Kapitel.5 喪失の悲鳴《フェアリーレン・ゲシュライ》

 手始めに殺しにかかったのは占い師のテハーだ。


「あら、坊や。殺気立った目をしているね。なるほど占いは当たっていたようだ。坊やは私を殺しに来たんだね。しかし誰の依頼だい? 使命者を殺す依頼なんてしたら、依頼者は国中から迫害されるだろうに。まさかアリスかい?」

「リーエ様はこのことを知らない」

、ね。随分染まっちまっているようだが、果たして能力を得た私に勝てるのかね」

「占ってみろ」


 ロイがコートの陰から短剣ドルヒ咽喉のど元めがけて刺し込むと、彼女は咄嗟とっさに叫んだ。

 するとまるで最初からそこに居なかったかのように姿が消え、次の瞬間には現れた。


「占うまでもないさ」


 彼女は、叫ぶことで姿を消す能力を手に入れたようだった。その能力の前ではあらゆる物理攻撃が空を切る。

 シュベールトボーゲンと言った暗器ヴァッフェの数々を試したが、通じなかった。


 ロイは丸形の包みに火を点けて、放った。一見して爆弾に見えた。彼は爆発物の取り扱いにも長けていた。


 テハーは瞬時に叫び消えたが、爆発はせず煙を発し続けた。


「煙があれば消えても風の揺らぎで見えると思ったかい? でもそれは大間違いさ。私の“喪失の悲鳴フェアリーレン・ゲシュライ”は世界から姿を消す」


 だがロイは構わず三節棍さんせつこんを構え、間合いのうちに入って振り抜いた。


「キャ――ごはっごほ! ごほ!」


 煙にむせるテハーの咽喉元へ三節棍の先端が届き、咽喉を潰した。

 声の出なくなったテハーとの距離を一気に詰めて白刃はくじんを走らせる。彼女は鮮血をほとばしらせながら、地に伏した。

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