第13話 あら、また会っちゃったわねぇ


こーんばんは。

また会っちゃったわねぇ。

え? 今仕事の帰りかって?

まぁ、帰りと言えば帰りだね。

マスター、これね。いつもの。で、いつものちょうだい。


え?何? あの話の続きが聞きたいって?

だって需要あるの? 私二人の子供に囲まれて幸せじゃんて言ったでしょ?

ハッピーエンドでしょ?

ああ、弁護士の若いにーちゃんの事とか?

年上の大学講師の話とか?

何よ、前の事なのにずいぶん覚えてるじゃないの。忘れてくれて結構な話なんだけど。


いや、マスターまで聞きたいって、やだなぁ。知ってるでしょ?

あ、そうか。マスターは子供たちが大きくなってからの付き合いだもんね、あの時のことは知らないわけか。

いやぁ、引き取った直後にはいろいろあったのよ、それでも。

マスターと会ったのはその後のことだもんね。知らないよね。


お客さん、完全に野次馬になってない?

マスターとは古い付き合いだよね。これ、オープンにして良いの?

あ、ダメなの?

秘密にしておいてほしいって?ミステリアスな方が客が来るって?

あらそう。じゃ、マスターと私の関係は黙っておくわね。


じゃぁ、ええっと、どこまで話したっけ?

そうそう、震災直後ね、二人引き取ったって話よね。

いやぁ、そこからちょっと面白かったのよ、展開としては。

私の人生からするとアップダウンの激しい半年というか、激動の半年だったわけだ、うん。

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