第60話
わたしは料理が苦手である。しかし、スイーツ作りは好きであり。多分、夏がスイーツを作れないからであろう。まさに自給自足である。無人島でもスイーツがあれば暮らしていける自信がある。アホな妄想は止めて朝食にする。わたしが大きなテーブルに座ると。
「恋菜様、昨日の手作りドーナツがあります」
あー焦がしたヤツだ。スイーツ作りでの失敗など久しぶりである。
「勿論、食べますわ」
夏はドーナツの形をした黒い物体を持ってくる。二つに割ってみると表面が炭化している。これは食べられない……。
「夏、捨てる勇気も必要よ」
黒いドーナツを夏に手渡すと、朝食が並べられる。これで正解であったのであろうか?スイーツ作りで失敗を認めた事になる。わたしが不機嫌でいると夏が黒いドーナツを食べ始める。
「な、夏?」
「恋菜様が要らないと申したので、わたくしが……」
わたしは慌てて夏を止める。
「夏は無理しないで良いのよ」
「いえ、ほどよい苦さにパリパリした食感は美味しいです」
わたしもひとくち食べてみる。
……。
これは無人島では暮らせない味である。わたしと夏は不味いと告白するチキンレースを始めるのであった。やがて、無事にドーナツが無くなると。夏と顔を見合わせて、お互い笑い合う。
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