第23話

 わたしがお風呂に入ろうとした時の事である。パンツが無い。大急ぎで夏を呼ぶとパンツの事を聞く。話によると最近、続いた長雨で乾いていないらしい。乾燥機を故障したままにしたのは失敗である。今日はまだ明るい。仕方なく、大手スーパーにパンツを買いに行く事にした。しかし、実のところ、いつも夏と一緒にパンツを買うので、一人で買いに行くのは初めてであった。そう、夏は夕食の準備に忙しいのである。


 そして、大手スーパーに着くとパンツ売り場に行く……。足取りは重く、恥ずかしい気分である。下着売り場に着く頃には顔は真っ赤であった。色々手に取ってみると、黒でいいやとなる。パンツだけをレジに持っていくと、もはや拷問である。


「割引券はお持ちですか?」


 そんな物は知らない。早く逃げたい一心であった。店員さんのパンツを包む手つきは慣れていて、わたしは感心していると。


「今夜はお楽しみですか?」


 ……。


 聞こえなかった事にしよう。ニタニタと笑う店員さんから速足で離れる。ま、パンツだけ買ったのだ、その様な事もあろう。お屋敷に着く頃には目が死んでいた。


「恋菜様、夕食の準備ができています」


 そんな時間か……。


「パンツだけ買いに行ったらしいわね」


 わたしは大きなテーブルにつくと、姉の愛菜はパンツについて問いただしてくる。


「えぇ、黒を買ったわ」

「『今夜はお楽しみですか?』とか言われなかったでしょうね?」


 わたしは夏と一緒にしかパンツを買った事がない。つまりはデレデレしていて、それは今も続いていているらしく、姉のカンが当たったらしい。


「い、い、い、言われたわ」

「そう、素直な子ね。わたしも一人でパンツを買いに行くのはごめんだわ」


 姉は自慢気に言うと席を立つ。わたしは疲れ切ったので、夏に紅茶を頼むのであった。


「乾燥機は修理に出します?」


 夏の問いに、わたしはもはやどっちでもよくなっていた。

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