みとり介護

介護には、向き不向きというものがある。

優しすぎる気持ちは介護に不向きである。

見取りなどで、実際に介護現場はお年寄りが亡くなる事が日常的に起こっています。

皆、色々な思いを持ち、亡くなっていきます。


介護の仕事は接客業です。優しさは必要であるが、過剰な優しさは、自身も追い込んでしまう。


今回のお話は、私の職場に居る、ある介護職員のお話しです。


梅田さんは、介護歴10年の大ベテランとして、今でも、この特別養護老人ホームにて現役で介護職員として働いています。


私も、新人の頃は指導係について頂き、沢山のことを、梅田さんから教わりました。

誰にでも優しく、職員の中でも頼れる存在です。


また、梅田さんは利用者様にも、とても優しくて、皆さんから一番人気の職員でした。


私たちの施設は看取り介護も取り入れています。なので、利用者様の殆どの方は、この施設で最後を迎えるのです。


梅田さんは、毎回、看取り介護にて亡くなられた、利用者様の前で、手を取り号泣されています。

自分の親が亡くなったかのように、利用者1人ひとりに対してとても優しいのです。


梅田さんの事を皆さんが、信頼して、頼りにしています。


ですが、私は梅田さんに違和感を感じています。

それは、梅田さんが夜勤の際に看取り介護の利用者様が亡くなる率が高い事に気付いてからは不信感を抱く様になりました。


特別養護老人ホームは1階と2階にて分かれています。たまたま、夜勤が梅田さんと被る日がありました。久々の梅田さんと被る夜勤にて、不信感を振り払いたい気持ちが強くなっていました。


1週間前から、看取り介護の利用者様が一人居ましたので、この際、梅田さんをしっかりと監視しようと私は考えていました。


夜勤には、おむつ交換とは別に、巡視の時間を設けております。

この時間を利用して、1階の梅田さんの行動を見張る事にしました。

2階から見取り利用者の居室前が見えていたので、正確に梅田さんの行動を記録する事ができます。


23時、梅田さん、見取り利用者居室にはいる。

1時、梅田さん、再度見取り利用者居室にはいる。

この際、20分程、居室から出てこない。

その後居室より、出てこられる。

3時、梅田さん、再度見取り利用者居室にはいる。


ぷるぷる、私のケータイが鳴りました。

梅田さんからです。

「見取りの利用者様が、急変したわ、至急看護師に連絡と、相談員に連絡してください。」


私は、至急、看護師と相談員に連絡をしました。

そして、利用者様の前にて泣き崩れる。

梅田さんの光景が今でも頭から離れません。 

ですが、私は1時20分の時点で気付いていました。


後日、梅田さんの見取り利用者様の記録を、見ました。私の考えと照らし合わせる必要がありました。


梅田さんの記録

23時、利用者様、バイタル安定。入眠中。

1時、利用者様、バイタル低い。軽度の肩呼吸。

3時、利用者様、急変、バイタル測定不可。目を閉じられる。


梅田さんの記録は正確に記述されており、違和感など感じられない程、正確に記録されておりました。


ですが、私は気付いています。

梅田さんの足元には、また1人、利用者様がついている事を知っています。


私には子供の頃より、見える体質でした。

霊的な者が、見えてしまうのです。


梅田さんを最初に見た時は衝撃的でした。

梅田さんの身体中にお年寄りがついているのです。

それも、皆さん怒りに満ちた表情で、梅田さんを見ているのです。


私は、1時20分の時点で、梅田さんの足にしがみ付く、利用者様が見えていました。


梅田さんは、今でも皆さんに優しく、とても優しい方です。

苦しんでいる人を見て見ぬ振りができない性格なのでしょう。


ですが、優しすぎるというのは、時には残酷な事だと私は知りました。

あと、10年もすれば、梅田さんは定年退職になります。再就職されない様に私は祈るばかりです。










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