第12話 戦国時代、ロリコン天国の事。
「まだ、名乗ってなかったわね。私は千代女って言うのよ」
「儂は那古野城主、織田三朗信長じゃ」
「あんた、城主だったの? って、尾張の『うつけ』?」
「その『うつけ』じゃ」
「確かに『うつけ』ね。この手勢でここまで来るとかないでしょう」
信長ちゃん、馬鹿にされました。
まぁ、護衛らしいのは4人だけ、他は女・子供ですからね。
織田家の次期当主が連れて来る護衛の数じゃないです。
まぁ、普通なら精強な手練れを最低でも10人くらいは連れて来ますよ。
信長が馬鹿にされたので長門君が怖い目で私を睨んでいます。
無視です。
びっくりです。
望月千代女は
望月盛時(望月遠江守)に嫁いで、武田晴信の手足となって諜報部隊の『歩き巫女』を育成した人物です。
武田、以前の恨みを忘れていませんよ。
大嫌いな私としては、千代女を何としても引き抜きたい。
検索、検索………!
千代女の旦那の盛時は3年前の(天文12年)9月に六ヶ城に籠っていたが真田幸隆の調略で武田晴信に降った。武田晴信は盛時が降った事を喜び、太刀や馬を贈って領地を安堵した。これで佐久郡の諸将も武田氏に降り、今年の侵攻へと繋がったという説がある。(※)
ぎゃあぁぁぁぁ!
こいつか、こいつのせいで私が酷い目にあったのか。
千代女、こいつが盛時の嫁かどうかで対応が変わるぞ。
「千代女ちゃん、千代女ちゃん」
「気軽に私の名前を呼ばないでくれます。おばさん」
「おばさんじゃない。おまえなんて、おまえでいいや。おまえは盛時の嫁か?」
「どこでそれを」
「やっぱり嫁か!」
「どうして私があんなオジンに嫁がなきゃいけないのよ」
おぉ、まだ嫁いでいないらしい。
何々、望月盛時は永禄4年(1561年)の川中島合戦にも出陣して活躍するが、荒川勢との戦いで全身に数ヶ所の傷を負い、永禄5年(1562年)に傷がもとで没する。享年58歳。望月千代女は若くして未亡人になった。
「なぁ、おまえ、今は何歳だ」
「13歳よ。悪い?」
「一つ上か」
「そぉ、変わらないのね。もしかしたら縁があるのかも」
「そうだと良いな」
「きっと、そうよ」
露骨な奴め。
望月盛時は42歳、千代女13歳。
ロリコンか!
これは断固として阻止だ。
この時代はロリコンが多いんだよね。
前田利家が妻を取ったのが、永禄元年(1558年)で19歳(21歳の説もある)、妻のまつは11歳で、12歳で幸姫を出産したんだよ。
11歳でやる事やるって、真性のロリコンだね。
ここに控える藤吉郎こと秀吉は、永禄4年(1561年)8月におねを妻にする。秀吉24歳、おね14歳です。
そして、極め付けが、柴田勝家です。
柴田勝家は早くに妻を失くして一人身だったそうですが、事もあろうか市姫に懸想し、20歳のお市が長政の下に嫁いでいくのを、45歳の勝家は号泣して見送ったと伝説になっているのです。
そのロリコンの願いは一念岩をも通し、天正10年(1582年)、清州会議の合意でお市ちゃんを妻にした。柴田勝家60歳、お市の方は35歳、25歳年下です。
これぞ!
キングオブ、ロリコン。
まぁ実際、史実の勝家がロリコンだったのかは判んないんだけどね。
20歳のお市は長政に娘を送り出す気分だろうし、清州会議でお市の方を娶るのは秀吉の陰謀だった可能性が高い訳です。
ホントの所はどうなんだろうね?
今度、聞きたいけど、お市ちゃんが生まれるのは来年なんだよね。
さらに、その後はお犬さまが生まれる。
信秀のおっさん、土田御前とやる事やっているんだよ。
夫婦仲が悪かったっていう話はどこから来たんだ?
◇◇◇
あれぇ?
真田幸綱は天文10年(1541年)に武田信虎と諏訪頼重、村上義清に信濃小県郡・佐久郡へ侵攻されて、同年5月23日の海野平の戦いにより海野一族は敗北して上野へ亡命しているよ。真田幸綱も箕輪城主・長野業正を頼って上野国に逃れているのよね。
天文17年(1548年)望月盛時の息子である信雅が真田幸隆の仲介を得て武田氏に降伏し、望月氏惣領を継承する。
なるほど、真田幸隆が降ったのは天文12年説、天文15年説、天文17年説があって、はっきりしていないのか?
天文12年に諏訪の小諸城を築造したのが山本勘助と馬場信房であり、真田幸隆が12年に臣従したという根拠になっている。しかし、『高白斎記』には、望月城から望月城主の望月盛昌の子である昌頼は、布引城に逃げて『天文十二年九月二十日、望月一族為生害』と記されている。
この時に望月源三郎(望月信雅)と新六が降ったとするのが12年説だけど、この時点で幸隆が降っていたのは考え難いね。
天文15年(1547年)5月に真田幸隆が佐久内山城の大井貞清の助命を求めているから17年説もなしだ。
結局、真田三代記には、天文15年に武田方で登場し、甲陽軍鑑は天文16年、高白斎記には天文18年まで登場しない。
それが望月源三郎に武田晴信が700貫文の領地を与えるとの朱印状を出したが、その使者を真田幸隆が務めたと言う。
あれぇ、あれれれぇ?
望月盛時はまだ村上義清方かもしんない。
どっちなんだろう?
◇◇◇
望月出雲守、出雲守は頭領が踏襲する名前らしく本名ではありません。
千代女に案内された望月城の部屋に出雲守を含める数人が控えています。
「織田三郎信長です」
再び、信長ちゃんが先に頭を下げます。
武士としてはどうかと思われるかもしれませんが、甲賀の人にとっては好感度が上昇でしょう。しかも、甲賀21家は六角より恩賞を貰って、武家に近い気質を持ちます。
「此度はわざわざのご足労、ありがとうございます」
次期当主が自らやって来たのも好感度上昇だろう。
「この度は甲賀の者を雇い入れたいと思い罷り越しました」
「なるほど、いかようほどお入りようでしょう」
「まずは100、後に可能な限り多く望みます」
「100ですか。お受けしましょう。しかし、可能な限りとは」
「可能な限りとは可能な限りです」
甲賀と伊賀を雇い入れるのは、長門君らと打ち合わせした通りだ。
誰を使者に送るのか?
私が一益さんを指名したので、一益さんが使者だと勝手に思い込んだようだが、私はそんな事を一言も言ってないよ。
道案内をお願いしようと思ったけど意味なかったね。
まさか、長門君も生駒屋敷の帰りに直接行くなんて思わなかっただろう。
は、は、は、参ったか!
それでもアドリブで信長ちゃんはよくやっている。
「尾張に来て頂いた者は知行として300貫で召し抱えさせて頂きます」
「雇うのではなく」
「はい、召し抱えです」
「さて、如何なる事に我らをお使いになるつもりですかな」
「それは…………」
「私が説明しましょう」
「忍様、お願いします」
私は5000貫箱を収納庫から取り出した。
突然に現れた5000貫箱に出雲守も驚いたようだが、態度には現さず、すぐに平静を保った。
「まず、5000貫は手付金としてお預け致します。来て頂く為に必要な物はこちらから用立てて下さい。甲賀の者にやって頂く事は信長様の直近衆として目となって頂くことです」
「物見が主な仕事と考えてよろしいのかな」
「はい、それで結構です。但し、3年間は尾張とその周辺に限りますが、それ以降は天下を見据えております。ゆえに、人手はいくらあっても足りません。取り急ぎ必要な者が100名、那古野城周辺を固めて貰いたいと思っております」
「なるほど、承知致しました」
出雲守は本気だと思っていないのでしょう。
私はさらに5000貫箱を出して1万貫にします。
「こちらは畿内一円に広がる甲賀と繋がりのある者を説得する為にお使い下さい。先ほども申しましたように可能な限り多く要ります。各地の者を6人斡旋して頂く毎に、追加で1000貫の報酬を支払いましょう」
「雇った者をこちらで面倒を見よと言う事ですかな」
「流石です」
私はさらに5000貫を出してたたみかけます。
「もし、千代女殿を信長様の近習として召し抱えさせて頂ければ、こちらもお付けしましょう」
「娘は未熟ですぞ」
「心が未熟のようで、されど、技は十分でしょう」
「しかし、娘に5000貫は出し過ぎでは」
「盛時と縁談の話があるようで、手切れ金と思って頂いて構いません」
「ふっ、お譲りしましょう」
『やった』
ガッツポーズ、千代女ちゃんが思わず声を上げます。
余程、盛時との縁談が嫌だったのでしょう。
出雲守が父親として頭を下げてくれます。
「最後に、尾張に移住をお望みなら、好きなだけの土地をお譲りしましょう」
「夢のような話ですな」
「甲賀の方に住んで頂いて結界と為したいのです」
「なるほど、募っておきましょう」
「お願いします」
私が頭を下げた事で話は終わり、改めて出雲守が信長ちゃんの方に向き直した。
「甲賀五十三家には私から話を通しておきます」
「よろしくお願います」
「他の頭領が如何に判断するかは判りかねますが、我が望月家は千代女を分家の頭領として、臣従させて頂きます」
「誠ですか」
「某はここを離れる訳にいきませんが、我が一族共々、よろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願い致します」
望月出雲守が臣従できないのは形だけでも六角家の家臣だからだ。
六角から望月城を預かる城主だからね。
望月出雲守を引き抜くと六角に喧嘩を売る事になる訳だ。
それを回避して、希望する者を千代女に付けて送り出す事で話が付いた。
他家がどうするかは判らないが、少なくとも望むなら、望月家と同じ条件とすると約束した。
「よろしいのですか。53家すべて臣従すれば、26万5000貫が飛びますぞ」
「は、は、は、それで甲賀が買えるなら安い買い物です。臣従は急ぎません。この1年を見てから考えて貰って結構だと言って下さい」
「承知しました」
「さて、これからお見せするのは他言無用と言いませんが、余り広めるのは止して下さい」
「承知しました」
「おとうさま、行ってきます」
「信長様をしっかり護衛しろ」
「はい」
落ち目の六角を見限り、村上と尾張の両天秤。
うん、三好が迫っていなければ、六角を見限っていたかは難しい所でしょうね。
でも、戦国時代の武将は強かでないと生き残れません。
次は伊賀です。
『転移』
出雲守に伊賀に顔が聞く者を用意して貰い、裏庭から一瞬で消えた私達を見て驚きます。
さらに息子の与右衛門が戻って話を聞くと出雲守は腹を括ったそうです。
そりゃ、チート過ぎる能力だもんね。
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