第14話

 三日月に誘われて、わたしは夜の立体駐車場の屋上に来ていた。この街に七階建ては大きすぎるらしく、屋上はガラガラだ。そして、ここは彼との再会の場所である。わたしは越えられそうな柵から下を眺める。恐怖心はなく薬品庫の毒より、柵を上るだけ面倒くさいと思うのであった。わたしは立体駐車場の屋上の画像を彼に送ってみた。


『え、それが、あれは、ほんの……』


 やはり、死にたいなど彼にとっては熱病のようなものらしい。熱が引けば死ぬなど関係ないらしい。わたしは不機嫌な気分になるのであった。彼に『呪い殺されたい?』とメッセージを送る。


『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』


 ホントにつまらない男だ。返ってくるメッセージでわかる。


 うん?


 夏が後ろからやってくる。


「恋菜様、ここで死ぬのは迷惑がかかります」


 ドライな言葉にすっかり、覚めてしまい。帰る事にした。やはり、夏の真意は不明だ。わたしがエレベーターに近づくと夏の気配は無くなっていた。階段から降りたのか……。お屋敷に着くと夏が出迎えてくれた。


「紅茶と甘い物をお願いしていい?」

「はい、恋菜様」


 わたしは自室に戻ると散らかった机の上を片付ける。椅子に座っていると夏が紅茶とチョコレートケーキを持ってくる。わたしは夏に何故、立体駐車場の屋上にいたのか聞く事はなかった。スマホ機能を使えば簡単だからだ。わたしは夏に意地悪をする事にした。ティーカップを取りに夏がやって来ると「夏は一緒に死んでくれる?」と問いかける。


 夏は笑顔で「恋菜様が悲しみます」と答える。ふぅー夏には勝てないな。わたしはベッドに横になり微睡みになるのであった。

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