第21話

 わたしは独りで学校から帰路についていた。この前は過呼吸になり、簡単にわたしの存在が折れそうな運命を呪った。わたしは街路樹をおもいっきり蹴ってみた。

そう、加減が難しい。自分の足が折れるほど強くはなく。ましてや街路樹が折れても困る。


 ただ、イライラしたからだ。わたしは少し足を傷めた。


 我ながらバカバカしい。仕方なく足を引きずりながら帰る事にした。やはり、街路樹などは蹴ってはいけない。お屋敷に着くと夏を呼び、腫れた足を見せる。


「恋菜様は何処でこの怪我をしたのです?」

「街路樹が生意気だったから……。夏には分からないでしょうね、ただ立っているだけの生意気な街路樹があったのよ」


 言い訳とも自慢話とも違う微妙なセリフであった。夏は小首を傾げてわたしにシップを張ってくれる。わたしは夕食まで自室で休んでいると夏に伝えるのであった。それから、わたしは窓から見えるお屋敷の庭木が切られいるのに気がつく。夏を呼び問いただすと、暗いので切ったと言われた。タイミング的には微妙だ。街路樹を蹴って足を傷めたのに、庭木は簡単に切られしまう。わたしは大きく深呼吸をすると気持ちが落ち着く。姉の愛菜は庭木が切られた事を知っているのだろうか?

わたしは夕食の時に聞くのである。


「わたしは知らないわ、夏の気まぐれでしょう。それより、街路樹を蹴って怪我をしたそうね」

「えぇ……」


 怒られると思いきや。


「明日はタクシーで登校するといいわ」


 優しい姉を見るのはかえって怖い。


 ふう~……腫れあがるほど蹴ったわたしが悪い。


「ありがとう、そうするわ」

 

 わたしは頭痛薬を飲み、足の痛みに耐えて寝る事にした。街路樹など蹴ってはいけないとつくづく思うのであった。

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