第42話 出口へ!そして…
ススとヒミ(気絶中)の二人はペピュックについていき、外に出る為の階段を、登っていた。
《ほら、お前たちがずっと待ち望んでいた念願の出口だぜ》
「……」
「別に望んでなんか無い」そう一言ペピュックに言い返そうと思ったが、言わなかった。いや、言えなかった。
でもいい。これ以上何か言ったところで、自分の中にある何かが出てしまうだけだからだ。
「随分長い階段デスネ。まさかまた私を変な所へ連れて行くつもりデハ?」
《んな訳ねぇだろうが。お前は人を信用するって事ができねぇのか?》
「信用……ネェ」
《何だよその目は。ったく。ムカつく女だぜ。人が親切にせっかく教えてやってんのによ》
「ここまで来れば私とヒミだけでも充分デス。さようならペピュックサン」
ススはそそくさとペピュックを置いて、階段を上がって行く。
《ちょ、おいおい!おーーい!ちょい待てよ!!》
「はぁ……今度は何デスカペピュックさん」
《いや、なんですかじゃなくてさ!今どう考えても置いてく流れじゃねぇだろ!》
「じゃあどうしろト?素直に付いて来たいって言えばいいじゃ無いデスカ」
《でも案内したのは俺だし……。大体俺がなんでついて行く事になってるんだよ!》
「ペピュックさんは今から光の種族の村を襲撃するのデハ?」
《それは後回しだ。ほら、お前らをマーイヤナ王国へ連れてくって約束しただろ?》
「そういえばそうでしたネ」
《ったく。ならとっとと行くぞ!》
ススたちは再び階段を登って行く。
しばらくすると、前方に扉らしきものが見えてくる。
「あれが出口デスカ?」
《ああ。俺たちは情報屋から入手した情報で、あそこから入って来たんだ。さあ、行くぞ》
***
ペピュックが扉を開ける。
ゴゴゴゴと太い金属音が辺りに響き渡る。
眩い光が視界に差し込んでくる。
ススは思わず、右手で光を遮ってしまう。随分と長い間、暗闇の中にいた為だろうか、かなり眩しく感じた。
《ほら、念願の外の世界だぜ》
ススは一歩ずつ前へ足を進める。
「うーん……」
ヒミが小さく呟く。そろそろ目が覚めただろうか?
だが、ヒミよりもまず先にススは外の世界に関心がいった。
見たい、早くみたい。早く、早く。
そして、ついにーーー!!
***
「……森じゃ無いデスカ」
《そりゃそうだ。そもそもこの地下洞窟は、光の種族の村に何がが起きた場合に使用する場所だからな。村から離れた場所に作るのは当然だろ》
「これじゃ、学校の裏森と変わりマセン」
《何に期待したかは、知らんが、お前の住んでいる村も、外の世界も対して変わらないとは思うがな》
それより……とペピュック。
《そっちのガキは大丈夫なのか?》
「ガキとは失礼ナ」
《いやいや俺からしたお前らはクソガキだよ》
「光の種族が何年生きるかしってるんデスカ?」
《じゃあ、お前は竜の種族が何年生きるのか知ってるのか?竜だぞ!竜!古来より崇められて来た神聖なる竜だぞ!》
「誰も竜の事なんて聞いてないし、興味も無いデスヨ」
《実の所、俺も何年生きれるのか知らないんだよな、これが》
「意味無いじゃないデスカ!それじゃ!」
《と、茶番は置いといて、そのガキ……いや、お嬢さんは大丈夫なのか?》
「おーい、ヒミー!外に出まシタヨーー!」
ペジペシペシペジペシペシ
《おいおい、そんなに叩かなくてもいいんじゃ……》
「大丈夫デスヨ?ネ?ヒミ?」
「うーん……一体何が……」
「おや、ようやく目を覚ましたようデスネ」
《そりゃあんだけ叩いたら目を覚ますだろうよ》
「もう!本当にペピュックさんは皮肉屋デスネ」
《へへっ。褒めてくれてありがとよ》
「褒めて無いデス!」
「うん……竜?」
ヒミがふにゃふにゃとした声で、眠たそうに呟く。
「ヒミさん、この方がツッコミ竜人のペピュックさんデス。私達を助けてくれマシタ」
《誰がツッコミ竜人だっつーのっ!》
「竜人さんかぁ……わぁ……凄い……」
ふわぁぁぁぁぁぁと大きな欠伸をするとヒミはふと、我に帰ったように、
「はっ!?ここは!?わたしは一体何を……!?」
「ヒミさん途中で気絶したんデスヨ。ショッキングな光景を見てしまったのデス。怖い怖い」
《竜人が肉塊と化す瞬間を……ぐはっ!?》
余計な事を言うペピュックを拳で黙らせると、ススは詳しい状況をヒミに説明した。
「そっか……地下洞窟は出れたんだ……良かった……」
「今はこの怪しい竜人ことペピュックさんに近くの王国まで連れて行って貰っているところデス」
《な、殴る事ねぇだろ!痛え!今めっちゃ痛かったぜ!?》
「あ、初めまして。ヒミです。よろしく」
《ああ、これはどうも丁寧に。良かった光の種族にもまともな奴がいるんだな》
「当たり前デス。ん?その言い方だと私がまともじゃないみたいな感じじゃ無いデスカ」
《まともな人は鉄拳制裁なんかしねぇつーの!ったく。まあいーや。とっとと行くぞ》
「「おー!」」
《……》
***
ペピュックから聞いた話によると、マーイヤナ王国は光の種族の村から少し離れた場所にあり、この森を超える必要があるという。
ペピュックは情報屋から光の種族の村への侵入経路として、この森の地下洞窟を教えて貰った。その前は、他の竜の盗賊団のメンバーらと、マーイヤナ王国の宿に泊まっていたらしい。
マーイヤナ王国は、この辺りではかなり発展した王国で、産業も発達しており、多くの人々が暮らしているという。
一見すると、普通に見えるマーイヤナ王国であるが、少し問題があると、ペピュックは話す。
マーイヤナ王国は、これまでずっと、王を世襲で選ぶのでは無く、国民によって、「選挙」で選んで来た。
この理由は、マーイヤナ王国の歴史にある。マーイヤナ王国は、長らく軍事王国として、王による完全な独裁による歴史を辿って来た。
王家が王が死ぬまで世襲を行い、実質的にマーイヤナ王国を支配したのはその王家だった。
王家は軍国主義で、戦争ばかり行い、国民は次第に疲弊し、不満は募るばかりだった。
だが、ある日の事だった。
マーイヤナ王国の騎士団の革新派が、反乱を起こしたのだ。宮殿を占領し、王族を包囲し、倒してしまったのだ。
結果、王族は革新派の兵士により、全員処刑され、革新派のリーダーは、王は正当な選挙によって、国民が選ぶべきだと主張した。
その結果が、現在の選挙によって、王を選ぶマーイヤナ王国の姿なのだ。
しかし、現在は少し違うようだ。
結果として、革新派のリーダーが、王となり、国を治めて行くのだが、彼は平和には無頓着。血みどろの戦い、争い、戦争への関心は捨てていなかった。
一見すると、平和主義をとりながらも、裏では軍事研究を着々と進めていた。
国民はそれを知らない。
国民は平和な生活を求めているのに関わらず、だ。
マーイヤナ王国の研究者は非常に優秀だった。王族政権時代から、マーイヤナ王国の軍事を支えていた彼らの中には、「平和の為の研究」を行うべきという声も大きかったのだ。
これでは、王族政権時代から変わらないじゃ無いか。そう、結局は何も変わらなかったのだ。
だが、これまたある日の事だった。
マーイヤナ王国を揺るがす、ある事件が発生した。
それは、ススたちが光の種族の村から抜け出し、ペピュックと出会い、マーイヤナ王国へ辿り着いてから、数日後の事だった。
物語は、既に動き始めていたのだ。
全ては、夢物語。
何もかもが、その果てへ向けての確定事項なのだから。
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