第22話

 昼過ぎの授業の事である。世界史と日本史を間違えた。当然、教科書などなく。

先生の授業を聞くだけである。女教師はヒステリックにわたしに質問する。


「解りません」


 わたしは緑の銀杏並木を見てから答える。


「ふん!」


 女教師は不機嫌そうに黒板にカツカツと書く作業に戻る。この学校の銀杏並木は綺麗だなと思い。窓の外を見ている事にした。授業が終わるとわたしは彼に近づき話しかける。


「この銀杏並木が散るまでわたしが生きていたら、何もあげない」


 そう、死ぬ予定は無いからだ。この賭けに彼は乗ってきた。


「それなら、生きていたら、僕の初めてをあげる」


 うぁ~最悪だ、こいつ。大好きな彼でも嫌悪感を丸出しにする。しかし、わたしは彼がもう一度、姉を選んだら死のうかと思う。地下室にある毒薬の確認もしてある。この賭けは微妙だ。


「反対にしましょう、あなたが生きて銀杏並木が散るまでいたら、わたしの初めてをあげる」


 言い出したのは間違いかと思うセリフであった。わたしは思わず月を探す。完全に逃げの姿勢だ。曇り空に月は見えず。彼は納得した様子で賭けが成立したと言う。わたしは彼を殺す予定がなく。渋々、首を縦に振る。初めてか……。キスぐらいで手を打とう。ヒステリックな女教師は授業の片付けが終わると教室を出て行く。わたしも今日は帰ろう。雨の中で帰るのがバカバカしくなり、降る前に帰る事にした。

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