踏切

鮭さん

踏切

 風呂から上がり、部屋を出る。夜の冷たさは火照った体を冷却するのに最適だ。


 鍵もかけずにぶらぶら歩く。数分歩くと踏切が現れる。足を踏み入れる。突然別世界に落ちたような、孤独感に襲われる。


 カンカンカンカン


 線路の中盤、奇天烈な音が鳴り始め、遮断機がくらげみたいに降りてくる。特に急ぐことなく歩を進め、難なく踏切を抜ける。電信柱の「猫を探しています」という貼り紙が目に入る。


 カンカンカンカン


 踏切は抜けた。しかしどこまで行っても電車につけられているような、胃液じみた不安が、捻れた臓器みたいに私の中に残っているのであった。

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踏切 鮭さん @sakesan

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