第5話 面倒事は勝手に訪れる

「君に頼もうと思っていたのは、監理局と私の共同捜査の手伝いなんだ」


「共同捜査?、何故教授がそんなことをしているんですか?。


それ、絶対に一般人がやる仕事じゃないと思うんですけど」


「君が疑問に思うのもわかるよ、本来この仕事は監理局だけで行うものだからね。


普通は、一般人に頼んだりしないさ」


「じゃあ、何故私に?」


「君がとても優秀だからだよ、君も既に知っての通り、そこの明君と私は協力関係にある。


以前、一度だけ監理局から転生者に関する意見を聞きたいと言われてな。


それで、馬鹿でもわかるように説明してやったら、専属のアドバイザーになって欲しいと言われたんだよ。


ただ、それだと教授としての仕事が滞ってしまうからね。


たまに捜査を手伝うということで妥協したんだ」


「それが何故、私に頼み事をすることに繋がるのか謎なんですけど」


「遥、ここからは僕が説明しよう。


教授に説明させると、回りくどくて面倒だからね」


「わかった」


「教授が、君に協力を頼みたい理由なんだけど。


これは単純に人員不足が原因なんだ」


「.....続けて」


「教授と監理局の協力関係は、何年か前から続いているんだけど。


近頃は転生者がらみの事件が多過ぎてね、 教授一人では解決しきれなくなったんだ


それで、僕が担当官になったんだけど


それでも足りなくて、本部に追加の人員を要請したところ。


今は人が足りないから無理って言われたんだ。


そこから、未だに監理局側から人員が回されていない。


僕が担当員として配属されたのも、本当につい最近のことなんだ」


「ちょっと待って?、明君はこの前にって言ってたよね。


今の状況が、監理局側の人員不足によるものなら、貴方がここで担当員として仕事をしているのはおかしいんじゃない?。


だって、余裕がないから人が送られて来ないんでしょ?」


「それに関しては私から説明しよう。


監理局が人員不足に陥ったのは、彼が担当官になった後のことなんだよ」


「どういうことですか?」


「ここから先を聞いたら、機密保持の為に誓約書を書いて貰うとこになるけど良いかな?」


「はい、続けてください」


「それでは、説明を続けます。


ここ数ヶ月の間の話ですが、反政府組織がの活動が、再び活発化し始めました」


「えっ、でも反政府組織って壊滅したんじゃ?」


「いや、一般公開されている情報ではそうなっているけど。


実際には、まだ大勢の構成員が存在する。


最悪なのは、よりによって"首都大量変死事件"の犯人がまだ生き残っている可能性が高いことだ。


おまけに、幹部も有名どころが勢揃いしてるいるから余計に始末が悪い」


「成る程、それで明さん以降は人材が送られて来ていないと」


「まあ、それだけが理由ではないのだけどね。


私は、監理局に嫌われているのさ」


「.....何故ですか?」


「それについては追々話すよ、結構複雑なんだ」


「そうですか、それで私に手伝いを頼みに来たと」


「そうだよ、引き受けてくれるかな?」


「 .....もし、今から私が話す条件を守っていただけるのであれば」


「聞かせて貰おうか」


「一つ目の条件は、私の個人情報を一切探らないこと。


二つ目は、私のことを監理局に報告しないこと。


そして、最後の条件として、私にある程度のアクセス権限をください」


「ふむ、三つ目はわかるが、後の二つは何故だい?」


「簡単な話ですよ、誰だって自分の私生活を探られたくないでしょう?。


監理局については、教授に対する対応からして、下手に彼らへこのことを報告した場合。


一方的に却下される可能性が高いからです。


話を聞くかぎり、監理局の上層部は教授にあまり人員を与えたくないようですからね」


「成る程、そういうことか。言われてみればそうだね」


「それで、どうしますか?」


「良いだろう、その条件を飲もう。これで良いだろう?、明君」


「僕は正直納得してませんが、彼女がそれで良いなら、僕は従うだけですよ」


「君は、相変わらず身内には弱いな」


「仕方ないでしょう、そういう性分なんですから」


「まあ良い、これで人員を確保できた。

これからよろしく頼むよ、村雨さん」






こうして、私は教授の手伝いをすることになったのだった。










AM 9:00 事件現場


「ここが、今回監理局から調査依頼のあった現場だ」


「うわ、相変わらず酷いな」


「ええ、確かにこれは酷いわ」


現場はごく普通の住宅街だった。


道のど真ん中に、人間のバラバラ死体が転がってなければだが。


「これも、例の連続殺人事件と同一犯ですかね」


「いや、今回は手口が違うから、恐らくそれとは別だな」


「あの、連続殺人って?」


「ああ、僕たちは元々、数年前から発生しているを追ってたんだよ」


「そんな事件があったの?」


「まだ一般には公開されていない事件だけどね」


「へえ、それで、ここで何があったわけ?」


「それが、人間がいきなり引きちぎられたらしい」


「ハッ?」


「そんな顔するなよ、僕も驚いてるんだから」


「明君、ちょっとこっちに」


「はーい!、遥ちょっと待っててね、すぐに戻るから」


「.....(私もちょっと調べてみようかな?)」





犯人はここで人を殺した。


方法は今のところ不明。


現場に残っているのは、大量の血と死体の断片だけ。


死体の断面からして、とても強い力で引っ張ったようね。


転生者の仕業だとしたら、間違いなく直接型で、尚且つかなりのパワータイプ。


弱ったなぁ、これ私の知り合いの仕業かも。










「遥、戻ったよ」


「明、結局なんだったの?」


「教授がこことは別に血痕を見つけてさ、今はそれを調べていたんだ」


「そう、こっちも犯人の特徴が大体わかったわよ」


「まじで!?」


「これをやったのは、多分直接型の転生者ね。しかも、かなり力が強いわ」


「でも、住人は被害者がいきなり引きちぎられたって言ってたよ、それなら遠隔型の仕業じゃ.....」


「残念だけど違う、死体の傷口近くを見てくれる?。ほら、ここ」


「どれどれ、あれ?、これって掴み痕だよね。なんで死体の断面近くにこんな痕が?」


「多分、そこを掴んでおもいっきり引っ張ったんだと思う。後、珍しいけど犯人の能力は、多分肉体の変質ね」


「肉体の変質?」


「ええ、今回は体の表面をカメレオンみたいにして、周囲の景色に溶け込みながら、さらに身体能力を強化したのね」


「ようするに、犯人は自分の体を自由自在に作り変えられるヤバい奴ってことか?」


「その認識で合ってると思う、とても珍しい力だけど、全くいないわけじゃない、一応前例があるわ」


「まじかよ!、どんな奴?」


「私の知り合い」


「ハッ?」


「だから、





はぁ、やっぱり面倒事じゃないですか。

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