Kapitel.2 白の月と青の瞳
ディーナーたちに諸々の事情を伝え、部屋に戻ってくるとリーエが着替えをしていた。
「どうして今お着替えを?」
「いつ死んでも良いように、お気に入りの服を着ようと思って」
着終わった彼女は、
腰まで届く緩いウェーブの掛かった髪は
「とても可愛らしいお洋服で、私も気に入っておりますよ。しかしリーエ様、あなたは殺させません。守ります」
「ロイ。これは決まったことよ。あなたはとても頼りになるわ。けれど、特別な力を得た使命者には負けてしまうと思うの。気持ちだけで十分よ。お父様の屋敷に行って。大丈夫、あなたの仕事ぶりは手紙で伝えておくわ」
ロイはスクウェアタイプの眼鏡のブリッジに指を当て、短く息を吐いた。切れ長の双眸の中心に在る青色は、静かに燃えているようだった。
「とにかくロイも、おうちに帰って。巻き込みたくないの」
なにごとかを、言うか言うまいか、
「失礼します」
ロイが短く言って踵を返そうとすると、どこかから小さな声が漏れた。それはリーエからのものだった。
「……最後に言わせて。ロイ・ド・ナーウ。あなたとの一か月間、とても楽しかったわ。
「かしこまりました」
不遜を承知で背中越しに了承の意を表したのは、彼女の声が今にも崩れてしまいそうなほどに震えていたからだった。それは死に対しての恐怖というより、ひとえに感謝の念が極まったためであると、言葉を受けたロイも確信していた。だからこそなるべく顔を見ないよう立ち去った。
部屋から離れ、赤黒く暮れゆく情景をはめ込んだ窓を睨み、眼鏡の奥の
「守りますよ。私の計画は完璧なのです」
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