1月2日
ある晩、私が眠りについていると、背後から何かが近づいてくるのを感じた。
そいつは獣のような唸り声を上げながら、スライムのようにぺたぺたと地面を跳ねていた。
妙な圧迫感を放っているそいつは、徐々に私に近づいてきていた。
刃物でも突きつけられたような感覚に襲われ、私の背筋はぶるりと震えた。
「肝が近づいてくる……」
何となく、直感でそう思った。
「まちがいない、肝だ」
確信がついた。
そう、殺気を放っているそいつは私の嫌いなレバーである。
数ある焼き鳥のメニューの中で、唯一食べられないのがコイツである。
克服しようと何度も挑んだ。
だが、どう頑張っても独特の食感が好きになれなかった。
そいつが殺気を放ちながら、私に近づいてきているのだ。
しかも湿り気のある音からして生レバーのようである。
「くそ……まさに生き肝じゃねえか」
文字通り、肝が生きているのである。
生き肝もとい生レバーが私を殺しにきてる。
私がレバーに何をしたというんだ。
嫌いだの何だのと言いつつも、お茶と一緒に頑張って飲み込んだじゃないか。
レバーが好きな人にあげたことはあっても、お前を残した覚えはないぞ。
何で私を殺しにきた。てか何で生なんだ。
生レバーなんて滅多に食べないから
記憶にはほとんど残っていないというのに。
本当にレバーなのか確かめるため、振り向こうとした。
その瞬間だった。
「言うこと聞かないと殺すぞ」
ぼそぼそとした低い声で、そいつは私に命令した。
強すぎる殺意と音が止んだことから、頭の真後ろにいることを察した。
振り向いたら死ぬ。
生き肝に殺される。
本能がそう訴えている。
私は耐えがたい緊張感に包まれていた。
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