第40話 初めまして、ペピュックさん

「……」


竜人たちが使っていた部屋を調べたが、あまり有益なものは見つからなかった。

だが、興味深いものもある。

ススの魔法によって、この部屋はほぼ壊滅状態なのだが、奴らが使っていた地図のようなものが見つかった。

若干薄汚れているが、識別は何とか出来そうだった。

この辺りのやつなのだろう、使えそうなので、貰っておいた。


それよりもススは今真っ赤に染まってしまっている。こんな状態じゃ目立ちまくりだ。

何とかしないと。ススはフミおばさんから、背負えるタイプの鞄を貰っている。鞄の中には日用品なとが入っているが、確か代えの服があったはず。

……誰も見ていないデスヨネ?


ススは気絶しているヒミを床に下ろすと、竜人たちが使っていた部屋でこっそり着替える事にする。


……こんな所見られタラ……

そんな事を考えていた時だった。


ドゴォォォン!!!


「っ!??」


唐突に部屋の壁が破壊されてしまう。

ススはヒミを守るように地面に伏せる。


一体何が……!?


「ハァ……まだ着替えている途中何デスガネ……」


《ガハハハハハ!!おいおい、何だよ、こいつらの無様な姿は!げへへへ!!》


薄汚い笑い声が部屋に響き渡る。

声の主は、先程と同じく屈強な姿をした竜人だった。

確かペピュックとかいう名前だっただろうか。


《おい、ちびっ子。お前が倒したのか?げへへへ!》


「な、誰がちびっ子デスカ!許せまセン!」


初めは穏便に話し合いで済ませようと思ったが、今の言葉はカチンときた。

ぶちのめすしかない。


《ちょ、おいおい。別に戦いたい訳じゃねぇよ。落ち着けって。なぁ?》


「……怒らないんデスカ?」


《あ?》


「アナタの仲間を殺した事デス」


《けけけっ!別に何とも思っちゃいねぇよ!確かに仲間だが、あくまでビジネス仲間ってやつだ。お互いの事を信頼なんてしてねぇ。殺される方が悪いんだ》


「フフッ。アナタのその考えは嫌いじゃないデス」


《それに、あいつらは俺のことを裏切りものだって、疑ってたんだよ。俺は竜の盗賊団にも飽き飽きしてたんだ。俺はもっと暴れてたいんだよ!だから、最近知ったのが、暗殺傭兵組織ファーゼってヤツだ》


「ファーゼ?聞いたことありませんネ」


《闇の暗殺組織だ。これがかなりヤバイらしくてなぁ。今入る方法を探してるんだ。ワクワクすっぜ》


「それで……アナタの意向は分かりましタガ、私たちをどうするつもりデスカ?殺す?」


《ケケケ、そんなつまらねぇことはしねぇよ。ようは俺とお前らの利害は一致してるんだ》


「一致……?」


《そう、お前らはここいらの地形について全く知らないだろ?だが、俺は詳しい。ここから出た後に、手助けしてやる事は出来る。俺はお前に興味を持っているし、話したい事もある。ほら、お互いに損はねぇだろ?》


迷ったが、何故かススはこの男、ペピュックを疑う事が出来なかった。信頼出来る気がした。


「分かりマシタ。アナタについて行く事にシマス」


《ケケケっ。そうか大抵のヤツは俺のこの話し方がキモいとか外見とかで受け入れず、信用してくれないが、やはりお前は違うみてぇだな。ケケケ》


「話し方もキモいし、外見もキモいデスガ、今はアナタしか頼れるのがいないノデネ、仕方なくデス」


《……ガキの見た目のくせに、結構口悪いなぁ》


「そのセリフ結構言われるんですが、そんなに口悪いデスカ?」


きょとんとした顔で、ススが聞いてくる。


《いや、何でもねぇ。辞めとく。その背負ってるガキは大丈夫なのか?ぐったりしてるが》


「ああ、これはワタシがやったので、全然大丈夫デスヨ。安心してクダサイ」


《え?お前がやったの?仲間なのに?》


「はい。何か問題デモ?」


《……いや、やめとく。ややこしくなりそうだからな》


「その方がいいと思いマス」


ーーー 一体何者なんだ、このガキは。


《とにかく、この近くにはな。マーイヤナ王国って王国があるんだ。ここいらじゃ結構大きいとこだ。そこに行こうぜ》


「分かりましたガ、ペピュックサン」


《へ?何だ?》


「今から着替えるので出て行ってクダサイ。ワタシの着替えシーンが見たいのデスカ?それなら別に……」


《いや!結構です!すいません!!》


ペピュックはそそくさと部屋を出て行く。


《はぁ……はぁ……どうしてこんなに気を使わないといけないんだ……》


やれやれ……ペピュックは、もしかしたら、凄い厄介なヤツを味方にしたのでは?と、遅すぎる若干の後悔をしたのだった。

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