空中花
今朝、廊下で営業の河野さんとぶつかった。そのときに私の上に浮かんでいる花が受粉してしまったようなのだ。寒気がするし、喉も痛い。花びらは萎れてしまっている。咳が止まらず熱っぽくなってきたから、午後から早退することにした。
私がこんなにつらいのに河野さんは大丈夫なのかと思いながら会社を出ると、通用口の前で河野さんが倒れていた。河野さんの花は枯れかけている。
「大丈夫ですか?」
持っていたペットボトルのお茶を花にかけると、河野さんは目を開けた。
「自力で帰れますか?」
そう聞くと河野さんはかすかに首を横に振った。
「タクシーと花屋、どっちがいいですか?」
「花・・・」
それだけ言って河野さんはまた目を閉じてしまう。花粉が飛びそうな日は家から出ないでほしいよと思いつつ、私は携帯電話で花屋を呼ぶ。新しい花に取り替えたら河野さんも元気になるだろう。ついでに自分のも新しくしてもらおうかな。河野さんのおごりで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます