第61話

 わたしの名前は『月之宮 恋菜』ごく普通の一般人である。初恋の彼と再会して彼の下へと高校を転校したのであった。大した秘密ではないがわたしには追憶の殺意がある。幼き日に姉の愛菜と三人一緒にいた。しかし、彼は姉を選んだ。わたしの初恋は殺意に変わり二人を殺そうと思った。結果は二人の記憶が消えて、彼は引越していった。再会した彼がまた、姉を選んだら消えゆく追憶の殺意などではなく。わたしが死のうと思う。お屋敷の地下にある毒薬を使ってだ。


……。


 うん?朝、起きると浅い夢を見た。内容が思い出せない。確か、彼と一緒に暮らす夢であった。そう、彼を殺そうと思った日と同じ夢であった。わたしはぼっーとしてベッド上で座り込む。また、彼を殺すの……?


「恋菜様、お時間です」


 メイドの夏がノックして部屋の外から時間を知らせてくれる。庶民の高校に通う時間だ。わたしは朝食をキャンセルして朝の支度を始める。鞄に日常を詰め込むのであった。制服のブレザーを着ると支度は終わりである。わたしが玄関に向かうと姉の愛菜とすれ違う。


「恋菜さん、あなた恋をしているのね」


 唐突に愛菜がわたしに声をかける。


「関係無くてよ」


 わたしの簡単な返事に姉の愛菜は眉をひそめる。


「えぇ、関係はないわ。でも、このお屋敷に連れてこなくて良いの?」


 わたしは目をそらして立ち尽くす。


「ごめんなさい。少し、意地悪過ぎたわ」


 姉の愛菜は玄関から出て行く。そう、これがわたしの日常である。姉の愛菜は絶対的にわたしを支配している。わたしはもう一度、地下の薬品庫で毒薬の確認をする事にした。

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