第6話 変質

「遥、知り合いってどういうこと?」


「取り敢えず場所を変えましょう、現場付近でうろうろしてたら犯人だって疑われちゃうわよ」


「それもそうか、じゃあ遥の住んでる部屋で合流しよう。


教授には僕から報告しておくよ」


「わかったわ、後で会いましょう」










PM 5:00 遥の部屋


「お待たせ、教授への報告は済んだから安心していいよ」


「OK、まずはさっき言った《知り合い》について話すわよ」


「ああ、頼む」


「今回の事件に関わっているのは、私の大学に講師として来ていた転生者の女性よ。


彼女は、教授が皆に転生者について詳しく教える為に呼んだの」


「その女性が、例の体を変質させる力を持った知り合いか。


毎度思うけど、君の交友関係はどうなっているんだい?」


「それについては、私も疑問に思うけど。


本題に移るわよ。


彼女の持っている力だけど、元は体の一部分だけを少し変質させるものだったそうよ。


だけど、力を散々使い続けていたらそれ自体が変化し始めたらしいの」


「変化?」


「力が強化されていたのよ。


彼女の力は、次第に強くなっていって、最終的には全身を変質させることが出来るようになったらしいわ。


教授はそれを、転生者全てが持っている可能性だと言っていたわ」


「成る程、それで遥は...彼女が犯人じゃないかと疑っているんだね?」


「そう、彼女は最近になって、大学へ来なくなってしまったのよ。


講師をやめたのかと思って教授に聞いたら。


『彼女とは連絡が取れなくなってしまった』


って言われたから、多分行方不明扱いね」


「それは面倒だね、仕方ないから。


明日、その人の家に行ってみよう、何かわかるかもしれない」


「そうね、流石に今日はもう無理ね。


もし彼女がいたら、夕飯時に訪ねることになるもの」


「うん、それじゃ.....僕はもう帰るから」


「ええ、また明日ね」





行ったわね、彼にはああ言ったものの、これ以上行動が遅れれば犯人の思うつぼ。


気は向かないけど。


行ってみるしかないわね。


彼女の家へ。





PM 7:25 都内某所


「ここね」


彼女の家。


それは、町外れにある古い日本人家屋だ。


「初めて来たけど、本当に面倒な場所にあるわね」


そう、そこは曰く付きの場所だった。


「よりによって、の被害者が住んでた家じゃない」


かつて、第一世代の転生者が起こした首都大量変死事件。


ここは、その最初の犠牲者が住んでいた家だ。


「さあ、家の中を探索してみましょうか」


ノブを回し、扉を開けると...中は思ったより綺麗な状態だった。


「そういえば、ここに来る前に会った管理人さんが、定期的に掃除業者が入っているから、とても綺麗だって言ってたわね」


話しによると、ここ数日の間は全く人が入っていないようだけど。


「確か、奥に書斎があるって言ってたわね。


まず、そこから探ってみましょう」


管理人から預かった鍵には、7号室と刻まれていた。





「この部屋ね、ん?.....何かおかしな臭いがするわね」


私は、この時から嫌な予感がしていた。


静か過ぎる館内。


さっきからちらほら見える


嫌だなぁ、こんな時の嫌な予感って、大抵は当たるのよね。


「開けてみるしかないわね」


もう手遅れかもしれないが、私は扉に手をかけた。


「やっぱりね、一番嫌な予想が当たったわ」


そこにあったのは、四肢を引きちぎられ、無惨な姿になった元講師だったものでした。


「取り敢えず、彼に連絡しないとね」


死体の状態からして、死んだのは数日以内。


館内が涼しかったから、死体がまだ腐敗を初めていないようね。


「明、ちょっと来てほしい場所があるの.....ええそうよ、例の家の中よ。


死体を見つけたわ、死後数日以内の新しいものよ。


恐らく話した行方不明の元講師ね」


取り敢えず、連絡は終わった。


後は彼の到着を待つだけ。


「ますます面倒なことになったわ、私がここにいた証拠を消して、管理人さんにも絶対に何も話さないように言わないと」


それは、犯人が別の転生者であるという予想。


最も当たって欲しくなかった予想だった。

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