第38話 竜の盗賊団

通路をススは更に進む。

 通路の様子は、先程の通路と比べて、使用されていた形跡が余りなく、壁も地面もかなり汚れていた。

 物が腐ったような強烈な匂いが充満しており、かなり臭い。

 ススは鼻が効くので尚更苦しかった。


 それでも諦めず、先へと進んで行く……


「…!声……」


 何やら誰かの声がどこからが聞こえたのを、ススは見逃さなかった。

 ススは更に警戒しながら足を進めて行く。

 が、警戒は直ぐに頂点まで到達した。

 通路の先に、明かりが見えたのだ。

 何かの影が動いている。

 ススは警戒レベルを最大限まで上げ、ゆっくりと明かりの方へ近づいて行く。


 《それで、ヘピュックの奴はどこへ行ったんだ?》


「っ……!?」


 ススは思わず口を押さえてしまう。

 やっぱり、この先に……!


 《変なもんでも食ったのか知らんが、暴れまわってたよ。ほら、ドデカイ空洞があっただろ?ったく、村の連中に見つかったらどうするんだよ……》


 こいつら、光の種族の村がこの上にある事を知っているのか….!?


 《まあ、いずれにせよ。食糧も限界に近い。光の種族の連中に奇襲を仕掛ける前に、こっちが死んじまうぜ》


 奇襲……?


 《まあ、デッヒの情報は正しかった訳だ。生意気な野郎だったが、今は使われてない地下洞窟が、光の種族の村に繋がっている事を教えてくれた事は感謝しやきゃな。けけけっ、思わぬ『おまけ』もあったことだしな》



 《全くだ。俺たち『竜の盗賊団』に立ち向かおうなんざ、死ねようなもんだぜ。数は3つだが、強さは何百倍だ。しかし、こいつらは一体なぜここを彷徨いてたんだ?今は使われてねぇ筈だろ?》


 《俺が知るかよ。どーでもいーだろ。とにかく、俺は腹が減った。もう食える部分もねぇし、光の種族って一応人間なんだよな?》


 《デッヒの話だと、確か、人間型もいれば、獣人もいるとか……見た目は違うみたいたが、こいつらは恐らく光の種族だろうよ》


 嫌な予感がした。

 ススの感じていた違和感、この予感は恐らく的中している。


「……っ!」


 警戒のせいで、頭も意識も、連中ばかりに向けていたが、冷静に鼻へと意識を向ける。


 やっぱり……これは『血』の匂いだ。

 嗅いだことのある、ツンと筋がしっかり通ったこの匂い。

 そして、この「竜の盗賊団」とやらの言葉を結びつけるのなら……!


 ススは意を決して、連中の所へ突入する事にした。

 確かめないと……


 光魔法の応用術で、「光硬壁ライトウォール」というものがある。

 使用者の前方に厚さ数ミリほどの小さな壁を作り、身を守るものだ。

 これは、簡単に言えば、案外破壊されないバリアである。

 成人男性が殴っても、多分壊れない程度のバリアなので、護身にはなる。


 ススは「光硬壁ライトウォール」を身にまとい、突入する!


 《誰だ!?》


「ヴォッホッ!??」


 ガキンと鈍い音を立てて、コンバットナイフがススの目前で落下する。

 そのまま「光硬壁ライトウォール」はバラバラに砕けてしまった。

 余りに不意だったので、今まで出した事の無いような情けない声を出してしまう。


 《な、何だ!?その腑抜けた声は!》


「出逢って第一声がそれデスカ!?」


 声の主は二人の鋭い目つきの竜人だった。


 《ほう、こいつがてめーが言ってた獣人ってやつか。へぇ、じゃあこいつも光の種族か》


 ケケケッと不気味な笑顔で(笑顔かは正直分からないけど)もう一人の竜人が笑みを浮かべる。


「アナタ達はここで何をしているのデスカ!?」


 ススは竜人たちと間合いを取りながら、それでも竜人たちから意識を逸らさず、対峙する。


 《それはこっちのセリフだぜお嬢さんよ。まあ、良いや。どうせコソコソと聞かれちまっただろうし。俺たちは『竜の盗賊団』だ》


「竜の盗賊団……?」


 《おいおい。竜の盗賊団の名を知らないとか……やれやれ。じゃあ、一から説明するしかねぇなぁ?俺たちは『竜の盗賊団』を名乗り、各地で略奪行為をしている龍人集団だ》



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る