第75話

 彼がお屋敷に来た。メイドの夏に通されてリビングのソファーに座っていた。わたしが挨拶をしようとした瞬間に姉の愛菜がやって来る。


「ホントにそっくりだ……」


 ぼっーと立ち尽くす彼の様子は姉の魔力に吸い込まれている様であった。


「初めまして、恋菜さんの姉の愛菜です」

「は、初めまして……」


 双子の姉妹であるわたし達は瞳の色だけが違うのであった。姉は琥珀色でわたしが椿色である。


「恋菜さん、何故、早く紹介しなかったの?」


 くっ……姉の問いに言葉が詰まる。追憶の昔に二人を殺そうとしたとは言えず。

難儀する。とにかく、姉から彼を離さねば。わたしは彼に庭を見ないか提案する。


「夏に紅茶を頼んだの。ゆっくりとしていって」


 結局、三人で紅茶を飲む事になった。話題は姉の事ばかり。わたしは三人で遊んだ昔の事を思い出していた。ほのかな恋心で彼に想いをよせていたあの頃のことである。そう、あの頃と同じように彼は姉に照れていた。彼が姉を選ぶのは時間の問題であった。それから、暗くなるまで姉と彼は一緒にいた。彼が帰ると姉は満足そうにしている。


「恋菜さんにはもったいないわね、わたしの彼にして良い?」


 わたしは姉のセリフに言葉を失った。そして、彼の態度も違う、直観的に終わりだと思った。


 ……死のう。

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