり構わずにやる。泥水だって
自分を救ってくれた彼女のため、それくらい必死になったって、いいと思うのだ。
かつて黄金色の竜が舞っていた、朝日に照らされる広大な空の下。
悲壮な決意を乗せた
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