突然のできごと

 僕が高校に入ったある日、江戸川に霧が発生した。対岸が見えないくらいに濃い霧が。寒暖差の激しい朝などに、うっすらと出ることはあったが、ここまでひどいものは無かった。


 国道14号線も総武線も京成電鉄本線も濃霧で危険なため一時的に閉鎖になった。そして翌朝。霧が晴れた時に、江戸川に架かる3つの橋が忽然と無くなっていたのだった。


 首都圏の大動脈が突然と途切れたことで大混乱が起こった。


 ふたつの主要な電車が通れなくなったことで通勤通学の足がなくなり学校や会社への移動手段が消えたことは計り知れない打撃を与え、さらに市川橋が通れなくなったことにより、物流の動きにも大きな影響が出ることになった。


 幸いなことにというか、なぜか不思議なことだが、橋が消えたのは3箇所だけで、その上流も下流も無事だったから、物流は上流の新葛飾橋や下流の京葉道路を通る江戸川大橋ルートに振り分けられることになった。後者は有料道路であるが、篠崎ICと京葉市川ICの間は無料で通行できるので橋のたもとの渋滞は以前にもましてひどいものになり、この影響で下流の今井橋にもさらなる大渋滞を引き起こすことになった。


 京成電鉄本線は京成江戸川と国府台まででそれぞれ折返し運転、総武線は小岩と市川までで折り返しになり、各線の利用者は経路の変更を余儀なくされた。あるものはバス路線に活路を見出し、またあるものは京成成田線や都営新宿線に移行せざるを得なくなっていた。


 今までは駅まで歩きで行けたものにも、この路線変更は大問題で、自転車やバスを利用して遠くの駅まで行くものが増えたが、駅周辺の駐輪場はすでに飽和状態であり、違法駐輪が大問題になってきた。さらに駅の内外にも乗客が常時大行列をするようになり、たびたび入場規制が行われるようになった。


 また、バス会社も臨時便を増発したり、新たな運行ルートを作って需要にこたえようとしていたが、通勤通学時間帯のさらなる渋滞問題を加熱させ、バス停はどこも大行列になり時刻表はあって無い状態になってしまった。

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