頑張った話
かのこ
頑張った話。
日頃車の運転しない人なんです。できるだけ徒歩と自転車でことを済まそうとする人なんです。どうしても車が必要なときは家族に運転を頼むんです。本当に運転に自信がなくて、運転席に座ることも正直好きじゃない。座るだけでストレス。なので運転するとしたら、いつも行く決まった場所だけです。
でも先日、ちょっと距離のある場所に急遽行かなくてはならなくなりまして。と言っても車で10分。日頃運転してる人にとってたかが10分かもしれませんが。運転が本当に苦手な人にとってのはじめての場所への10分は長い。いきたくない。誰かが運転してくれてる車の助手席に座っていたい。
そんなことを愚痴っていたら心優しい同僚が乗せていってあげようか?と提案してくれました。
なんて優しい。後光がさしてる。
いやでもまてよ。この好意に甘えて、自分で運転せずに助手席に乗せてもらって、その日は快適ですよ。でもその後は?また行かなきゃいけなくなったときどうする?また誰か運転してくれる人を探す?人が見つかるかもしれないけど、見つからないかもしれない。その時自分で運転できる?また今度にしよ、って後日に回すんじゃないかな。自分で運転して行かなきゃいけない、と思ってる今、運転していくべきではないのか?
などと考えた結果、同僚の優しい申し出を断ることにしました。
私ちょっと進化してきます。と宣言すると同僚は、頑張れ、とエールを送ってくれました。
さあ、出発の時です。
Googleマップでルートを確認し、同僚に右折レーンや入出庫の場所と行きと帰りのルートの違いを確認しました。わからなくなったら電話をしてきな、という同僚の言葉に見送られ出発です。
あ、持ち物の確認もしなくてはいけません。せっかく運転できても必要なものを忘れてまた後日来てください、と言われた日にゃあ、もう運転を挫折した気分です。ここで成功体験を積むことが、私の運転に対する苦手意識を少し減らせるんじゃないかと考えたのです。
いつもなら全くいかない道を走ります。いや、誰かの車の助手席でなら通った道ですか、全く知らない道というわけでもないのですが、自分の運転となると感覚がなんだか違う。
え?こっちであってるよね、と自問自答しつつ進みます。やっぱり怖いよー。でも、もう引き返せないし前に進むしかない。とにかく行けるところまでいってみよう。
目的地の駐車場が見えた瞬間は長い旅を終えた気分でした。ジンセイってスバラしい。
用事を終え帰ります。エンジンをかける前にもう一度ルートの確認です。でも行きよりは確認時間もちょっとですみます。なんたって行きを乗りきった自分がいるのですから!ちょっと手土産ぐらい買いにどこかのお店によろうかしら。そんな余裕さえあります。
無事職場に戻り、同僚と再開を果たすと周囲の同僚も含め、拍手で迎えてくれました。感無量。
そんなわけで私はひとつ勇気を持てたのです。
チャレンジって大変。でも乗り越えられると、なんて素敵な気分になるんでしょう。
ちょっと進化した私は、あの道なら走れる。どんとこい。
頑張った話 かのこ @kanoko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ドングリをポケットに/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
入浴革命/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
葛藤/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
優しさに気づく時、もう君はいない/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
今年の目標(仮)/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
チャック!チャック!チャック!/かのこ
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます