第二話:少女達の黄昏
13 -元探偵の報告-
登校時に自転車で下り降りた屋敷から駅まで続く道は当然、帰りには登り坂となる。しかし、この程度の傾斜の登り坂は不完全ながらもシフト・ファイター化している明悟の身体能力ならば全く苦にならなかった。サドルに腰を下ろしたままでもすいすい漕げる、前へ進める。しかしかと言ってあまり優雅に軽々とペダルを踏めば傍からはさして力を込めていないのにとんでもないスピードで走る異常な光景を晒してしまうので、意識的に力をセーブしながら自転車を漕がねばならない。立ち漕ぎ気味にゆっくりと、時には自転車を降りてばてた振りをしながら手押しする。……この、シフト・ファイターの肉体の身体能力を隠すために敢えて運動音痴の振りをするというのは女子高生としての生活で(無数にある)注意事項の一つで、学校の体育の授業などでは、運動が苦手で授業への参加がやや消極的な風を装っている。ただ、高校生女子生徒には(明悟のような事情は無くとも)体育の授業にあまり積極的に参加しようとしない女子生徒は一定数おり、更に一部には『鶴城薙乃が病弱で中学校でも休みがちだった』という情報が広がっており、体育に消極的なのも止むなしと見做されている。明悟の覇気の無い体育への姿勢が他のやる気の無い女子生徒数名と共に市民権を得てしまっていた。……シフト・ファイターとバレる可能性が減る事は願ったり叶ったりなのだが、明悟の生真面目な性分が、不真面目とも映る態度で体育の授業に参加する明悟を見る体育教師のわだかまりを抑え込んだ表情に申し訳無い気持ちを感じさせるのだ。
仮面を被った明悟は、意図した鈍行で登り坂を自転車で進んでいく。いっそ思い切り駆け上ってやろうかと思い田園風景を見渡すと、何やら田畑で作業をしているらしい仮面姿の人影が目に入ったので、断念せざるを得なかった。
「よぉ、お帰り! 薙乃嬢ちゃん」
屋敷の門を開き、自転車を押しながら屋敷に入ると、渋みを含み覇気のある男性の声が響いた。自転車を停め声の方を一瞥すると仕立ての良いグレーのジャケットを着た老人が屋敷の縁側に座って新聞を脇に置き軽く手を上げていた。
「……いちいち茶化すな」
仮面を外しその老人の傍まで歩きながら明悟はうんざりしたように返す。老人は明悟の反応を面白がるように破顔する。
「5時に来るのではなかったのか?」
因みに今は4時半の手前である。
「ああ、時間に余裕が有ったもんでな、早めにお邪魔させてもらった」
「……」
この老人の名は小岩井勝巳。駒木同様、明悟とは学生時代から付き合いのある人物で、元探偵。より詳しくざっくりと経歴を披露すると、元刑事で、早期に退職し中京を中心に展開する探偵会社の創業に関わり自身も捜査員として勤務し、今は現役を引退。引退したはずなのだが魔素体大禍以後仕事から身を引くに引けない案件を複数抱える羽目になっているらしく未だに老体に鞭打ってずるずる働いているらしい(引退宣言した後に惰性で働いている手合いを『元』探偵と呼ぶべきか否かは意見分かれるだろうが、小岩井自身が『元探偵』を自称しているので、まぁ、元探偵なのだろう)。無論、老人に鞭打っている人間の一人が鶴城明悟その人である。軽口は叩くが、秘密を扱う仕事を行う者としては信頼できると、明悟は認識している。
「着替え……、というか身なりを整えてくる。少し待っていてくれ」
「えー、いいじゃねぇかそのままで。ジジイとツラ突き合わせても面白くねぇよ」
小岩井が露骨にがっかりした顔をするので「貴様の目を楽しませるためにどうして貴重な変身時間を使わねばならん」と吐き捨てるように言い返した。……恐らく、小岩井が約束の時間より早く屋敷にやって来たのは下校した直後の女子高生姿のままの明悟の姿を見るためだと推測できる。上辺はともかく中身は同年代の老人だぞ。好色にしても度が過ぎる。
「あ、明悟さん、お帰んなさい」
屋敷の奥から村尾夫人がお盆に湯呑と一口大の茶菓子を乗せて現れた。明悟はただいま、と返す。村尾夫人がそのままお盆を小岩井の傍に置き、小岩井がお茶に対して礼を言っている隙に明悟はさっさと玄関に入る。身支度が整うまでは放置で問題あるまい。悪いが後は任せた。
「シェイプ、リストア」
薙乃の制服姿から明悟の普段着に着替える際は浴室の更衣室を利用する事になっている。高校の制服と下着をすべて脱いでから変身を解除する。服をすべて脱がずとも変身は解除できるのだが、そうすると『女子高生の制服を着た老人』という不気味極まる情景が成立してしまい、その見るに堪えない状況を防ぐために一度全裸になっている。しかし、そもそも七十過ぎの男が女子高生の制服を着て学校に通うなどという不気味の極地の様な状況を展開していて今更そんな事に拘るのは不合理極まりないと言えるのだが、そこはただの美意識の問題としか言えない。女子高生の制服を着た変身前の自分の姿など見た日にはしばらく立ち直れなくなる恐れがある。
ふと姿見に目を遣る。当たり前だがそこには身体の節々に深い皺が走った険しい目付きの老人が映っている訳だが、明悟は何故か強烈な違和感を覚える。薙乃の姿に変身した時に鏡を見る場合はある種の覚悟が出来ている。しかし本来の姿の際に無防備な気持ちで鏡を目にすると頭に思い描いていた姿と現実のミスマッチに面喰ってしまう。
……15歳の女子高生・鶴城薙乃としての疑似人格が抜け切っていない。明悟は鏡から目を逸らし、肉体と精神が鶴城明悟に変換した事を丁寧に認識させる。肉体の所作と限界、言葉遣いと表情筋と思考回路をゆっくりと明悟に戻した。
ポロシャツと紺色のスラックスに着替え小岩井の待つ縁側に赴いた時に明悟を待っていたものは、落胆と不満を隠しもしない小岩井の表情だった。
「……待たせたな」
それを無視して明悟は言葉を放つ。自身の声色の変化に、違和感は無かった。
「何だよ、結局その姿かよ」
「当たり前だ。何を期待した」
「……お帰りなさいませ、会長」
明悟と小岩井の会話の合間を縫う様に縁側に隣接する居間から声を掛けられる。見ると居間には秘書が正座しており、今朝朝食を食べていたちゃぶ台に重厚感のあるメモ帳やノートパソコンを広げていた。
「ただいま。今来た所か?」
「はい。多那橋の件の補足もありますので」
「……多那橋? ドッペルゲンガーが出たとかニュースでやってたアレか?」
小岩井が明悟と秘書の顔を交互に見る。
「そうだ」
「意識不明の被害者が見つかった東多那って住宅地のど真ん中だろ? あんな場所までドッペルゲンガーが誰にも見つからずに歩いて行くとか有り得るのか?」
「……有り得ないはずの事が起きたから皆困惑している」
「あー……、もしかしてお前、今日忙しい? 今日来るの拙かったか?」
小岩井が変に気を遣った態度を取る。
「いや、そもそも今日の多那橋の件はウチに直接関わりがある案件では無い。優先順位は低いよ」
そう言ってやると小岩井は一瞬きょとんとした顔をした後、「まぁ、なら遠慮無くこっちの仕事を済ますかね」と言いながらA4サイズの封筒を明悟に差し出す。明悟は小岩井の隣に腰を下ろしつつ封筒を受け取った。
明悟は封筒の口を開け、中の書類を確認する。明悟が小岩井に頼んだのは原田結良の身辺調査。明悟は原田結良に接触を図るに当たり、前以て小岩井に彼女の人隣りを調べさせていた。この仕事を依頼した時小岩井は「そんなもの、同じ学校の同級生同士なんだから普通に話し掛けて仲良くなれば仕舞なんじゃねぇのか?」などという身も蓋も無い事を宣っていたが、まぁ、実は同意出来なくはない。ただ、明悟以外のシフト・ファイターというのがどういう相手なのかというのが一切知識が無く、軽はずみに行った言動が両者にとって致命的なものになる可能性というのは極力排除したかった。慎重を期すというのは決して無駄では無いだろう。
まずは簡単な経歴。結良は10歳の頃まで、魔素体大禍が起こる直前までは半田崎に住んでいた。多那橋の西側、現在対魔素体の防衛線になっている蒲香よりも更に西、つまり現在は魔素体浸透域の只中にある都市。昨日明悟達が魔犬を捕獲しに行った場所である。そして、鶴城栄美が両親とともに住んでいた地域に近い。
魔素体大禍の前までは父親は会社員で母親はパートタイマー。結良の両親についての資料も同封されているがそれを見る限りではごく一般的な中産階級の家庭としか言いようがない。魔素体大禍が始まって数日後、名古屋に現れた有角魔犬が通常の魔犬を引き連れて半田崎近辺まで侵攻してきた折に多那橋に住む大叔父(結良の父親の立場から見た場合は叔父)の家に避難。そしてその最中に結良は両親とはぐれて行方不明になっている。そして行方不明から6日後に結良は蒲香近辺で自衛隊に保護された。全身に軽い怪我を負い非常に衰弱していたが命に別状は無く、数日入院した後直ぐに退院している。――結良が行方不明になったタイミングは、栄美が居なくなったタイミングとピッタリ重なる。結良が保護されたのはそれから6日後だったが、栄美に変身したドッペルゲンガーが明悟の屋敷に現れたのは行方不明から3日後の事である。
その後暫く、結良の家族は大叔父の家に住んでいたが、大叔父の伝手で結良の父親は建設会社の経理の仕事を得、今は大叔父の家を出て多那橋南東部のアパートに一家で住んでいる。結良は保護された後に心的外傷が見られ、中学一年生の一学期辺りまで休学しており、それまでメンタルクリニックに通院していたらしい。
……魔素体大禍以前の結良と栄美が仲が良かった事はほぼ間違い無いらしい。学校の中だけでは無く放課後もしばしば2人で行動していたようだ。書類に『※別途資料参考』と書いてあり封筒の中を探すと、写真らしき束が入った小さな封筒が入っており、中身を取り出す。先頭の一枚に目を落とした時明悟は思わず息を飲んだ。それはやはり写真で、写っているのは日本庭園をバックに並んだ2人の少女の姿。一人は栄美で、もう一人の少女はショートカットの利発そうな少女。原田結良の面影を感じさせる女の子だ。どうやら遠足で京都に行った時の写真らしく、カメラに向かって2人は頬を寄せ合い、憂いを感じさせない満面の笑みでピースサインを送っている。明悟は堪らない気持ちになって写真から目を逸らしたくなった。生前の栄美の活き活きとした姿に辛くなった、というだけでは無い。2人の少女の、踏み込んではいけない秘密の領域をつまびらかにしようとしている罪悪感が今更ながら襲ってきたのだ。……他にも京都で取られたと思しき写真が数枚同封されていた。この写真が撮られたのは2人が小学校4年生の五月の中旬辺り、魔素体大禍が起こる4か月前のものである。
「とりあえず、ここしばらく張り付いていた限りでは、調査対象がシフト・ファイターに変身している証拠は見られなかったな」
報告書の後半、最近の原田結良の動向・素行に関する項目に目を通していた時、小岩井が補足する。平日はほぼ自宅アパートと高校の往復。休日は駅周辺や友人宅に遊びに行く事はあるが、それだけだ。
「様子を見ていた範囲じゃ極々普通の高校生の女の子って感じだったぜ」
「……メールには『原田結良でビンゴだ』と書いてあったが根拠は他に無いのか?」
明悟は報告書と、少女2人が寄り添う写真を軽く掲げながら小岩井に尋ねる。
「念のために栄美ちゃんと交友関係のあった、或いはある可能性が有りそうな同じ学校の小学生を調べられるだけ調べたが、栄美ちゃんと同じタイミングで行方不明になったのは原田結良だけだったよ。そもそも半田崎の住人は、『爆心地』の名古屋とその近辺と違って魔犬共がやって来るまでに数日余裕があったから住人の大部分は避難が間に合っているんだ。友人同士で親とはぐれるっていうのは割とレアケースだぜ。もちろん、その『紅の魔法少女』が学校の友達じゃなくてもっと違う繋がりの知り合いって可能性もある」
「ふむ……」
小岩井の証拠と仮説を咀嚼しつつ、高校の入学式での原田結良の表情をまた思い浮かべてみる。因果の連なりは感じられる気はするが、早々に結論を急ぐのもまた危険なように思われる。
「変身する瞬間が見られれば確定なんだけれど、まぁそう上手くはいかねぇわな。
……てかさ、仮に原田結良ちゃんがシフト・ファイターに変身出来て、今も浸透域まで入って行って魔犬退治してたとしたら、自衛隊の警戒網とかに引っ掛かるんじゃねぇの?」
「……確実に引っ掛かるだろうな。途中には自衛隊の駐屯地もあるし浸透域内部のモニタリングポストには監視カメラも取り付けてある。愛知の浸透域内にシフト・ファイターが現れたという話は魔素体大禍後には一切訊かない」
「だよなぁ……」
「無論、山の中を通って自衛隊の警戒網を大幅に迂回するという方法も、かなり骨が折れるが不可能では無い。それにシフト・ファイターの能力を加味すれば、浸透域を気付かれずに出入りする事は決して不可能とは言えないだろう」
「あー……、うん……」
小岩井は何かを考えあぐねているらしく、曖昧な返事を返す。
「いや、完全に主観の印象でしかないんだけど、人目を避けてこっそりヒーローしてる感じはしねぇんだよな、今の結良ちゃんは。ただ反面で、断片的な証拠は原田結良が『紅の魔法少女』だったと示している気がしないでもない。この乖離はなんなんだろうな……」
明悟は、小岩井がシフト・ファイターの事を自然に平然と『ヒーロー』と称した事に若干のわだかまりを覚えたが、特に触れない事にした。
「……彼女が本当にシフト・ファイターなら栄美の死に際をその目で見た可能性がある。ショックで変身する事を辞めたと考えるのが妥当ではないのか?」
そう自分で口にしたとき、明悟は自分の言葉が示す無慈悲で残酷な情景とそんな可能性を平然と示唆した自分自身に秘かに驚いた。
「いや、んーー、まぁ、そう考えるのが妥当で正解なのかねぇ……」
口では納得した風な事を言っているが、腕を組んで首を傾げる仕草をしつこい程反復している。何かが、引っ掛かっているらしい。
「やっぱアレか? 死んだシフト・ファイターの正体がわかった時の初期報道が尾を引いてんのか。芸能人の不倫スキャンダル並みに根掘り葉掘り報道しやがって、未だに正体公にするシフト・ファイターがいないのは絶対あれが原因だぜ」
「……」
同じ話を何度も繰り返すのは老人の顕著な特徴だ、一体その話は何回目だ? と口にしたくなったが明悟は敢えて黙っていた。小岩井の口から何度聞いたかわからない話だが、現状のイチ要因になっているのは間違いないと思う部分もあるからだ。
現在、東京で活動が確認されている3名のシフト・ファイターを含め、自らがシフト・ファイターである/シフト・ファイターだったと世間に公表する者が一切居ない。どうもそれは世界各国に共通する傾向らしく、魔素体大禍以後シフト・ファイター達は声を潜め姿を隠している。この状況に対して様々な仮説が立てられているが、その説の一つにメディアのシフト・ファイターの正体に関する初期報道の苛烈さがしばしば挙げられている。シフト・ファイターに対するメディアリテラシーなど確立されている筈など無い時分だったので仕方が無かったとする向きもあるが、死亡したシフト・ファイター一人一人のバックグラウンドを丸裸にしようと躍起になるような魔素体大禍終結初期のテレビ報道には明悟も眉を顰める部分が有った。
「ネットでもさ、矢鱈に詳しくシフト・ファイターの個人情報が載ってるサイトがあるだろ。あれも殆ど当時の報道の丸写しだぜ。あー、サイトの名前は何だったかな? シェイプシフター……、何とか?」
「ソリディファイだ」
「そうそれ! ……そんな横文字のややこしい名前とか覚えられねぇよ。よくパッと名前が出て来たよな」
「学校で話題になっていたんだ。男子がよく見て、……男子生徒がよく見ている」
「……なんで今言い直したの?」
完全に話の流れをぶった切って、小岩井は貫く様に尋ねてきた。……恐らく言い直してしまった事自体が失敗だった。努めて自然に言い直したつもりだったが小岩井は耳聡く指摘してきた。
「いや、別に。舌が上手く回っていない気がしたから言い直しただけだよ」
「『男子生徒』の所を『男子』って言い掛けてたよな。何かアレみたいだったぜ、女子高生が十把一絡げに同年代の男共をバッシングする時みたいな奴」
「……そこまでわかっているのなら訊かなかった振りをしてくれ」
明悟は身悶えするような羞恥心を噛み殺しながら小岩井を非難した。
……学校で女子高生をしている最中は、男子生徒と女子生徒の間に横たわる、思春期特有の緊張感を伴った距離感というモノを嫌でも意識させられる。そして明悟は(多少、意識的に)その距離感を自身の偽装の為に利用している。『男子』という言い方、呼び方を多用する事で男子高校生達を没個性化し、『鶴城薙乃』と『男子達』の間に心理的な距離を作り自身を『女子』側の人間と見做されやすくなるよう仕向けているのだ。今、完全にその時の心理のまま、『女子』の側から『男子』を観察するような立場で小岩井と会話していた。女子高生が抜け切っていなかった、不覚だ。
そんな明悟の羞恥を知ってか知らずか小岩井は感心しつつも訝しむような妙な表情をしながら「お前、本気で女子高生やってんだなぁ……」などと宣ってくる。
「えっ、他の女の子とも会話とかすんだよな……?」
「……それは、な」
「何話す訳?」
「大した事では無い、勉強の事とか、学校行事の事だ」
「あはははは、七十過ぎのジジイが女子高生と勉強の事とか学校行事の事を話すなんて大事以外の何事でも無いぜ」
「……今更非難するのか?」
明悟の眉間に皺が寄り、普段から険しい顔が更に険しくなり始めた事を察したらしい小岩井は、何かを静止するように片手を持ち上げて広げ、「いや、非難してる訳じゃない非難してる訳じゃない」と予防線を張る。
「道義的にはアレなんだけどよ、まぁ理屈はわかるし道義性なんざ無視してでもやるべき事だってのはわかる。でも正直、現状がぶっ飛んでてお前の人生の数奇さについて夜な夜な考え込んじまう事はある」
「数奇。確かにな……」
明悟は呟きながら天を仰いだ。石塀に囲まれた庭先から見上げる空は、昨日半田崎の廃墟で見た時同様に快晴だった。……何故、こんなにも遠くまで来てしまったのか? そんな風に思ってしまった事は今まで一度や二度では無い。
「……全くよぉ、寝枕でお前の人生について延々とハイライトするような毎日が来るとは思わなかったぜ。どうしてくれんだよ、人生でここまでお前に関して思索を巡らせている時期なんか無かったぜ」
「知らん。お前の夜中の思索にまで感知は出来ん」
「責任取ってどっかでデートしようぜ、勿論薙乃嬢ちゃんの方と」
「おい、どうしてそういう話の流れになる?」
「良いじゃねぇか、おじいちゃんが美味しい物喰える店に連れて行ってやるぞ」
「引っ叩くぞ、薙乃の姿で」
明悟が面倒臭げに怒りを露わにすると、小岩井は「ひゃっはっはっ、それ死ぬじゃねぇか」と能天気を装って馬鹿笑いした。
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