第51話 スス神様に感謝

私とススは三人の家に帰る。


「結局、茶葉は見つかりませんでしたね」


「厄介なモノは見つかりましたケドネ」


「……それを言われたら何も言い返せませんよ」


「……大丈夫と思いたいデスガネ。まあ、今日はのんびりすると良いデショウ。掃除でもしていてクダサイ」


「?ススは何か予定があるのですか?」


「食材が足りなくなって来たカラ、ナグナ王国へ買い出しに行こうかと思ってイマス」


「買い出しですか!私も行きたいです」


「ヘ?何故ニミが行くのデスカ?」


「ダランゼラへ行くためにです」


「ダランゼラ?」


「いえ、ちょっとナグナ王国に行ってみたい場所があるのです!そう、ゲームですよ!」


「ゲーム??」


「ナグナ王国の地下には一瞬にしてお金を倍増出来る地下娯楽施設があるって聞きましたからね!ちょっとそこを見てみたいと、それで数日間滞在するお金をススさん、くださいです」


「……何やら言葉がおかしい気がシマスガ、つまりナグナ王国に何らかの用事で滞在したいト?」


「はい!その通りです」


「それは先程のあの男とは関係ないのデスネ」


「勿論!全く全然皆無的に関係ありませんよ!」


「そうデスカ。不安はありますが、ニミの決めた事に私がとやかく言う必要はありませんからネ。良いデショウ。ロホアナ様には私から言っておきマス」


 ススはあっさりと了承してくれた。

 いつもなら、ファーゼである私を自由になんてさせないと怒るのに。

 何だろう、迷いの森の騒動、イラルの村の騒動を経て、何か変わったのだろうか?私が変わったのか、ススが変わったのか。


「デスガ、私はニミと一緒に行動するワケにはイキマセン。行くのなら別行動デス」


「分かりました」


「さて、ならはさっさと準備してきてクダサイ。泊まるのならば、着替えは用意しておきマス。飲食代、宿泊代は、イラルの村での活動報酬という事にしておきまショウ」


「おお、ありがたやありがたや。スス神様ぁ。本当に超感謝です」


「全く、ニミは調子が良いのデスカラ……」


 私は急いで自分の部屋に戻り、身支度を整える。

 荷物はイラルの村へ行った時と同じでいいかな。

 後は、護身用のナイフと……


「ダランゼラ……か」


 あのデッヒ?という男。

 私がナイフで攻撃する事を分かっていたのような態度だった。

 それに、私の正体についても知っているみたいだった。

 ファーゼの存在をも認知していて、ロホアナ、スス。私が三人の家で生活している事を知っている人物。

 私たちは誰にもバレぬように三人の家で生活しているつもりだったが、気付かれていたのだろうか?


「レク……」


 イラルの村のレクですら、私の正体、三人の家の存在に気づいていそうだった。


「後は、ヨゴツアバル様……か」


 ヨゴツアバルが誰かに情報を与えた?

 迷いの森の魔獣の王様である彼が、そんな事するだろうか?もしくは、誰かに脅された……それも考えにくい。


 そもそも私たちの行動が原因で、居場所がバレた可能性が高い。


「ナグナ王国……ですかねぇ……」


 ロホアナが信頼していたナグナ王国の研究会。研究会とナグナ王国の王族が繋がっていて、ナグナ王国の王族と、ロホアナのマーイヤナ王国が繋がっているという可能性も考えれる。


 いずれにせよ、あちら側が私一人で来るように指定した以上、私が行く必要がある。ロホアナやススに余計な心配をかけたくない。

 イラルの村と同じく、第二の試練だ。


「私一人で、何とかしないと!」


 ロホアナやススに頼らず、この問題を解決してやるんだ。

 三人の家での平穏な生活を続ける為に。


 ーーー三人の家での平穏な生活を守る為に!


 ***


「ナグナ王国に行くんだって?」


「ろ、ロホアナ様っ!?」


 私が部屋でごそごそしていると、ロホアナが急に中へ入ってくる。


「そんなに驚くことかなぁ。思春期の子供じゃあるまいし」


「子供じゃ無いです!あ、すいません。ちょっと驚いてしまいました」


「ちょっとには見えなかったけど、まあ良いや。ニミ、ナグナ王国に行くんだって?」


「はい」


「迷いの森でまた厄介ごとに巻き込まれたそうじゃないか」


「はい、巻き込まれました」


「あっさり肯定するんだね……まあ、これは私の予想だけど、ススには地下施設でお金を稼ぐと言ってたらしいけど、本当は迷いの森の厄介事が関係してるんだろ?」


「どうして分かったんですか?」


「これまたあっさり肯定するね……でも、そんな良い意味でも悪い意味でも素直な所がニミの魅力だよ」


 私の魅力……か。


「ニミが動くほどの事だ。ニミの過去、ファーゼの事か、三人の家での生活を揺がす事態なんだろうね」


 どちらも大当たりです。


「私からは一つ。ニミが私達の為に無理をする必要は無いんだ。ニミは……うん、言い方が悪いけど、私が変えちゃったようなものだからね。ニミ自身の運命、根本的な部分を私が変えてしまった。そこは今でも悩んでいる所なんだ。実際ね」


「ロホアナ様……」


「ススは、ちょっと特殊だけど、ニミは一応普通じゃ無いけど、健気な普通の女の子になれたんだ。私やススにはできない事を、ニミは出来る……」


「私はロホアナ様やススが大好きです。本当に感謝しているんです。ロホアナ様や、ススが私の事を疑おうとどう思おうと関係ない。三人の家での生活を守りたい。それが私の本心です。その為なら私は戦います。命をかけて」


「そうか……そうだったね。私は……だけど、一つだけ」


「……?」


「無茶はしないで。ニミに何かあったら、私も……ススも悲しむ。あの時だって……」


「わかっていますよ、ロホアナ様。安心して下さい!そう簡単には死にませんよ!」


「あははっ。頼もしいけど心配なんだよなぁ。ニミは」


「大丈夫ですって!安心して下さい!」


「……それだけだよ、気をつけてね」


「はい!」


 私は元気よくロホアナに返事をした。


 荷物を持ち、私は三人の家を出る。



 いざ、ナグナ王国へ!!

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