第9話

 わたしは自室で紅茶を飲みながら本を読むのであった。


 ふぅー


 紅茶がもう一杯、飲みたくなり、夏を探す。裏口から音がする。食材の宅配サービスが来ているらしい。わたしは裏口に向かう。入れ違いでトラックの運転手が出て行く。夏はあんドーナツを食べながら食材を整理していた。


「こ、こ、恋菜様!」


 夏は目が大きく開き、うろたえる。あんドーナツは美味しいらし。こんな人間臭い夏を見るのは初めてだ。わたしは夏に紅茶を頼むとキッチンに向かう。完全な悪意であった。わたしは夏がキッチンに着く前に紅茶を自分で淹れる。キッチンのテーブルで紅茶を飲んでいたら夏が目を丸くしている。


「恋菜様、紅茶は……」

「自分で淹れたわ」


 そう、夏の弱点は自分が必要とされていない事である。プルプルと震える夏は自信喪失と言ったところだ。わたしは謝るか迷っていたところ……。キッチンにテーブルの上に飲み終わったティーカップが置かれていた。それは暗黙の了解であった。夏は片付け初めていた。わたしは自室に戻ると読みかけの本を開く。


 ふぅー。


 小説の主人公の様に、自由に世界中を旅が出来たならと、窓から外を眺める。今日は少しざれごとが過ぎた。夏に頼んで料理を教えてもらおうかな。彼にお弁当を作る妄想にふけていた。

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