第39話 本能的と潜在的
《その通り。竜の盗賊団は、金持ち貴族や、王国をも相手にする巨大な組織なんだ。俺たちは竜の盗賊団、第四部隊。ある任務を受けてここにやって来たわけさ》
「長々と語ってくれましたガ、要約すれば竜なんちゃらは、犯罪者集団デ、アナタ達はその一員デ、犯罪行為をワタシ達の住んでいる村の下で密かにやっていた最低のクズ野郎って事デスネ」
《いや、見た目の割にめっちゃ口悪いな!まあ、当たってるっちゃ当たってるんだけどよ!》
ススは部屋を調べてみる。
うーん、普通に最低限生活出来そうなものが置いてあるだけで、目に入るものは……
《ともかく、見られたからには生きて帰す訳にはいかねぇな》
《ぐへへへ、獣人も中々旨そうじゃねっか》
「竜人は人間を食べるんデスネ、気持ち悪いデス」
《そりゃそうよ!てめぇら光の種族は村の中に籠もって、ぬくぬく暮らしてるんだろうが、その価値観が当たり前だと思っちゃいけねぇよ。他種族の嗜好を認め合うのが平和への第一歩……》
「気持ち悪いデス」
《いや、人の話聞いてた!?ああ、クソっ!調子が狂う!腹立つぜコイツ!》
《落ち着け、俺に任せとけ》
選手交代のようだ。
《あはは、お嬢さんはどうしてここにいるのかなぁ?ここは入っちゃ行けない場所だよなぁ?》
「犯罪者に話す義理はアリマセン」
《グッ……!へへ、なら俺が当ててやろう。そうだな、大方閉鎖された村での生活に嫌気が差したって感じだろ?分かるゼェ、俺も昔はそうだった。世界を知らなかったからな》
「なぜ当てれるンデスカ?」
《あ、正解なのね。とにかくだ!ここで見られたからには生かしておけねぇ!作戦の妨害となる者は排除させて貰うゼェ……グへへッ!》
「私を食べても、フミおばさんの作ったシチューの味しかしないと思いマスヨ。お野菜の味」
《うるせぇよ!不味くさせるような事言うな!俺は野菜が嫌いなんだよ!》
そうだ、気になるものがあったんだ。
「….…アノ、竜のなんちゃらさん?」
《竜の盗賊団だっての!何だよ?》
「あれは、なんデスカ?」
《へ?あれは、だな……》
ススが指差す先にあったのは……
***
ドォォォォォォォォン!!!
「っ!?」
強烈な爆発音がした。
しかも下から!
まさか、ススに何かあったのか!?
考えるより先に体が反応していた。
開けた穴から更に下へ降り、煙が上がっている方へ進む。
しばらくして、部屋が見えて来た。ヒミの目に映ったのは……
「スス……ちゃん」
「ああ、ヒミさん。待っていてと言ったノニ……」
血に塗れたケモミミ少女の姿がそこにはあった。煙の中から現れた少女の下には「何か」が転がっていた。
あたり一面が血に塗れている。壁にもまるでペンキを塗ったかのように、赤色に染まっている。
可愛らしい顔も、フミおばさんに貰ったと喜んで語ってくれた服も、血だらけだった。
「スス……何が……」
「 ……ちょっと、やり過ぎてしまった様デス。まだ他に方法があったかも知れませんガ……」
「ヒミさん、スイマセン」
「えっ?」
ススから現れた小さな泡はふわふわと飛び、ヒミの顔の前でパーンと割れる。
ヒミも動揺していたのか、避ける事は出来なかったようだ。
そのまま倒れ込む所を、ススが受け止める。相手を気絶させる軽度の攻撃魔法だ。
この光景は、ヒミに見せられるものでは無かった。
ヒミが話していたラクやムナは、この洞窟から出る事は出来なかった。
どの進路を選択したのかは分からないが、彼らはその道中で、竜の盗賊団のメンバーと遭遇し、そして殺された。
正確に言えば、捕らえられてから、捕食されたのか、その場で殺されたのかは、正直分からないが、いずれにしても、地下に潜んでいた竜の盗賊団によって、彼らは殺されてしまったのだ。
勿論、真相を知っているのはススだけだ。村の掟を破った二人を、村の住民は探すはずが無いからだ。
ススは竜人が言葉を発した瞬間に、強烈な光魔法を放ってしまった。
一瞬にして、彼らを葬り、肉塊にしてしまった。
まだ仲間がいると聞いた。バレるのも時間の問題だろう。
ススは「光爆弾ライトボム」のせいで、魔力が余り無い状態だった。
にも関わらず、何故これ程強力な魔法が使用できたのだろうか?
ススはこの現象を、本能的、潜在的な魔力から現れたと考えた。
意識して出し事ができる、自分の寿命を差し出すかのような、そんな力が、ススにはあるのかもしれない。
……ススはヒミを背中に背負う。
うん、少し重いけど、何とか動かせそう。部屋は更に奥に続いているようだ。
進むしか無い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます