踏切にて
彼女の髪に綿毛がついていた。
「綿毛」
取って見せてあげる。大きな綿毛だった。
「何かしら?」
「アザミ?」
ピンクの花が咲いている隣りに、白っぽい塊があるのを見た気がする。
「雪みたい」
彼女は笑う。
「冬、来ないね」
「そうだね」
点滅する矢印の始点の方向を見る僕の手から、湿った海風に乗って綿毛が飛んでいった。
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