第8話

 今日の夕食はホワイトシチューであった。姉の愛菜と顔を合わせるのは夕食の時だけである。広いテーブルの先に琥珀色の瞳が輝いていた。そう、姉の瞳である。


 クロワッサンを好む姉とは違いわたしはライスであった。わたしはいつも思う。それは、姉が怒りださないかだ。短気な姉は夏を叱り付けるのが趣味ではないかと感じる事がある。少し塩辛いホワイトシチューにわたしはグラスの水を飲む。姉は怒りださないでいた。それはこの前、スープが薄いと夏を叱り付けたからだ。何故、姉は双子のわたしより偉そうなのであろう。わたしはグラスの水をおかわりする。


「恋菜様、味が濃かったですか?」


 夏の問いに小さく頷く。流石、毎日、わたしを見ている夏の洞察力だ。


「シャンパンはあるかしら?」


 姉は突然、言い出す。アルコールの入っていないシャンパンがあるらしい。


「愛菜様、お誕生日まで待たれては?」

「そう、なら、お水をちょうだい」


 やはり、ホワイトシチューが塩辛かったのか。しかし、姉の真意は不明だ。一度、インドに住んでいる両親がお土産に現地のスパイスを買ってきたら。辛いと激怒した事がある。夏が泣くまで叱り付けたのである。そう、今日の姉の沸点は高いらしい。わたしが先に食事を終わるとシャワーに向かう。


「先に入るわ」

「ええ」


 姉の愛菜は簡単なコミュニケーションに返事を返す。わたしは束ねてある紅色の髪をほどいてお湯で洗う。新しいドライヤーを使いたいからだ。それから、自室の鏡に向かうと、椿色の瞳が目に止まる。わたしが、わたしである証拠……姉とは違う色……。夏がわたしに気付き、紅茶を進める。簡単に闇落ちするわたしは椿色の瞳である。




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