第11話

 わたしは夜中に悪夢で起こされた。彼が姉を選んだ夢だ。二度目は無い、もう一度、彼が姉を選んだら、死のうと思う。わたしは地下室にある薬品庫に来ていた。

 

 ここにあるのは毒薬である。飲めば苦しまずに死ねる。月之宮家が歴史の影で活動した痕跡である。呪われた一族にふさわしい物であった。中には記憶が消える薬もある。本当に呪われた一族だ。わたしは毒薬を確認すると自室に戻る。


 うん?


 月明かりが見える。満月に近い明るさであった。わたしは飼猫の様に人肌がこいしくなる。昔のように夏に甘えたい。しかし、昔も今も夏は姉が一番である。

追憶の殺意が疼く。わたしも、また、この月之宮家の血筋である。自分であれ、他人であれ、殺す事に迷いがない。


「今夜の月は明かる過ぎるわ」


 わたしは小さく呟くとカーテンを閉める。束ねてあった髪をほどき、ベッドに横になる。紅色の髪が広がり湖のようになる。わたしは微睡の中で眠りにつく。


 朝起きると……。


 あれ?髪が広がっている?昨夜の記憶が無い……。もしかしたら、薬品庫で記憶が無くなる薬を手にしたのかもしれない。体はだるく、寝不足の気分である。憂鬱な朝に太陽の光が差し込んでいた。

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