第3話恋する瞬間

「ちょ、もう少し離れろ!」

「やーだ。」


こんなやり取りをし始めて、早30分。

事の発端は、なんだっけ。忘れた。


「とりあえず、離れろ!皿が洗いにくい!」

「んじゃ、俺も手伝う!洗ったお皿頂戴?」

「はいはい。なぁ、なんであたしなんかと付き合おうって思ったんだ?」ポツリとアリスが呟いた。


「んー?それはね、内緒かな。」とレオンの表情が少し曇る。


「なんだよ。それ。」

「これで最後?」

「最後。ちょっと、出てくるから、留守番頼むな。」

「あ、行ってらっしゃいのチューは?」

「あるか!レオンのバカ!」

「ごめんごめん。気をつけて行ってらっしゃい。」とレオンは笑う。

「ほんと、そう言われると、父親にしか思えねぇわ。いい父親になれるんじゃねーの?」とアリスは苦笑いを浮かべる。

「アリスちゃん、俺と結婚する?」

「は?なんでそこまで話が飛躍するんだ。」

「アリスちゃんがいい父親になれるって言ったからかな。俺は、アリスちゃんのウエディングドレス姿見たいな。」

「いや、いい父親になれるって言ったけど、あたしは、母親になるんなんて一言も言って・・・ない・・・・。」そう言いながら、だんだんアリスの声が小さくなっていく。

「ん?どうしたの?」とレオンがアリスの顔をのぞき込む。

「いや、かっこいいなって・・・・思っただけ・・・・」と言うとアリスの顔がぼっ、と一瞬にして真っ赤になった。

「ありがと。アリスちゃん。」と言ってレオンは、アリスの頬にそっと口付けた。

「な、な、な、なんで!ば、バカでしょ!?」と顔を真っ赤にしたまま玄関を飛び出た。

「可愛いなぁ。ほんとに。」と嬉しそうに呟く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る